空京

校長室

帰ってきた絆

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帰ってきた絆

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混合細胞の行方

しかし、女王ポムクルさんと切り離された混合細胞は、
不気味な音を立てて、暴走をはじめる。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

唸り声のような音を立てつつ、混合細胞は、
近くのイーダフェルト2号の残骸や、
破壊されたゆる族型起動兵器などを取り込み、契約者を攻撃してくる。

「地球は大事な故郷だからね。
荒らされるのは正直激おこなんだよね」
芦原 郁乃(あはら・いくの)は、
巨大な怪物となりつつある混合細胞を見てつぶやく。
「どうしますか、郁乃様」
秋月 桃花(あきづき・とうか)が緊張した面持ちでたずねる。
「んなもん」
郁乃が、近くのはがれかかっていた壁を引きはがし、
混合細胞に投げつける。
「こーよ!」

すさまじい音を立て、要塞や武器の残骸が吹っ飛ばされる。

「さすが、郁乃様です……」
うっとりした瞳でパートナーを眺める桃花だが。
「あ、郁乃様、そこは……」
郁乃が床を引きはがし、同じように攻撃する。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
「きゃあああああああああああああああああああっ!」

「郁乃様−っ!?」

床ごと破壊された要塞のユニットがパージしてしまい、
郁乃は、破壊された混合細胞の残骸と一緒に、
イーダフェルト2号の外に落下してしまった。

「郁乃様は、桃花が助けますっ!」
「あ、ありがとう、桃花。
いやぁ〜うっかり、うっかり。
てへぺろ」
郁乃は翼を広げた桃花に空中でキャッチされた。
そして、なんとかイーダフェルト2号に戻ってくる。

「大丈夫か?」
「うん、へーき!
どんどんやっちゃうよ!」
十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)に気遣われ、郁乃は手を振る。

「デヘペロも何やかんやで契約者だ。
みすみす死なせる訳にはいかない。
俺達で混合細胞を破壊しよう」
宵一が、ブラックダイヤモンドドラゴンにまたがり、神狩りの剣を手につぶやく。
「そうすれば、向こうでの騒ぎもなんとか収束するだろう」
「デヘペロのこととか、いろいろで、
イーダフェルト2号が危険でふ。
こっちの怪獣バトルも早く解決するでふよ!」
リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が、
ドッグズ・オブ・ウォーを率い、
終焉のアイオーンを二丁構える。
「ああ、あの混合細胞……というか、もはやなんだかわからない何かだが。
とにかく、まとめて吹っ飛ばしてしまえ!」

宵一が、ドラゴンとともに全力で突撃し、
リイムと傭兵団も続く。

しかし、宵一を何者かが襲う。
「なんだ!?」
ドラゴンを操り、回避した宵一は、そこに立つものを見る。
「どうしてここに!?」

「わらわはマンドレイクに協力しているだけ。
どうしてもこうしてもない」
辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)は、
冷徹に言った。

「ふふふ、素晴らしいですね。
これを利用すれば、パラミタを破壊する怪物を作ることも夢ではありません」
ファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)が、
混合細胞と要塞や兵器の合成体を見て笑う。
「さあ、刹那さん。
マンドレイクさんの望みを果たしてあげましょう。
そして、この私の望みもかなえてください」
「あいわかった。
悪く思うなよ」
ファンドラにうなずき、刹那は、再び、契約者たちに攻撃してくる。

「ふん、こっちもバウンティハンターでな。
依頼人の仕事を完遂するっていうのは同じなんだよ」
宵一は、リイムの傭兵団の支援を受け、
混合細胞に迫る。

「いけええええええええええええええっ!」
渾身の一撃で、混合細胞と機械の合成体が破壊される。

「透乃ちゃんの目的を達成するのに邪魔なものはすべて排除します!」
緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が、
刹那とファンドラを攻撃する。
パートナーの緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が、
混合細胞を破壊するチャンスを作るためであった。
「くっ」
刹那は直接、接敵することのないよう、
陽子との間合いを取る。
「こちらも、パラミタへの復讐の邪魔をされるわけにいかないのですよ」
ファンドラが言うが。
「復讐?
透乃ちゃんの目的に比べたら、そんなもの!」
陽子は、攻撃の手をさらに激しくする。

