空京

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帰ってきた絆

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帰ってきた絆

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 イコン・ザ・フィナーレバトル! 13

 再始動したゴーストイコンを見た涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)ソーサルナイトIIも最後の戦いを予感していた。
「これはあれかな? 完膚なきまでに彼の悲しみを取り除く、ということかな?」
「戦うこと以外にも、ちゃんと表現できるのかもしれませんね。
 ……ですが今はまだ悲しみの中にいる。共鳴も、強い」
 今まで以上の共鳴を感じる二人だが、彼らもまた共鳴していた。

「まだ歌うというのなら、完膚なきまでに止めて見せましょう」
「満足したら引いてくれるかねぇ」
 長谷川 真琴(はせがわ・まこと)クリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)ブルースロート・トレーナー

「皆さんの歌、とっても素敵ですね! 頑張りましょうね! 姉鬼(あねき)さん」
「イコン戦の先輩と先生を一気に得て嬉しそうぢゃのう」
 神羽 美笑(かんなわ・みえみ)桜宮 乃々香(さくらみや・ののか)バウンティー・ドッグ

「なんだかしらねぇがやるってんなら叩き潰す!」
「でもこの『悲しみ』は先ほどの『悲しみ』とは違う気がする。
 だから僕ももう『憐れむ』こともない」
 狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)グレアム・ギャラガー(ぐれあむ・ぎゃらがー)マハカーラ

 四人は共に同じ歌を聞いていた。
 仲間たちが歌ってくれている歌を。
 マンドレイクの最大限の悲しみも打ち消すのではないかと思える、
 優しく暖かい、母の抱擁のような歌が聞こえる。
 歌を糧に、歌を力に、それが。
 【歌の絆】。

「では私は真琴さんと一緒に、乱世さんは美笑さんと一緒に行動しよう。
 いくら先ほどよりも敵意がないからと言っても、油断は」
「しないです!」
「するわけねぇだろう!」
 涼介に言われるまでもなく重々承知だと、言わんばかりに乱世と美笑がゴーストイコンへと飛びかかる。
 防御の姿勢はあまり見えない。
「おいグレアム! 機体制御、全部任せるからな! 頼むぜ?」
「無論だ。この歌があればどれだけ無茶な動きでも制御してみせる」
「よく言った! 美笑もおもっきりやってやれ! 押せ押せだ!」
 乱世が悪そうな笑顔で言えば、美笑はまったく屈託のない笑顔で嬉しそうに「押せ押せです!」と答えを返す。
(この戦いが終わっても、僕には帰る場所がある……。こんなにうれしいことはない)
 心の中でそう思いながらも、冷静にサポートしていくグレアム。
「残弾なんて気にしないでとにかく戦え! エネルギーも弾も度外視で攻めろ!」
「はい! 何にも考えず撃ちまくります!」
 乱世は機晶ブレードで敵を叩き切り、美笑もカートリッジのありったけを撃ち込む。
 戦略と呼べるほどの者は何もない。作戦名、ガンガンいっこうぜー!である。

 しかし、真琴も少なからずその熱気にあてられていた。
「さて、皆で掴んだ平和を乱すのなら私が徹底的に相手をいたします。
 ゆったりと、良い歌を聴ける時代が来たのです。邪魔はさせませんよ」
(冷静で見えて心は燃えてるな。久々だね、こんな真琴を見るのは。
 まあついでに押さえつけてるストレスとかがありゃ、発散するといいぜ)
 整備をしている時の彼女は常にクールな真琴の今の姿を見て、クリスチーナは素直にそう思った。
「さあ、行きますよ。我が愛機ブルースロート。
 歌を護るコマドリの力をこの歌を汚す泣き声に見せてやります」
 同時に覚醒を果たす真琴。
「ならばこちらも本気で行こうか!」
 真琴に合わせて涼介も覚醒を行い、二機は鬼神の如き力でゴーストイコンを撃ち抜き、貫き、斬り伏せる。

(この人たちが、世界を変えたのか……)
 世界を変えようと必死になり悲しみに支配されていたマンドレイクだが、それだけのことを考える余裕が出てきていた。
「あなた、いい加減にしなさい?」
「……え゛ぇ゛!!」
 マンドレイクが驚愕する。
 目の前にいたのはリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)。イコンには乗っていない、生身である。
 シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)とのユニゾンしていることなど知らないマンドレイクが驚くのも無理はない。
「さっきからゴーストイコン止めたり止めなかったり、煩わしいのよ。
 優柔不断なんか捨てて、どっちかにしなさい!」
 その声にマンドレイクは腰を抜かしそうになる。
 仕方ない、リカインの咆哮は神ですらおののくというのだから。
 けれどリカインはその程度では止まらない。
 精神状態に共鳴し力を増す波動により、潜在能力の引き上げに、
 一時的に更なる潜在能力を開放。
 そしてアクセルギアを使用して、自分の時間を30倍まで引き延ばして、マンドレイクに襲い掛かる。
 たったの五秒間。だが、マンドレイクには永遠に忘れられない五秒間。
 生身の人間がイコンに対して攻撃を仕掛けて、押しているのだ。
 さすがのマンドレイクも、笑うしかなかった。