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リアクション
第六章 メイド服とメイド服とメイド服……それ以外ありません。
「ふふふふふふふふふふふふふふふ……」
ジーナは修羅のようなスピードでメイド服を着々と作り上げていく。
横では樹が出来上がったメイド服を綺麗に畳むと、慌ただしくラベルを付けて箱に詰めていく。
「ええっと、ねぇ。これって誰の?」
「はい? あぁ、それはあさにゃん様の分ですわ。ラベルを張ってそこの箱に入れといてください」
「了解」
そこへ電話をしていた明日香が戻ってきた。
「ジーナさん。朔夜さんに調べてもらった皆さんのサイズをメモしましたけど、どこに置いておきますぅ?」
「ありがとうございます。ここにお願いします」
「はぁい。後、朔夜が差し入れにケーキを持ってきてくれるそうですぅ」
「本当ですか!? よぉし、頑張りますです!!」
甘い物につられてさらに速度を上げるジーナに樹はてんてこ舞だった。
「わわわ……まだこっち、詰め終わってないだろう!」
「手伝いますぅ」
「す、すいません」
樹は明日香と一緒にメイド服を段ボールに詰め込む。
「おい、生地買って来たぞ。ってなんかすごいことになってんな」
買出しから帰ってきた衛は、右へ左へと走り回る樹と明日香、それにジーナの手から宙に舞うメイド服を呆然と眺めていた。
衛は買ってきた生地をジーナの傍に置くと、近くに置かれたメイド服を手に取る。
「それにしても、量産とかいいながら全部多少なりとも違うのな。……あれ、このラベルついてないの、誰の?」
「バカッパの分」
「……はぁ、オレの?」
「そうです。樹様の分ももうすぐできますから、一緒に来てください」
「なんでオレが!? 絶対にきな――」
「魔鎧よ」
抗議しようとした衛の肩を樹が掴んだ。
「お前はそういえば知らなかったな。ジーナの頼みを断ると、夕飯が卵のおかずだらけになったり、酒飲んで暴れたりするんだ」
悔しそうに語る樹を見て、衛に花見の時の記憶がよみがえる。
「そういえば、あの時も酔ったじなぽんに身ぐるみ剥がれて……」
「私だってやりたくない。しかし……ここは、大人しく要求を呑もうじゃないか」
「……ハイ、オトナシクシマス」
衛は諦めて漢泣きしながら樹の手伝いを始めた。
そこへ喫茶店の準備をしていたはずの鴉が入ってくる。
「なんだかすごいことになってるんだな」
「あれ、何か用ですかぁ?」
「休憩中なんで様子を見に来ただけ」
鴉は作業様子を見ながら、出来上がったメイド服を手に取りながら見ていった。
「おっ、これ可愛いな。へぇ、すげぇ……」
「鴉さん。ちょっと、いいですかぁ」
そう言うと明日香は鴉の後ろに回ってメジャーでサイズを測りだす。
「え、なに? 俺にもなんか作ってくれるの?」
「ええ、とっても可愛らしいメイド服を作りますぅ……はぁい。OKですぅ」
「へぇ、メイド服ね……え!?」
驚いて振り返ると、明日香は測った鴉のサイズをメモしていた。
「俺、メイド服は――」
「スカートの丈は短い方がいいですかぁ?」
「いや、普通の――」
「せっかくだから胸元がある程度見えるようにしてみますぅ?」
「あの、だから着ない――」
質問を続ける明日香を鴉が止めようとすると、両肩を樹と衛にものすごい力で掴まれる。
「諦めるべきだろう」
「そうだぜ。一緒に地獄へ落ちようぜ」
「……もうどうでもいいさ。任せるよ」
「かしこまりましたぁ」
観念し、沈み込む鴉ににっこり微笑んで明日香が立ち去ろうとする。すると衛が明日香を呼び止めた。
「ああ、ちょっと待って」
「はぁい?」
「ちょっと頼みたいものがあるんだけど……」
衛は明日香に耳打ちすると、意地の悪い笑みを浮かべていた。
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