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リアクション
ここにも、西王母を別のルートで目指す教導団員。
参謀科、天霊院 華嵐(てんりょういん・からん)。華嵐らは、調査班として先行して内地に渡った一組であった。
地形図を作成しながら、コンロン全図の最北に記した大樹。世界樹……ユーレミカという土地にある、と調査の中で、聞いた。
華嵐は、ミロクシャ方面から砂漠を渡った後、エルジェタ密林に近づいていた。
しかしここに足を踏み入れると、獰猛な魔物が棲息しており襲いかかってくるという。
「下手に踏み込むべきではないな……森の中までは、いいだろう。……それに」
更に北にある、ユーレミカか。世界樹、西王母……気になる。
「森の外側伝いに歩いて、地勢を調べながら、北へ向かおう。ユーレミカも、無論、調べておく必要はあろう。
……聞いているのか、豹華?」
「はっ。これって……愛の逃避行?」
華嵐に密かな思いを寄せる、獣人の天霊院 豹華(てんりょういん・ひょうか)。
「はぁ?」
「な、なんでもねぇよ!」
遠い地への華嵐との二人旅に、ついそんな妄想がときどき、暴走してしまうのである。
「まったく、少しくらいきちんと調査をやりたまえ……オルキスを見習って」
はっ。そうだった。二人旅じゃない。小さな竜のオルキス・アダマース(おるきす・あだまーす)も一緒なのだ。
「ちっ」豹華は舌打ちし、えらっそうなことだと、情報分析と言って華嵐の描いた図を見ているオルキスをにらむ。
「なに。どうかしたの?」
「フン。天真爛漫にかわいさをふりまいてるくせによ、本人はカッコいいつもりなのか咳払いなぞして情報分析の真似などしちゃってよ」
「真似じゃない! 情報分析だ! ねえ華嵐、聞いて。オルキスは経理と資料検索のスキルがあるから、わかるよ」
「ふむ、ふむ」
「く、……!!」
魔物を振り払ったり、野宿の際に見張りをしているのは、オレだぞ! 華嵐だって、参謀科なのかしらないけど、そういうオルキスの方がちょっとばかし知力で役に立つとこを誉めやがって。オレを、オレを見てくれよ、華嵐〜。豹華はそう言いたい。
「? 何を見ているのだ、豹華。そういえば、そろそろ夕飯時かな。まったく時間の感覚が狂う。
豹華、料理を頼む」
料理をしているのもオレなんだ! 豹華は泣きそうになる。
「あ、華嵐」オルキスが、急に声の調子を変えて言う。どうしたのか、これもまた泣きそうな様子である。
「どうした?」
「く、来るよ。竜の勘でわかる……」
三人は、木陰に身を隠した。
「りゅ……龍!」
密林の上空から、飛龍の群れが現れた。西へ飛んでいく。続々と出てくる。帝国の、龍騎兵団か。