空京

リアクション

　
　
　私の願いを叶えて、と女王は言った。


　戦乱の絆

　
　白い首筋に赤を残して、アイシャは、ゆっくりと立ち上がった。
　混乱は一時的なものだったようで、意識は澄み渡っていた。
　今は自分を自分と真っ直ぐに認識している。
　膨大な量の情報は記憶として整理され、“力”は、
　まるでずっと自分と共にあったかのように、自然に方法をイメージすることが出来ていた。
　そして――
「これが……私の使命……」
　彼女は呟いた。

　吸血鬼の少女、アイシャ。
　女王信仰に厚いタシガンに生まれた彼女は、女王を敬愛し、崇拝していた。
　だから、帝都ユグドラシルで女王のアムリアナの世話係を命じられた時、彼女は、喜びに身を震わせた。
　それが、女王の心情や故郷シャンバラの情勢を考えれば不謹慎なことだと自覚しながらも。
　誠心誠意を込めてアムリアナに仕える日が続いた、ある日、女王がアイシャに言った。

　私の血を得て欲しい。
　
「そして、私の願いを……叶えて」

　差し出されたのは、己が心酔する者の首筋と懇願。
　抗う理由は無かったし、抗えるはずもなかった。
　敬虔な信徒としての光栄と吸血鬼としての喜悦、そして、緊張と共にアイシャは女王の肌に、恐る恐る牙を突き立てた。
　血を得た瞬間、彼女の中に女王の力と記憶が流れ込んだ。
　意識が飲み込まれ、混濁が起き、気づいた時――
　アイシャは自分が果たすべき使命を知った。


　眠る女王の体を静かにベッドの上へと返し、アイシャは部屋を出た。
　ゆっくりと扉を閉める。
　それが、アイシャの旅の始まりだった。


　
　　■目次■


１ページ　　プロローグ
２ページ　　出撃前・東西合同医療に関する提案
３ページ　　第七竜騎士団への来客
４ページ　　マホロバ・野戦病院・合同医療・ティセラ・リンネ
５ページ　　少女発見
６ページ　　アイシャへ会いに行こう〜独自行動〜
７ページ　　アイシャへ会いに行こう〜西側・単独〜
８ページ　　アイシャへ会いに行こう〜東側・単独〜
９ページ　　ゴーストイコンとの戦闘
１０ページ　カツアゲ隊の困惑
１１ページ　アイシャを巡る攻防１
１２ページ　アイシャを巡る攻防２
１３ページ　西の代王・東の代王・東西協調を巡る話
１４ページ　愚連隊の激闘
１５ページ　セリヌンティウス・金鋭鋒・横山ミツエ
１６ページ　エリュシオン帝国・アーデルハイト
１７ページ　砕音・アイリス
１８ページ　名将、地球を忌む
１９ページ　ゴーストイコンとの戦闘２
２０ページ　アイシャを巡る攻防３
２１ページ　アイシャを巡る攻防４
２２ページ　森の出口にて
２３ページ　ゴーストイコンとの戦闘３・野戦病院
２４ページ　本来の目的
２５ページ　エピローグ


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