空京

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帰ってきた絆

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 イコン・ザ・フィナーレバトル! 14

「……ゴーストイコンが沈黙しましたね」
「どうやら、勝ったみたいだね」
 真琴と涼介の言葉の通りだった。もうマンドレイク、ゴーストイコンは攻撃しようとはしてこない。
「ちっ、少しは物足りねぇが、まあいいか」
「それじゃ後は、イーダフェルト2号をどうにかすればいいんですよね!」
 最早イーダフェルト2号への道を塞ぐものは何もなかった。
 しかし依然イーダフェルト2号のスピードは増すばかり。このままではハワイが危ない。

「ヒャッハー! イルミンスール武術師範代! マイト・オーバーウェルム参上!
 ご機嫌な空の旅だぜ! 敵地までひとっとびだ!」
「久しぶりだけど、マイトは相変わらずだね!」
 障害のなくなった空で気持ちよさそうに叫ぶマイト・オーバーウェルム(まいと・おーばーうぇるむ)マナ・オーバーウェルム(まな・おーばーうぇるむ)
 向かうは当然イーダフェルト2号。
「ったく、勝手に張り付いて。ちょっとはこっちのことも考えなさいよね」
「……まんざらでもなさそうですが?」
「んなわけないでしょう!」
 マイトたちを肩に乗せて(というより無理やり乗ってきた)イーダフェルト2号へと向かうのはアカシャ・アカシュ
 その中ではグラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)の二人がいつもの調子で言葉を交わしている。
「悪いな! これも突破口を開くためだぜ!」
 マイトがまったく悪びれた様子もなく話しかけると、グラルダは大きなため息をついてから「勝手にして」とだけ返した。
 障害も何もなくたった数分でイーダフェルト2号に辿り着いたマイトとマナは、
 己の出来る限りをもって突破口を開こうとする。
「漢なら己の道を貫き通す!」
「まぁ、御託はいいから、さっさとやっちゃおう!」
 マイトがコブシでもってぶん殴りつつ、槍を使って壁を破壊していく。
 マナもおにぎり片手にマイトと同じ箇所を攻撃し続ける。
 そして、小さな突破口が開かれた。
「……そんなじゃ小さいわよ。もっと派手な突破口にしなさい」
「先方との件はどうするんですか?」
「あっちだってこれからやるんでしょう? これもサプライズの一つよ」
 グラルダがマイトたちにどいてくれるように頼み、武器を構える。
 その後方に、二機のイコンの姿があった。いや、一機と言うべきかもしれない。
 炎の鬣を持つ黒馬を彷彿とさせる黒麒麟にまたがるようにして武者、魂剛が乗っている。
「おー! カッケーな!」
「でしょう? すっごい気に入ってるんですよ、これ」
「まっ、馬がかっこいいからな!」
「武者がかっこいんですよ武者が」
 魂剛の搭乗者である紫月 唯斗(しづき・ゆいと)と黒麒麟の搭乗者、朝霧 垂(あさぎり・しづり)が互いのイコンがかっこいいだろうと言い合っている。
 それを見たグラルダがまたため息をついた。
「騒いでる時間はないわよ? いまだに動いているんだから、コレ」
「そうですね。だから一刀両断にしちゃいましょう」
「おう、真っ二つにしようぜ!」
 唯斗と垂があっけらかんと言い放つ。グラルダは二人の言葉が自信に溢れていることを確信し、マイトたちを乗せて距離をとった。

「……さて、敬語はもういいか。
 ったく、本当に飽きねぇなぁ、この世界はよ!」
「ふふふ、そうじゃのう!
 味方のおかげで気にする者は何もない、斬る事にのみ集中できるぞ?」
 エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が唯斗の言葉に笑って返事をする。
 一方、垂とライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)も楽しそうだ。
「こんだけ距離を取れば、加速も十分だろう」
「混合細胞……確かに地球に撒かれたら大変だけど、
 そうなる前に消滅させちゃえば問題ないよね!!」
 ライゼの言葉に四人は頷く。例え両断できなくとも、仲間がいる。何も心配はいらない。

「……俺は突っ込む!」
「……そんで俺が斬る!」
 ありとあらゆる能力を駆使してイコンを、己を限界まで高めた二人が、駆ける。
 黒き騎馬武者が要塞へ向かう。真っ直ぐ、真っ直ぐ、只管真っ直ぐ――。
 そして、マイトたちが作った小さな穴目掛けて。

「「我らは……我等は世界を守る剣、その名も『騎神剣帝』なりっ!!」」

 二機一体、渾身の一撃がイーダフェルト2号に炸裂し、ぽっかりと大きな穴が開く。
 
 
「かー! 一刀両断とはいかなかった! さすがポムクルさんお手製の要塞だぜ!」
「てか止まりもしないのかよ! いい加減に止まれって!」
 一刀両断できなかったことを悔やむのも束の間、
 二人はイーダフェルト2号に取り付き、押し返すようにスラスターを全開に吹かす。
「嫌いじゃないわ。そういうの」
 そこはグラルダも加わる。いや、それだけじゃない。
 他のイコンたちも続々とイーダフェルト2号に取り付いては、ハワイへ向かう勢いを削ぎ始めたのだった。

 イーダフェルト2号の軌道が揺らぐ――――