空京

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戦乱の絆 第二部 第三回

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戦乱の絆 第二部 第三回
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6.城内・七曜〜ゲドー・ジャドウの場合〜

 迷路の奥で、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は1人焦っていた。
「バカでかい通路の中で、俺様一人かよ!」

 彼が生き返った時、傍にパートナー・ジェンド・レイノート(じぇんど・れいのーと)の姿はなかった。
 生き返るためにはタイムラグがある。
 彼が死んだと思って、去って行ってしまったのか?
 それとも、死んだ自分をウゲンが攫って行ったために、諦めてしまったのか?
 真相は闇の中だが、ゲドーはともかく1人で学生達と対峙しなければならなかった。
 
 そして、彼に負けるつもりはない。

「だって、よぉ。負けて殺されたら、痛いじゃんか!」
 それに、と思う。
 背中の墓標をさすった。
 10キロ程のそれは、まだひとつだが、生き返る度に増えて行くのだ。
 
「けどよ、多勢に無勢だろ?
 準備がモノを言うよなぁ……たぶん」
 トラッパーでの罠作りに精を出す。
 これで引っかかって、相手が分断されてくれれば、もうけもの。
 
 実際に、そのもくろみは成功する。
 学生達には、「トラップ解除」を行える者がいなかったのだ。
 
 そればかりではない。
 幸運の女神は、明らかに彼の方に微笑む。
 
 ■
 
「こ、これは!
 西の代王・高根沢理子!」
 
 道の奥にかの姿を認めて、ゲドーはニィッと笑った。
 理子はロイヤルガードらをはじめとする数名を伴い、ゲドーの前に出る。
 数が少ないのは、罠の為だろう。
 
「だめです! 理子様」
「ここは、私達にお任せを!」
 サッと、前に進み出たのは、【東シャンバラ・ロイヤルガード】のソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)
「さ、ここは、私達に任せて!
 理子様達は早く、アイシャ様を!」
 2名は理子達を先に行かせようとする。
「女王のこと、頼んだぜ」
 ベアが、ふっと笑って戦闘態勢に入る。
 
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)が、それとなく理子の手を引いた。
「そうだ、時間がない。行きましょう!」
「酒杜先生……うん、分かったわ! 頼むわね?」
 理子はアイシャの危機を感じているのだろう。
 唇を噛んで、通路の奥へ走ろうとする。
 
「おっと、逃げるのかよ?」
 ゲドーは理子の背に、侮蔑した笑いを向ける。
「さすがシャンバラの代王様だ!
 ロイヤルガードなんざ、替えのきく虫けらくらいに思ってないようで。
 お偉いねぇー」
 けっけっけ、と嘲笑。
 単純な理子が引っ掛からないわけがない。
「なによ!
 そんなに倒されたいのなら、相手になってやるわよ!」
 理子は学生達を先に行かせ、自身は残る。
 彼女の身を心配する陽一と、護衛のフリーレ・ヴァイスリート(ふりーれ・ばいすりーと)ものこって、ゲドーは合計4名を相手にすることとなった。
 
 ■
 
(1対4か。まともに戦っちゃ、駄目だよなあ……)
 だが、超霊はそうそう使えない。
 そのことを、相手に悟られてもならない。
 ゲドーは、自分のフラワシで、彼らを相手にする。
 彼が嫌な目で眺めるのは、理子の手――斬姫刀スレイブオブフォーチュン、唯一。
 
 ゲドーの能力は、殺された武器に対抗できる力を持つこと。
 だが奴らにそれを知られてはならない。
 
 ソアが尋ねる。
「ねぇ、あなたのフラワシの能力って?
 使うと、大変なことになってしまうんじゃないのですか?」
「俺様のフラワシ? 【超霊ネバーエンド】のことか?」
 さぁ、とゲドーは意地悪く首を傾げる。
「じゃあ、使ってみなさいよ」
「超霊使ったら、時間切れの前に終わっちゃうじゃん。
 俺様は救出失敗したテメーらの姿が見たいんだよ」
 
 ゲドーが構える。フラワシを召喚する。
 
 ■
 
(なに! この人、手強いですよ?)

 ソアはゲドーから少し離れた位置から攻撃をしていた。
 ソアはコンジュラーではない。
 ゲドー自体はさほどではないものの、フラワシがいる。
 そのフラワシは、慈悲のフラワシ、鉄のフラワシ、焔のフラワシ、僥倖のフラワシで。
 複数のフラワシ自体は、統一されて一体になるが、性質はすべてそのまま受け継がれてしまうために厄介だ。

(せめて、時間稼ぎにでもなれば!!)
 見えないフラワシに翻弄されつつも、ブリザードや光術による目くらましで対処する。
「ご主人! 俺様が前衛に!」
 ソアの前に、ベアが立った。
 隠し縫い針を射出。
 ゲドー達を退かせる。
 
 そして、チャンスは来た!

 ゲドーが、理子の姿をした陽一に気を取られた隙だった。
 彼はすでに、ソアとの戦闘で疲れ果て、足下がおぼつかない。
 おまけにソア達の攻撃力は大きく、廃城のような通路の天井は、今にも崩れかけている。
「あたしが行くわ!」
 理子は陽一から魔剣を受け取ると、間合いを詰める。
 剣先をゲドーの首に突き付けて、スッと止めた。
「これで終わりよ。退きなさい、ゲドー」

 だが、ゲドーはいやな笑いを作ると、
「ふん、ありがとよ、代王さん」
 なんと! 倒れてくるではないか!
「え!?」
 ゲドーが理子の魔剣に自ら刺し貫かれる。
 と同時に、限界を迎えていた天井が崩落を始めた。
 困惑する理子を連れて退く一同。
「これで、俺様は無敵……だ……」
 言葉を最後に、ゲドーは瓦礫の中に埋もれて行った。

 ■
 
 その後、彼の残した銃型HCのオートパッピング機能により、ウゲンの所在場所が明らかになる。