空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【1】地下街を駆け抜けて 1

 情報処理網と封鎖線が構築された中、
 空京にあるデパート内は混乱を極めていた。
 モンスターたちの喚声に市民の悲鳴が絡み合い、危機を孕み、絶望を奏でていた。
 逃げ惑う市民達を、楽しそうに追いかけまわすモンスター。
 理性の箍が外れているようにも見える。
「そこまでだ!」
 と、押し寄せる市民の波を逆走するヒーローが一人。
「蒼い空からやって来て! 夢と希望を護る者! 仮面ツァンダーソークー1!!」
 気性の荒い馬、マシンシルバージョンから飛び降りた仮面ツァンダーソークー1、またの名を風森 巽(かぜもり・たつみ)
「チィッ! 想像以上の数、だな……!」
「が、がんばれー! ひーろー!」
 弱音を零しそうになる巽の鼓膜に、子供の声援が届く。
「なぁに、このくらいっちょちょいのちょいだ! ティア!」
 振り向かず、背中越しにティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)の名を呼ぶ巽。
「了解だよ、タツミ! 避難はこっちで任せてっ。
 皆、そのまま直進して避難だよ!」
 ティアの言葉を聞くよりも早く市民は逃げていく。
 モンスターもそれを追いかけるために、前進しようとする。
 しかし、目の前には巽。
 不用意に近づいたモンスターを射程に捕えた巽が飛翔し、利き足を突き出した。
「ソゥクゥッ!! イナヅマッ!! キィィィッックッ!!」
 空裂くような強烈なイナヅマキックがモンスターの顔面へ。
 ひしゃげた顔は戻ることなく、ドスンと音を立ててモンスターは倒れた。

 巽が時間を稼いでいる間、ティアは避難誘導に専念。
 後方へ後方へと走り逃げていく。
 しかし、この状況。
 誰もが我先にと心を一杯にして、前を行く人間を押し退けて、終いには殴り合いが始まるところもある。
「ちょっと、やめなさいっ!」
 ティアが止めに入るものの、一人では抑止の手が足らない。
 そこへ経堂 倫太郎(きょうどう・りんたろう)ウィリアム・チャロナー(うぃりあむ・ちゃろなー)が手助けに入る。
「皆さん落ち着いて下さい、これより後方にモンスターはいませんよ」
「そこも喧嘩はやめなされって」
 市民を落ち着けるように、叫ぶトーンにも気を払う倫太郎。
 一方のウィリアムは喧嘩の仲裁に入る。
「今、前ではヒーローが戦ってくれている。
 更にこの後ろではバリゲードも展開しています。落ち着いて、移動をお願いします」
「そうよっ! あのヒーローはそう簡単に負けないから、安心して!」
 倫太郎の呼びかけにティアも乗っかり、市民を安心させようとする。
 これに対して大方の市民はどうにか心の平成を取り戻した。
 しかし、いまだに取り戻せない二人の市民がずっと喧嘩をしていた。
「ちんたらと走ってるんじゃね! なんだったらモンスターの餌になってこいや!」
「ご、ごめんなさいっ」
 片方の市民が一方的に怒鳴り散らしている。
 それを見かねた倫太郎が二人の所へ駆け寄る。
「抑えて下さい。今は避難が先決です」
「るせぇ! こいつの命で俺の命が助かるってんなら安いもんだぜ!」
 その言葉を聞いた倫太郎は、優しく微笑んだ。
「……それはいい案だ。なら邪魔な口を塞ぐついでに、あんたに餌になってもらおうか」
 優しげな微笑を失った倫太郎の手には銃。
 銃口は自己中心的、高慢ちきな市民へと向けられる。
「避難を邪魔する奴は死刑。こういう状況だと法的に緊急避難が適用される、だとしたらどうする?」
 銃ではなく、その鋭き双眸に射抜かれた市民は何も言い返せず、ゆっくりと避難していった。
「紳士的、ですなぁ?」
 倫太郎の紳士的説得にウィリアムは少しだけ苦笑し、避難誘導へと戻っていった。