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戦乱の絆 第二部 第四回

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戦乱の絆 第二部 第四回
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■地上・イコン市街戦

 何かを感じる。
 近くて遠い、その場所から。

 呼んでいるのか、呼ばれているのか、何も解らないけれど、
 ただそれが、とても大事な、大切な何かということだけは。


「ジークリンデさん!?」
 一つの思いに占められて、ジークリンデは新宿の町に飛び出した。
 無人の町をさまよって、呼び止められる。――ミルザムだった。
「一体どうしたんです?」
「解らないの……でも」
 何処かに、“結晶”がある。
 それを見付けなければならない、その思いだけが、胸にあるのだ。

 生まれ変わったジークリンデは今や、かつてアムリアナであった存在とは、全く別の人間となっていた。
 そうとしか見えなかった。
 けれど、それでも、やはり芯の部分で、最後の最後に、繋がっている部分がまだ、残されているのだろう。
 ミルザムの胸が熱くなる。
 しかしすぐにぎゅっと気を引き締めた。
 それどころではない状況が、二人の周りを取り巻いているのだ。



 鏖殺寺院のイコンと自衛隊のイコンが、東京の町中で、派手な市街戦を繰り広げている。
 その有様は、まるで何かの特撮映画のようだ。
「加勢に来たよ」
 ウサギイコン、ラーン・バディにパートナーの魔女、ミア・マハ(みあ・まは)と共に乗り、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)がイコン戦の行われている新宿に駆け付けた。
「……とはいえ、こんな町の中でイコン戦なんて、困るんだよ」
 町を見渡して、レキは顔をしかめる。
「此処では、重火器は使わない方がよさそうだよ」
 住民の避難がされているとはいえ、町を破壊してしまうのは出来るだけ避けたかった。
「なるべく町から外れた場所に敵を誘導するんだよ。
 ミア、周辺地図を検索して」
「命令するでないわ」
 ミアは言い返しながら作業する。
「ヤマトタケルのパイロットには通信が繋がるのか? おい、聞こえるか」
『聞こえている。援軍感謝する』
 ミアの通信に、自衛隊イコン、ヤマトタケルのパイロットが応える。
「付近に戦いやすい場所はあるか?」
『公園が幾つかある。
 だが、代々木公園や日比谷公園など、付近に重要施設がある公園は、避けるか充分に注意されたし』
「了解。協力感謝じゃ。これが終わったら一杯やろうではないか」
 わらわが奢るでな。手短に通信を終わらせ、ミアは近くの公園を探す。
「行くぞ、レキ」
「ボクにはそんなこと言わないくせに〜」
 ぶつぶつ文句を言いながら、レキは操縦桿を握り直した。
「当然じゃ、未成年!」


 とにかく、急を要する。
 峰谷 恵(みねたに・けい)は、鏖殺寺院イコン襲撃の連絡を受け、取るものも取り合えないほど急いで、アルマインで自衛隊イコンとの交戦現場に駆け付けた。
 到着し、上空から、一気に地上に下降する。
 既に、構えられたマジックカノンの照準は、鏖殺寺院イコンに合わせられている。
「照準オッケー、発射!」
 不意打ちの一撃が、鏖殺寺院イコンを吹き飛ばした。
「自衛隊イコンとの連絡、繋がりました。連携して動きます」
 通信を担当する、パートナーの剣の花嫁、エーファ・フトゥヌシエル(えーふぁ・ふとぅぬしえる)が言うと、
「りょーかい!」
と言って恵は、SAY−CEの武器をマシンガンに持ち替える。
 攻撃されたことで恵のイコンに気付き、地上で自衛隊イコンと交戦していた寺院イコンが、こちらへ向かって来る。
「飛んで火に入る!」
 恵も機体を空中に留めた。
 流れ弾が建物に当たるのは避けたい、と思っていたのだ。
 上空に出てきてくれれば有り難い。
 薬莢が落下するくらいなら、大した被害にはならないだろう。
「後方からも寺院イコンが向かってきています。気をつけて」
 死角から来るイコンを補足して、エーファが注意を促した。


「敵は多くもなし、少なくもなしといったところか……ジーナ、無理はするなよ」
 小型飛空艇で、戦場となっている位置より更に上空から状況の分析と索敵をしつつ、ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)のパートナー、ガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)は呟いた。
 ジーナはワイバーンのミスファーンの背に乗り、七尾 蒼也(ななお・そうや)と共に、陽動や囮の役目を引き受けて、ガイアスがいる地点よりも低い位置を飛び回っている。
 的としては小さ過ぎるのか、ガイアスの方には今のところ、イコンが向かってくる気配はない。

