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戦乱の絆 第二部 第四回

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戦乱の絆 第二部 第四回
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■ゴーストイコン戦1

東京湾沖にて。

シャンバラ教導団【新星】リーダーの、
クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は、
島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)とともに、
クェイル、LAHに搭乗し、
指揮を行っていた。
【新星】において、クレーメックがゾディアックへの突破作戦、
サブリーダーの香取 翔子(かとり・しょうこ)が、
空中ドックの防衛の指揮を行うことになっている。

「どんな大軍であろうと、
注意深く観察すれば、必ず手薄な所はみつかるはず。
わたくし達は簡単には諦めませんわ」
凧型フライトユニットの操縦を行い、
ヴァルナは、クレーメックが戦況を把握しやすいように心がけていた。

ヨーゼフ・ケラー(よーぜふ・けらー)
エリス・メリベート(えりす・めりべーと)は、
クェイル、ヴィーキングに搭乗し、
随伴歩兵を務める、
マーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)
早見 涼子(はやみ・りょうこ)とともに、
敵戦力を少しずつ削っていく。

【新星】は基本的にイコン1機と、
随伴歩兵の編隊を組み、
ゴーストイコンとアンデッド随伴歩兵の両方に対応しているのだった。

「ゴーストイコンやアンデッドに高い知能があるとは思えません。
効率よく敵を倒すためには、
敵の行動パターンを分析する必要がありますわ」
「敵の行動パターンを予測して、先手を取り続ける。
そうすれば、どんな大軍も恐れるに値しない」
エリスとヨーゼフの提案で、
ゴーストイコンとアンデッド随伴歩兵の行動分析が行わる。

「シャンバラ国軍の名誉にかけて、女王陛下は必ずお救い申し上げる!」
マーゼンが、ヴィーキングに接近しようとした
アンデッドを攻撃する。
「さあ、もうお休みなさい。
あなた方はもう十分に戦いました。
イナンナ様、どうか、この哀れな魂を安息の地へとお導き下さいませ」
涼子が、女神イナンナへの祈りを唱え、
仮初めの命を与えられたアンデッドを眠りにつかせる。

「地球とパラミタ、
二つの世界の無数の生命を守るため、我々は各々の戦いを続けています。
女王陛下、どうか、あなたも戦いに加わって下さい。
あなたの力で、意志で、想いで、人々を守るために!」
冷静な指揮をしながらも、クレーメックの熱い想いがほとばしる。

「ここで諦めたら、今まで国軍の一員として積み上げてきた事が全てムダになる。
そんな事は、断じて許すわけにはいかん!」
ヨーゼフの、シャンバラ国軍軍人としての誇りが。
「女王陛下、我らの想い、どうかお受け取り下さい!
我ら、生命果てるまで、陛下の剣となり盾となって戦う所存にございます!」
マーゼンの、強い忠誠心が。

それらの想いは、大空に舞い、二つの世界を守るための力となっていくのだった。



館下 鈴蘭(たてした・すずらん)霧羽 沙霧(きりゅう・さぎり)
イーグリット、ネレイドが、
機動力を生かして、
飛べないイコンの元に、ゴーストイコンを誘導する。
「捕まえてご覧なさい!」
動きの鈍いゴーストイコンに、ネレイドを捕えられるはずもない。
沙霧が、戦況を分析して、攻撃タイミングを味方に伝える。
「今です……!」
飛空艇の甲板に並んだシャンバラのイコンの一斉射撃で、
ゴーストイコンは次々に撃墜されていく。

シフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)
ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)
イーグリット、コキュートスが、
他校生の撃ち漏らしたゴーストイコンをビームサーベルで両断する。

イコンに乗り慣れていない味方を支援すること。
敵に包囲されないように注意すること。
シフたちが、今回の戦いで心がけていることだった。
「さりげないフォロー、うまくいったみたいだねっ」
ミネシアが言う。
「新米パイロットさんに華を持たせてあげられたかな?」
見れば、友軍のクェイルが軽く手を振っている。
「よかったですね。
天学のイコンパイロットとして恥じない働き、して見せましょうね」
シフが微笑を浮かべて答えた。

おびき寄せられたゴーストイコンは、
一箇所に固まり、合体しようとしていく。
「兄さん、気をつけて! 連携して攻撃しよう!」
和泉 結奈(いずみ・ゆいな)に注意を促され、
和泉 直哉(いずみ・なおや)は、
イーグリット、スプリングで躍り出る。
「ちまちま倒すのも面倒だ。まとまってくれた方がありがたいってもんだぜ!」
ネレイドコキュートスも、
機動力を生かして、巨大ゴーストイコンを翻弄する。
「でかくなった分、機動力は落ちてるな。
俺達、天学のイーグリットの敵じゃないぜ!」
直哉は、強敵の前でもあえて余裕を忘れず、気合を入れる。
「守りたい仲間だっているし、まだ決着を付けてないライバルだっているんだ。
先に世界が終わってもらっちゃ困るんだよ!」
直哉の想いがほとばしる。
「まだ、全部終わっちゃうには早すぎるよね……?」
結奈の想いが、パートナーの横顔を見ながら紡がれる。

「今だっ!」
スプリングがビームサーベルで切り込み、
巨大ゴーストイコンがバランスを崩したのを合図に、
味方の一斉攻撃が行われる。

新月 亜美(にいつき・あみ)
庭坂 信司(にわさか・しんじ)
クェイルも、
アサルトライフルを連射する。
「これ以上先へは進ませないんだからっ!」
亜美は、遠くの東京の街を横目につぶやく。
「だいたい冗談じゃないよ、日本を巻き込むなんて!」
生まれ故郷の、両親や、近所の駄菓子屋のお婆さんのことを思い浮かべる。
「亜美……」
そんなパートナーを信司が思いやる。
「絶対に、この日本は守るっ!勿論シャンバラの事も!」
「大丈夫だよ。滅ぼさせやしない。僕も付いてるからね」
優しく言った後で、信司が、付け加える。
「あと、もし無事に守り切れたら、君の御両親に挨拶に行ってもいいかな?」
「却下! なんかそれは死亡フラグっぽいし!」

そんな会話をしつつ、亜美と信司も善戦する。
それは、天学の先輩たち、鈴蘭、シフ、直哉たちのフォローもあってのことだった。

「お父さん、お母さん……。
それに友達だって、この東京に居るんだっ! 絶対に此処は死守してみせる!」

亜美をはじめとする操縦に慣れないパイロットたちも、
二つの世界を守りたいという想いは同じなのだった。