一方、透乃は、全エネルギーを左手に集中させる。
「透破裏逝拳!!」
それは普通の裏拳だが、
実際には生涯をかけて鍛え抜かれた、「最強の一撃」を目指す攻撃である。

ほとんどの者は、熟練の契約者さえ、
何が起こっていたのかわからなかった。

しかし、次の瞬間。

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

咆哮のような不気味な音とともに、
要塞や兵器の破片がくずれる。

そして、鳴動する濁った赤黒い色の何かが、
床に落下した。

混合細胞がイーダフェルト2号からはじき出されたのだ。

そして、刹那とファンドラも、契約者たちとの多勢に無勢で、
退くことを余儀なくされていた。

混合細胞には、透破裏逝拳の衝撃で、ひびが入っていた。

「ひゃはははははは!
こんなすげーもの壊しちまうなんてもったいないことできねえなあ!」
ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)が、
混合細胞を拾い上げ、自分の胸に押し当てる。
ゲドーは、背中の4本の十字架をゆらし、
周囲を見渡す。
「おい」

ずぶり。

混合細胞はゲドーの体内に入っていく。
「だぁ〜っひゃっはっは!!
最高の気分だぜえ!!」

自ら融合を望むゲドーに混合細胞は融合していく。
そして、ゲドーの身体も、
混合細胞の影響で、さらに異形へと変わっていった。

その様子を、シメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)は、
静かに見守っている。

「だひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!
力がみなぎってくるぜ!!」
ゲドーが、イーダフェルト2号の一部をむしり取る。
壁には大穴があいた。

「さあ、俺様のために不幸になってくれよ!!
だぁ〜ひゃっはっはっは!!」

ゲドーは、瘴気をまき散らし、徐々に怪物へと変貌していく。

「ヒャッハア〜!!
破壊するだけっていうのは面白くないぜ!」
南 鮪(みなみ・まぐろ)は、そう言いつつ、火炎放射器で、
ゲドーを攻撃する。

「ぐああああああああああああっ!?」

「この要塞は人の少なき場所に落とす。
しかる後に利用させてもらう」
織田 信長(おだ・のぶなが)は、
ドラゴンの零黒夢の上に立ち、深紅のビロードマントをなびかせる。

「人の少なき場所。
すなわち、大荒野に落とすのだ」


契約者たちの総攻撃で、
ゲドーと合体していた混合細胞が引きはがされる。
「うおおおおおっ!?」
混合細胞と分離したゲドーは、元の姿に戻っていく。
ただし、背中の十字架は生えたままだった。

「これはこうして使うんだよ!」
国頭 武尊(くにがみ・たける)が、
イーダフェルト2号のコントロール権を確保すべく、
トリモチに混合細胞を包んで食べようとするが。

「混合細胞は魚に食べさせて消化させてしまえ!」
エルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)が、
ぽいぽいカプセルから、
大きなクモワカサギを取り出した。
「汚染物質でも魚は消化してくれるんだ!
これで混合細胞も!」

雲海を泳ぐ巨大な魚、クモワカサギの身体が、
イーダフェルト2号を突き破る。
そして。

ぱくり。

「あれ、暗くなった?」
「武尊さん、これって!」
シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)が、
パートナーに恐る恐る言う。
「私達、飲み込まれたんじゃないですか?」

クモワカサギは確かに、混合細胞を食べた。
しかし、クモワカサギは契約者もまた好物であった。
パートナーを使った冬のクモワカサギ釣りは、雲海の風物詩である。

さらに、
イーダフェルト2号の制御室からは
クモワカサギの身体が飛び出しており、
巨大な穴が開いていた。

「あ、あれ?」
「って、冷静に考えればわかることじゃないですか!」
ディオロス・アルカウス(でぃおろす・あるかうす)が、
エルシュに突っ込む。
「どうするんですか、こんな場所でクモワカサギ出して!」
「いや、まさかスペースがないとはな」

一方そのころ、巨大化した小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とデヘペロの、
イーダフェルト2号の甲板の上での怪獣大決戦も、
クライマックスを迎えていた。

「ペロオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「イーダフェルト2号が落ちてる!?」
デヘペロと美羽が異変に気付く。

「クモワカサギ、早く2人を吐き出してくれ!
あと、頑張って飛んでくれー!」
エルシュが必死で叫んでいた。

「うおおおおお、大荒野に落下してパラ実の新校舎を手に入れるんだあ!」
「武尊さんはやれば出来る人。だから、今回も信じています」
クリエイト・ザ・ワールドでシーリルが、
クモワカサギの胃の中をコックピットっぽくしていた。

「だいたいイコンの操縦みたいなもんだ!
オレに任せておけ!!」
武尊は、気合いで、混合細胞とイーダフェルト2号を制御しようと頑張る。