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リアクション
第4章 対決
拠点の撃破に成功した、との連絡が林から入っても、本校を襲う鏖殺寺院の攻撃の手が緩むことはなかった。
「その程度じゃあ引き下がらないってことか……」
技術科研究棟の前で、『光龍』肆号機のデゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)は呟いた。
「そろそろ決着をつけたいよな……。なあ、ネージュに囮になってもらえねえかな? ルドラはネージュの顔を知ってるんだろ? だったら、ネージュを外へ出して敵に見つけさせれば……」
「確かに、敵をおびき寄せるにはいい作戦だと思うけど、高速飛空艇を相手にするなら微妙なところじゃないのかな。機銃掃射から守り切れるか?」
パートナーの機晶姫ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)が眉をひそめた。
「るーちゃん、でぜるのさくせんがうまくいくようにてつだう!」
頭の上にドラゴニュートクー・キューカー(くー・きゅーかー)を乗せた英霊ルー・ラウファーダ(るー・らうふぁーだ)が元気良く手を挙げる。
「うーん……それに、そういう不意打ちみたいな方法、オレはあんまり好きじゃないんだよなぁ」
それでもルケトはデゼルの作戦に賛成しない。
「ちょ、ちょっと待てよ」
バリケードの内側で歩哨に立っていた大岡 永谷(おおおか・とと)が、デゼルの言葉を聞きとがめた。
「鏖殺寺院を本校内から除くことと、ネージュさんを守ること、両方が俺たちの任務だろ? 護衛する対象をわざわざ危険に晒してどうするんだよ」
「囮にして、なおかつ絶対に安全を確保できるという保証があれば、話は別でございますが」
パートナーの剣の花嫁ファイディアス・パレオロゴス(ふぁいでぃあす・ぱれおろごす)がうなずく。
「ネージュさんを守り切ったら、永谷においしくて豪華なご飯をおごってもらうんだから、危ない作戦はいやだよー」
相変わらず光学迷彩を使ってバリケードの内側に隠れている熊猫 福(くまねこ・はっぴー)が言った。
「そのへん、何か作戦はあるのか?」
ルケトに聞かれて、デゼルは大真面目な顔で答えた。
「えーと、……殺られる前に殺れ?」
「そんなの、作戦でもなんでもないじゃないか……」
「ネージュさんは機晶姫だけど、衛生科だし戦闘能力は低いよ。鏖殺寺院を相手に、しかも囮ってことは、少なくとも敵に襲わせるだけの隙を見せないといけないってことだろう?」
ルケトと永谷は口を揃えて反論する。
「いや、一応、ルーに手伝ってもらって、行動範囲を制限しようとかは考えてるんだが……」
デゼルはもごもごと言ったが、ルケトの渋い表情と永谷の厳しい視線を見て、しぶしぶ提案を引っ込めた。
「……敵が、引いて行く……?」
パートナーの機晶姫、と言いつつ外見はアタッシュケースなリリ マル(りり・まる)、ゆる族ナッシング・トゥ・セイ(なっしんぐ・とぅせい)と共に『技術科』の看板を掲げてある秘術科研究棟前で敵と交戦していた一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)は、敵の動きが変わったことに気付いた。
「敵はここに居るでありますよー」
マルがメモリープロジェクターで教導団生徒の姿を投影して挑発しても、攻撃して来る気配もない。
「さすがに、ここが囮であると察知したんでしょうか。それとも、敵がネージュさんの居る場所をかぎつけたか」
ネージュがルドラの気配を感じ取れるということは、ルドラもまたネージュの気配を感じ取ることができるのではないかとアリーセは考えている。
「では、予定通り追撃に移りますか?」
光学迷彩を使ってバリケードの内側に隠れていたナッシングがゆらりと立ち上がる。
「そうですね。上手く敵の戦力を分散させることが出来ればいいんですが」
アリーセはマルを担いでバリケードから出た。ナッシングもそれに続く。
「敵が技術科研究棟に殺到していますぞ!」
