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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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「や、やめてくれ! 今日、僕は家で大人しくしているんだぁ!」
 榊 朝斗(さかき・あさと)ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)ちび あさにゃん(ちび・あさにゃん)に掴まれ更衣室へと連れ込まれそうになりながら声をあげて必死に抵抗する。
「往生際が悪いですね。せっかくジーナさんがあなたのために作ってくれたんですから、大人しく着てください!」
「私もきさせられた……」
 すでにルシェン達によってメイド服を着させられ、悔しそうな表情をしたアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)までもが朝斗の的に回っていた。
 それでも抵抗をやめない朝斗は、客席でくつろぐ七尾 正光(ななお・まさみつ)直江津 零時(なおえつ・れいじ)に目があった。
「正光さん! 零時さん! 助けてください!」
 正光と零時は顔を見合わせる。そして、朝斗に微笑み、手を振った。
 彼らの表情からは「巻き込まれたくないので関わりません」というオーラが溢れ出ていた。
「裏切り者ぉぉぉ~~……」
 結局、朝斗はあえなく更衣室に連れ込まれていった。

 数分して肩を落とした朝斗が更衣室から出てきた。
 その恰好はメイド服というよりは浴衣に近かった。裾の短いに色鮮やかな朝顔柄の浴衣の上から白いエプロンが付けられた、そんな感じの和風メイド服だった。
「うぅ……恥ずかしい。……けど、スカートじゃないし、見えないだけマシ、なのかな……」
「ふふふ、それはどうですかね」
 ルシェンが怪しげな笑みを浮かべて朝斗の後ろに立つと、服を固めていた帯に手をかけ引っ張った。
「あ、そっれぇぇ~~」
「え、う、わわわわわ……」
 クルクル回る朝斗。
「よいではないか。よいではないか」
 ルシェンは悪代官乗りで楽しそうだった。
 帯と一緒にエプロンまで取られた朝斗は、バランスを崩して床に倒れこんだ。
「ちょ、ちょっと、返してよ。こ、これじゃあ服が……はっ」
 はだけそうになる服を必死に抑える朝斗は、周囲の好奇の視線に気づいた。その視線は露わになった白い肩や細い足に向けられ、主に男性の視線だった。
「ちょ、皆落ち着いてよ。僕は正真正銘「男」だからね。そんな見てて面白いものじゃないはず……」
「そんなことはない!」
 朝斗の必死の訴えを制したのはこれまたメイド服を着た夜月 鴉(やづき・からす)だった。
 鴉は熱く語り始める。
「男でもメイド服着て他人を喜ばせることができるはずだ! 感動させられるはずだ! 輝けるはずなんだ!」
「鴉さん、意味わかんないですよ。というか、なんでそんな饒舌になんですか。もしかしてそんな服着ておかしくなったとか……」
「可笑しくなってなどない! ただ、恥ずかしいんだけだ!」
「…………」
「…………」 
「……脱いだらどうですか?」
「……それが出来たら苦労しないよ。ほら……」
 鴉は朝斗に背中を見せる。そこにはメイド服が脱げないようにと特殊な施錠がされていた。
「これ、自分では取れないんだよ」
「……お気の毒に」
 朝斗はメイド服を脱げない理由も人それぞれなんだと、心から同情した。
 すると鴉が漢泣き状態で朝斗の肩を掴んで言った。
「だから、このままでは一人で深い傷を負わせないでくれ。この羞恥心を忘れられるように一緒に弾けようぜ!」
「いや、それは……」
 朝斗は鴉に手を掴まれ無理矢理立ち上がらされる。
「あ、ちょっと待って、脱げ……」
 朝斗はもう片方の手で必死に服が脱げるのを抑えながら、一緒に踊り、歌わされた。
 鴉は歌った。銀河系全土に自分の悲しみが届くように!
「はい。ここで、ポーズ☆」


「着てみます?」
「いや、ボクはいいよ」
 鴉と朝斗の様子を見ていると、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)がメイド服を着てみるかと尋ねてきたため、鬼龍 白羽(きりゅう・しらは)は困ったように返事をした。
 すると、貴仁が独り言のようにつぶやいた
「結構似合うと思うんですけどね……」
 白羽の頬がポッと赤く染まる。
「あ、ありがとう。でも、夜月やエロ本の方がきっと似合――」
 白羽は唖然として言葉が出なくなった。
「あと一センチ……いや、五センチだ」 
 周囲を見渡した白羽は、楽しそうに戎 芽衣子(えびす・めいこ)の目の前で、スカートを少しめくりあげる医心方 房内(いしんぼう・ぼうない)を見つけた。
 芽衣子の興奮気味の声が聞えてくる。
「おぉぉ、み、み、見えそうだぁ……」
「ほほう、ではこれでどうじゃ?」
「おぉぉぉぉお……!!」
「あ、あのバカ!」
 白羽が耳まで真っ赤にして房内を止めようとした時、リリィ・クロウ(りりぃ・くろう)がスカートを持ち上げていた房内の手をはじいた。
「メイドさんをなんだと思っているのですか! そこに直りなさい!」
 リリィは房内と芽衣子を正座させ、メイドの心が何たるかを講義しはじめた。
 房内が助けを求めて白羽を見つめてくる。
「自業自得だよ」
 白羽は房内を無視して喫茶店でくつろいだ。