 ふとガイアスは、ジーナとは別の所へ目を向けた。
 戦闘の合間を縫って、一機のアルマイン・ブレイバーが、新宿の某ビルにとりつくのが見えた。
「あそこは……都知事達が避難しているビルか」
 ジーナも気付いたのか、そのアルマインを援護して、鏖殺寺院のイコンをそのビル近辺から引き離そうと動いている。

「全く、私の生まれ故郷まで戦場にしてくれるとは」
 ソーサルナイトの操縦席で、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)が鏖殺寺院のイコンを睨み付けた。
「おにいちゃんの故郷が戦争に巻き込まれるなんて……そんなの、許せない」
と、パートナーのヴァルキリー、クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)も憤る。
 涼介のHCを借りて、ビル内にいると思われるミルザム達に連絡を取った。
「助けに来たよ! ビルの北側から出て、すぐに左折して!
 100メートルくらい走ったら、地下鉄の入り口があるから」
「わかりました」
 ミルザムの返答が返る。
 ミルザムやジークリンデ達には、優先してやらなくてはならないことがある。
 彼女達を、速やかに先に進ませなくてはならなかった。
「此処は私に任せて、先を急いでください!」
「ありがとうございます。あなたがたもどうか、ご無事で」
 涼介の言葉にそう言って通信は切れ、ややあって、ジークリンデの手を引いてビルから走り出るミルザムが見える。
 涼介は、彼女達がイコンの戦闘、攻撃に巻き込まれないよう、地下に入るのを確認するまで、その盾となるように戦った。

「都知事達が地下へ降りるのを確認」
 ガイアスの通信に、了解、と言った蒼也がワイバーンを降りて後を追う。
 ジーナもそれに続き、それを見てガイアスも、ジーナと共に行くべく、小型飛空艇の高度を下げた。


 “パラ実イコン参上”。
 何もない上空に、巨大な文字が浮かび上がる。
 御弾 知恵子(みたま・ちえこ)のパートナー、機晶姫のフォルテュナ・エクス(ふぉるてゅな・えくす)は、戦う前に、自らのアピールを忘れなかった。
「これでよしっと」
「ほら、さっさと戻んな。始まるよ」
 號弩璃暴流破のハッチを開け、メモリープロジェクターで空中上映を済ませると、フォルテュナは素早く操縦席に戻る。
「よっしゃあ、パラ実イコンの伝説、地上にも打ち立ててやるよ!」

 ――だがしかし、知恵子達の乗る巨大な顔イコン、離偉漸屠は、通常のイコン達に比べれば、悲しいまでに弱い。
 遠距離からの爆撃であれば、まだ、機体の性能に左右されないのだが、知恵子は周囲への被害を懸念して、接近戦を選択した為、不意打ちの一撃目を決めた後は結局、鏖殺寺院イコンにいいようにあしらわれる結果となってしまった。
「顔イコンが転がされているぞ!」
 自衛隊のヤマトタケルに拾われて、
「かっよく自衛隊イコンを助けて、『顔イコンに助けられた!』と感心されたかったのによお!」
と知恵子は地団太を踏んだが、仕方がないので作戦を変える。
 周囲には、戦闘の末、倒された鏖殺寺院イコンが幾つも転がっている。
「どうするんだ?」
 にまりと笑う知恵子に、フォルテュナが訊ねた。


 一方、同じくパラ実の吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、全く無理をしなかった。
(どうするんだい?)
 やる気満々でオレの女1号に乗る竜司に、パートナーの強化人間、上永吉 蓮子(かみながよし・れんこ)が訊ねる。
「ま、正面切って戦ってもやられちまうだろうからな」
 イコンをキャンピングカー扱いくらいしかしたことのない竜司も蓮子も、イコンの操縦には全く慣れていない。戦闘となれば尚更だ。
「だから、戦うんじゃなく、町を護っといてやるのよ。
 避難してる連中が戻ってきた時、町が跡形も無かったら寂しいだろォ?」
(ふっ、なるほどね)
「パラ実の活躍、地上の奴等に見せ付けてやるぜ!」
 かくして、鏖殺寺院イコン対自衛隊・シャンパラ混合イコンの戦闘が行われている間、流れ弾や飛んでくる瓦礫などから町の建物を護ろうと奮闘する、涙ぐましいセンチネルの姿があったのだった。

