リアクション
第三章 「教導団第四師団付秘書、御茶ノ水千代!」 「な、何教導団!?」 教導団クレセントベースはミカヅキジマから、コンロン内地への調査へと数名を向かわせていた。中でも御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)は、使命感から早々、内地の勢力に接触し真っ向からの平和交渉に挑んだ。その場所は、廃れたかつての都ミロクシャの東岸であり、新軍閥を名乗るのは付近で暴れ回る夜盗たちであった。 交渉はそう簡単とはいかなかった。 「……ほう。ご苦労であるな。しかしな、我々の軍閥には、強い味方がすでにおってな」 「え……っ」 「それでもう他の軍閥に負けることはないのじゃ。 わかるかの。龍騎士が味方についておるのじゃからのう! ところで、教導団は何しに来たのじゃあ。戦争を止めにきたということか?」 「龍騎士。では帝国が……!」 外は、夜盗たちの形成するちょっとした夜の街である。かつての都の跡を自分たちのいいように使っているだけの荒み放題の街であるが。統治の理念も責任感もない成り上がりの領主を押さえ込むには、今の私では力不足か……千代は、失望感と自らの力の至らなさに憤りを覚えつつミロクシャを歩いた。 「おい。お姉ちゃん、どうだ俺たちと飲みにいかねぇか!」 賊ふうの物騒な連中が声をかけてきた。 「……」 少々自棄になりかけていた千代は彼らに連れられていってみる。――まぁいいわ。何か情報が得られるかも……襲って来ようものなら、ぶっ飛ばしてやるだけ。 「……」 そうしてカラオケスナックに移動した千代。――年齢のことは「もう聞くな!」の今日この頃な、孤独と紫煙を愛する三十九歳(言っちゃった……)。な私を襲っては来ないか。はぁ。 「♪なーみーだーのー、しーぐーれぇ。ForYou〜〜(パチパチ。)八十七点か。ぐへへ。 さあ千代さんも、もう一曲歌ってくださいよ!」 「いいわよ! 最近はアイドルシナリオもこなす私ですもの! 昭和の歌なら任せてよ! 何がいい?」 ノリノリで夜を明かす千代。夜は明けないが……。賊どもは酔いつぶれてしまった。 「はぁ。楽しかった……どうもお肌に悪いアクションになりがちね。そろそろ帰りますか。いや、だけど、第四師団付秘書として、このまま本営には帰れない。マスター?」 スナックのマスターは、 「ええ。そうですね。この辺りで手柄を立てたいなら……」 ――ミロクシャ西岸では、龍騎士や夜盗勢力に対抗しようという、かつてのコンロン帝を担ぐ旧軍閥が戦士を探している? ――コンロン山周辺には、溢れ出た亡霊たちが形成するボーローキョー。 なるほど。ミロクシャ東岸の夜盗勢力、西岸の旧軍閥、ボーローキョーの亡霊。そしてエリュシオンからは龍騎士が、シャンバラからは私たち教導団が…… 「戦のにおいがしますね。どことどこが結ぶか。どの勢力が力を付けるか」 「違うわ!」 千代はテーブルをどん、っと叩く。 「私たちは、戦火を拡大させないために、来たのよ。私は、その鍵を探しに行く……!」 |
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