ヒポグリフ隊の道明寺 玲(どうみょうじ・れい)は、携帯を取り出し、指揮本部に連絡をした。地上も上空も、すべての敵が技術科研究棟を目指して移動を始めている。
「イルマ、飛龍一匹でもいい、敵の足を止めるのです!」
「了解どすえ」
パートナーのイルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)と二人で、ちょうど飛んで来た飛龍にまとわりつき、魔法も使って進路を妨害する。だが、飛龍は全速力で二人を引き離し、技術科研究棟へと向かった。
「やっぱり、直線ダッシュではかないまへんなあ……」
ため息をつくイルマを急かして、玲も技術科研究棟上空へ向かう。
「いよいよ、でありますね」
『光龍』参号機の金住 健勝(かなずみ・けんしょう)は、隣に座るパートナーの剣の花嫁レジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)の手をぎゅっと握り締めた。
「大丈夫です。信じていますから…必ず勝てるって」
レジーナは微笑して、健勝の手を握り返す。
参号機は、神代 正義(かみしろ・まさよし)とパートナーのゆる族猫花 源次郎(ねこばな・げんじろう)が搭乗する伍号機と共に、技術科研究棟からやや防壁寄りの場所に居た。
「弾切れになったら技術科に撤退するので、そのつもりで居て欲しいのであります」
「本当は先に《冠》を安全な場所に移せれば良いんでしょうけど、貴重な防空戦力ですしね……。了解です。撤退のタイミングは指示してください」
参号機の砲手を務めるグロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)は、健勝の言葉にうなずいた。
「来たわよ!」
グロリアーのパートナー、剣の花嫁アンジェリカ・スターク(あんじぇりか・すたーく)が助手席で叫ぶ。数頭の飛龍が、次々にこちらへ向かって飛んで来る。
「神代殿、時間差で攻撃するであります!」
「おう! 行くぜおやっさん!」
正義は源次郎に声をかける。
「おうよ!」
さすがに最終決戦だけあって、普段飄々としている源次郎も気合が入っている。
「撃ッ!」
「正義は必ず勝ァつ!!」
砲手の声と共に、正義は発射ボタンを押した。飛龍が身体を傾けながら、左右に旋回して光の弾丸を避けようとする。だが、一頭は避けきれず、翼の端が吹き飛んだ。そして、
「今です!」
グロリアの合図と共に発射された参号機の弾は、別の飛龍に命中する。
「うわっ、落ちて来る!」
アンジェリカが悲鳴を上げた。運転手の機晶姫レイラ・リンジー(れいら・りんじー)が『光龍』を急発進させる。
「きゃあっ!」
座席で前のめりになったレジーナを、健勝は支えた。その目の前に、飛龍は地響きを立てて墜落した。
「無事か!?」
「大丈夫であります!」
心配そうな正義の声に、健勝は答えた。が、
「おいでなすったぜ……」
源次郎が顎をしゃくった。墜落して横たわる飛龍の向こうに、こちらへ向かって突撃して来る蛮族たちの姿が見えた。
「あいつらに向けてこいつをぶっ放せれば楽なんだがなあ」
正義は残念そうに言う。
周囲を固めていた生徒たちが、飛龍の体を遮蔽に取って応戦を始めた。車体に弾丸がはぜる。
「弾丸を防ぐものがある場所に移動するであります!」
「了解!」
健勝の指示で、グロリアは再びアクセルを踏んだ。伍号機も後を追う。その頭上を、黒い影が追い越した。
「高速飛空艇!」
正義は、砲手の生徒に高速飛空艇に照準をあわせるように言った。しかし、高速飛空艇はあっと言う間に遠ざかってしまった。
「くそ、やっぱりあのスピードには俺たちだけじゃ勝てねえか……」
正義が悔しそうに呟く。その時、
「ほらほら、こっちですよ!」
蛮族たちの背後から、一条 アリーセたちが現れた。マルがメモリープロジェクターで生徒たちの姿を投影すると、蛮族たちの注意がそちらに向く。その間に、健勝と正義はバリケードのある場所まで移動した。
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