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リアクション
「型紙をお届けに参りましたわ」
屋敷に戻ってきたセシルは、待っていた神代 明日香(かみしろ・あすか)に型紙を渡した。
「セシルさん、ありがとうございますですぅ」
「あら、それはなんですか?」
明日香はほこりの被った写真立てを握っていた。
「これですかぁ? これは、騨さんの部屋にあった写真ですぅ」
明日香はセシルに写真を渡す。
そこには幼い騨とメイド服を着た獣人の女性が映っていた。
「この写真のメイドさんがですねぇ。あゆむさんにそっくりなんですよぉ」
「え、そうなんですか!? 私、まだお顔を拝見してないのです知りませんでした」
写真のメイドは騨の優しく抱きしめ、微笑んでいた。
「メイドさんがいたなんて、騨さんがいいとこのお坊ちゃまだったんですねぇ」
「そうですわね。それにメイドと主人というよりはとても仲の良い姉弟に見えますわ」
「う〜ん。どちらかというと姉に甘える弟の構図じゃないですかぁ?」
明日香とセシルは写真のメイドさんにしきりに甘える騨を想像して、クスクス笑っていた。
「人から聞いた話ですけどぉ。騨さんは損傷が激しくて放置されていたあゆむさんを一人で担いでここまで運んだそうですぅ」
セシルは驚いた。機晶姫は相当な重さがある。それを一人で運ぶことをどんなに大変か、すぐにわかったからだ。
「やれやれですぅ」
暫しの沈黙の後、明日香はため息を吐いて立ち上がった。
そして隣の部屋へと繋がる大きな扉を開けて中に入った。
「来ましたね」
扉の向こうは広々とした空間だった。中央に置かれた大型の机には何やら裁縫に使う道具が並べられている。
その向こうにジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)が腕を組んで立っていた。
「さぁ、型紙を貸してください! さっさと作り上げますよ!」
ジーナは期待に満ちた眼差しで明日香を見つめ、グイグイと手を伸ばしてくる。
その横ではジーナにこき使われている林田 樹(はやしだ・いつき)と新谷 衛(しんたに・まもる)が慌ただしく走り回っていた。
明日香はジーナの手に型紙を渡した。
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