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リアクション
ネフェルティティ女王、つかのまの安らぎ 2
一方、玖純 飛都(くすみ・ひさと)と
矢代 月視(やしろ・つくみ)は、
ネフェルティティの様子が気になってかけつけたものの、
どう接していいのかがわからずにいた。
「オレに子供のお守りなんて出来るわけないだろう!?
そりゃ学長よりはマシかもしれないが。
自分自身がまともな育て方をされなかったのに子守なんて出来るか!?」
「私は世話係はやってましたが子守はしてないんですよ。
君はその点全く手が掛からなかったですしね。
大体、知り合いの子に懐かれているのは君の方でしょう?」
言いあう飛都と月視を見て、
ネフェルティティがぐずりはじめる。
「ふえっ、えっ、えっ……」
「わー、泣くな、泣くな!」
飛都に抱き上げられ、ネフェルティティはじっと、飛都の顔を見つめる。
「うー?」
「心配ない、皆ここにいる」
じっと、ネフェルティティを支え、見つめ返すと、
飛都は、鼓動が伝わるよう抱き、体温が伝わるようにする。
「やはり、なかなかうまいじゃないですか。
ところで、この子はどこの子ですか?」
「知らなかったのかよ?
ネフェルティティ女王だぞ」
「え? 冗談抜きで?
……無力なりに精一杯生きている
普通の赤ん坊に見えますけどね」
月視は、飛都に抱かれるネフェルティティを見て、そうつぶやいた。
「ネフェルティティちゃん。
だっこしましょうね」
佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)も、
ネフェルティティを抱き上げ、優しく揺らす。
「あー。きゃっきゃ」
「ふふ。ごく普通にあやしてあげるのがよかったりするんですよねぇ」
ガラガラを持った佐野 悠里(さの・ゆうり)が、
ネフェルティティの顔の周りでふってあげる。
「あー。だー」
「喜んでるみたいね」
「ふふ、かわいいですねぇ」
ルーシェリアが笑顔を向ける。
その様子を見て、母であるルーシェリアを取られてしまったように思い、
ちょっと寂しくなる悠里だったが。
(って、悠里はもう大きくなったんだから、
赤ちゃんに嫉妬なんてしてられないわ!
それよりちゃんとお母さんのお手伝いしないとね)
そう考えていると、ルーシェリアがつぶやく。
「将来、悠里ちゃんを産んであやす時の練習にもなるでしょうから、
がんばってあやすですぅ」
「お母さん……」
悠里は、ルーシェリアに寄り添い、一緒にネフェルティティのお世話をした。
一方、白雪 魔姫(しらゆき・まき)は。
「あー……ワタシ、こういうの苦手なのよ……。
何とかしたいとは思うけど……どうすればいいかわからないのよね。
悪いけどフローラにお願いするわ」
フローラ・ホワイトスノー(ふろーら・ほわいとすのー)に言った魔姫だったが。
「笑顔で楽しい歌でも歌ってみたらどうかな。
ほら、魔姫も歌くらいなら歌えるでしょ?
せめてそれくらいは一緒に手伝ってよ」
「歌?
そうね。子ども番組の歌のコーナーみたいな感じね。
ちょっとやってみましょうか」
魔姫は、フローラといっしょに、歌を歌い始める。
「あー、だー。うー」
「もしかして、一緒に歌ってるの?」
「ふふ、そうかもしれないよ」
魔姫とフローラの歌声に合わせて、
声を出しているネフェルティティを見て、二人は顔を見合わせる。
「ふふ、こうして見ると、なかなかかわいいじゃないの」
魔姫が表情をほころばせるのを、
フローラはほほえましげに見つめたのだった。
「わはっ、可愛いな!
ネフェルティティなんだろ?」
エルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)が駆け寄ってきて、
ネフェルティティに話しかける。
「あ? うー?」
「ほら、いないいないばあ!」
「あー。あうあー」
「あはは、髪引っ張るなって」
エルシュが連れてきたわたげうさぎたちが、
ネフェルティティにすりよっていく。
「あうあー」
「お? 動物さんが好きなのか?
だったら、
『俺が馬になるんで乗ってください女王様』」
エルシュは、お馬さんごっこで、
ネフェルティティを背中に乗せた。
「ほーら、ぱかぱか」
「きゃっきゃっあー」
「まさか、そういう趣味があるんじゃないでしょうね」
ディオロス・アルカウス(でぃおろす・あるかうす)が、その様子を見て言う。
「生温かい視線やめろよー」
「わ、髪引っ張らないでって!
ほら、走りますから!」
「きゃっきゃ!」
エルシュがネフェルティティを乗せて走りまくる。
「つ、疲れた……」
「ほら、どでかマシュマロのクッションです。
甘くておいしーですよ?」
床にへたばっているボロボロになったエルシュからバトンタッチして、
ディオロスが、ネフェルティティをふかふかのどでかマシュマロに乗せる。
「あうあー。あーう」
「え、今度は私が馬なんですか?」
「よし、お兄ちゃんとして気にいられたみたいだな」
エルシュが楽しそうに、ディオロスの背中にネフェルティティを乗せる。
(お兄ちゃん……)
ディオロスは、かわいさのあまり、
ネフェルティティの髪やほっぺをわしゃわしゃした。
「きゃっきゃ。あー」
「かわいいですね」
2人ともボロボロになったが、すっかりメロメロであった。