 竜司のセンチネルは飛行が出来ない為、頭上を飛んでいく瓦礫を受け止めるのが間に合わなかったり、電柱に躓いたりしてしまったりもしたのは余談である。


「地下に潜って行ったイコンがいるらしいぜ!
 どこのどいつだ、そんな馬鹿なことしやがるのは!」
 搭乗するダーク・ヤングの操縦席で、通信機に向かって、瓜生 コウ(うりゅう・こう)が怒鳴った。
「地下に潜入したポイントを探せば、進行ルートを予測できるかもしれないわ」
 パートナーのハーフフェアリー、マリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)の言葉にコウも頷く。
「あと、戦線が新宿から池袋方面へ動いてる。
 地下にまで影響が行くか解らないが、注意しとかないとな」
 溜め息をひとつつき、前髪をかきあげて落ち着きを取り戻し、自らに言い聞かせるようにコウが言うと、
「わかったわ」
と言ってマリザは、地下探索組へ連絡すべく、HCを手に取った。
 万が一にも通信を鏖殺寺院イコンに傍受されないよう、暗号通信を使って、地下にいるシルヴィオ・アンセルミ達に現状を伝える。
「寺院イコンを近付けないで欲しいポイントがあるそうよ」
 シルヴィオからの返信に、マリザは声を固くした。
「何処だ?」
 結晶の在処が解ったのだろうか。コウの表情も険しくなった。


 戦闘は、全体的にシャンバラ・自衛隊側がおしているものの、鏖殺寺院のイコンは、町を破壊することに躊躇いが無い為、どうしても戦い方に差が生じてくる。
 場所を移そうという誘いにも、中々乗らなかった。
 それでも、涼介らの機転により、最大の目的である、ミルザムとジークリンデを地下の“結晶”探索に進ませる、という目的は果たしている。

 後は、鏖殺寺院イコンを一掃するか、撤退させるかだ。

「ちっ、戦況がバラけて来てやがるな……」
 パートナーのヴァルキリー、キリカ・キリルク(きりか・きりるく)と共に、エンペリオス・リオに乗り、自衛隊イコンの後方から援護に回って戦っていたヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)は、戦況を見て眉をひそめた。
 個人戦にならないよう、自衛隊イコンと連携を取りつつ味方に指示を出していたが、避けたい事態になりそうな気配である。
 味方を孤立させないように指示を出していたというのに、自分が孤立してしまっては本末転倒だ。
 全体的に見てもそうだが、個人的にも、単独戦は避けたいところだった。
 機体の性能ではない。敵の方がイコンの操縦に手馴れている。
「キリカ、後方に下がれ! 飛び出し過ぎだ、右手の寺院イコンを躱して自衛隊イコンと合流する!」
「了解です」
 指揮をヴァルに任せ、前方の寺院イコンに集中し過ぎて誘われてしまったと気付き、キリカは慌てて操縦桿を戻す。
 だが、戻ることに気付いた前方のイコンと右手のイコンに挟まれてしまい、ヴァルは舌打ちを漏らした。

 そこへ、寺院イコンの側面から、葦原 めい(あしわら・めい)のイコンが、マジックカノンで不意打ちの砲撃を仕掛けた。
 被弾し、めいの方に反応した寺院イコンに、すかさず、エンペリオル・リオがサーベルで斬り掛かる。
 そこに大きな隙が出来た。
 めいのイコンがハンドガンを連射しながら、一気に間合いを詰める。
「今必殺の!」
 そして素早く、武器を光条サーベルに持ち替えた。
「ありが刀(とう)ッ!」
 ばっさりと、寺院イコンが斬り捨てられ、一方で、ヴァルを挟み撃ちしようとしていたもう一体のイコンには、自衛隊イコンが攻撃する。
「助かったぜ!」
 この俺ともあろう者が、と不覚を覚えつつも礼を言ったヴァルに、
「お互いさまだよ!」
とめいは応える。
 初手は不意打ちだったが、向かって来る寺院イコンに対し、めいのイコンは堂々と立ちはだかり、そして熱く名乗った。
「こんにちは笑顔! さようなら涙!
 グレートありがとウサちゃん、此処に見参!」
「そ〜く〜」(←パートナーの八薙 かりん(やなぎ・かりん)による合いの手)
「蒼空王国機甲ですっ!!」