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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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第四章 休息は少女と共に

 伝説的なデザイナーが残したメイド服の型紙を手に入れるため、生徒達は三つのグループに分かれて女の子の相手をすることになった。
「よし、最初は俺様から鬼をやろう。ほら、皆隠れるであるぞー」
 かくれんぼんの鬼に立候補した万願・ミュラホーク(まんがん・みゅらほーく)は生徒と女の子を追い立てる。
「行こう!」
 生徒達がばらばらに散っていく中、アンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)は女の子の手を引いて一緒に茂みに隠れた。
「えへへ、わたくしはアンネリーゼ・イェーガーですわ」
 アンネリーゼはうつ伏せになり、一緒に隠れている間に色んな話をした。
 学校での生活から、参加したイベントなど、家からほとんど出たことがなかった女の子は興味をひかれ、目を輝かせて聞いていた。
「えっと、次はですね……」
「あら、こんな所に可愛らしいお嬢さんが二人もいらっしゃいましたか」
 隠れていることをすっかり忘れ、話し込んでいた二人の前にアマゾン・ファルーティ(あまぞん・ふぁるーてぃ)が茂みをかき分けて現れた。
「失礼いたしますね……」
 アマゾンは驚く二人を気にせず、近くに腰を降ろした。
「自分はアマゾン・ファルーティと申します。お見知りおきを……」
 丁寧に頭を垂れるアマゾンに、女の子にならってアンネリーゼもお辞儀を返した。
 するとアマゾンは思い出したようにポケットを探る。
「そうだ。お近づきのしるしにこの人形をさしあげましょう」
 そう言って取り出されたのは服の上から亀甲縛りされた人形だった。
 女の子とアンネリーゼは人形の異様な格好に首を傾げていた。
「この服、なんか変ですわ……」
「いえいえ、これはすごくリアルな女性をモデルにして完成させた、オーソデックスで、ノーマルな、バー○ー人形ですよ。まぁ……少しだけ自分なりにコンバートしてますけど」
「こんばあと、ですか?」
「ええ、ほらここの縄をひっぱると喘ぎごっ――(バシンッ)
 アマゾンの言葉が乾いた音にかき消される。
「いたった。何を……」
「何をじゃないだろう!」
 アマゾンが振り返ると、ハリセンを手にこめかみをひつくかせている万願の姿があった。
「見つからないと思ったら、なに子供に間違った言葉と怪しい話し方で変なことを吹き込もうとしているであるか!」
「いや〜、彼女達に大人の世界を教えようかと思いまして……」
「いらん世話である! むしろ悪影響である!」
 万願は唾を飛ばす勢いでアマゾンを説教していた。
 小首を傾げるアンネリーゼ。その頭にミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)がポンッと手を乗せた。
「?」
「大丈夫! アンネリーゼさんは気にしなくていいから!」
 笑いながらミルディアはガシガシ撫でると、アンネリーゼはくすぐったそうにしていた。
 すると、――ふいに手が離れた。 
「さぁて、次はあたしが鬼だね! 全速全開で行くから、六十秒数える間にちゃんと隠れてね! 一、二、三! 四、五、六! 七……」
 いきなり始まるカウント。しかも、三秒分を一気に数えていた。
 周囲が止めようとしても「早く、隠れないと捕まえちゃうぞ〜!」とか言って、止める気配はなし。
 仕方なく、全員が慌てて隠れだす。
「……六十! さぁ、いっくぞぉぉぉ!!」
 数え終わるとミルディアは全力ダッシュ!
 さっそく、アンネリーゼを見つけ――
「見つかってしまいま、え――?」
 ミルディアは自分とアンネリーゼをロープで結んで駆け出した。
 空中に舞うアンネリーゼの悲鳴が風に舞って消える。
 そして万願が――
「ぎぃやぁぁぁぁああああああ……」
 アマゾンが――
「あぁん。激しいぃぃぃ!!」
 五分も立たないうちに全員が見つかり、一部の人間が臨死体験を味わった。
「全員! 確保!」
「は、はげしすぎますよ、ハァハァ……」
「俺様には茂みから顔を出すミルディア殿の残像が複数見えた……」
「わたくし目が回って、吐きそうですわ……」
 周りがダウン寸前なことなど気にせず、ミルディアはアンネリーゼの肩に手を置いた。
「さぁ、次はアンネリーゼさんだね。よろしく!」
 ミルディアは目を回しているぐったりしているアンネリーゼを放って走り出す。
「早く見つけに来てね!」
 一度振り返ったミルディアはアンネリーゼにブンブン手を振った後、あっちの遊具へ、そっちへの遊具へ、行ったり来たりしながらベストな隠れ場所を探していた。
「ミルディア殿は本気で楽しんでるんだろうな……やれやれ」
 万願はふらりと立ち上がり、アンネリーゼを励ましすと、自分も隠れに走った。

「残りのお二人はどこにいらっしゃるのでしょうか?」
 鬼になったアンネリーゼは、悩んだ挙句結局隠れられなかったミルディアを含め、着々と見つけだしていた。
 残りは二人。
 周囲に目を光らせていたアンネリーゼは木の陰に動く人影をみつけ、駆け出した。
「見つけましたわっ!」
「あ……」
「あら?」
 そこにいたのはOLの姿にコスプレした麻木 優(あさぎ・ゆう)だった。
 アンネリーゼは優をどこか見覚えがある程度に感じていた。
 とりあえず、参加者か尋ねてみようと思った。
「あの……」
「人違いでありんす!おいどんはしがないOLばい!」
「まだ、何も言っていませんわ」
「……」
 優は完全に墓穴を掘った。アンネリーゼの疑惑の目が向けられる。
 そんな時、割って入る者があった。
「人違いというなら脱いで見せなさぁい!」
 傍の茂みに隠れていたアマゾンだった。
「あまちゃん、みっけ!」
「しまった!?」
 ついつい話に割り込んでしまったことを、アマゾンは頭を抱えて、一瞬だけ後悔した。
「それはそうと、アンネリーゼ様、自分を呼ぶときは「マゾちゃん」にしてくださるようにと言ったはずですが」
「?」
 アンネリーゼは思い出そうと顎に人差し指を当て、暫し流れる雲を見つめてから答えた。
「ごめんなさい。わたくし、物忘れが激しくて……」
 ぺこりと謝罪するアンネリーゼ。アマゾンは慌てて左右に手を振った。
「いえいえ、お気になさらずに。その変わりに今度からは「サドでマゾのお姉ちゃん」と呼んでください」
 アマゾンは確認のためにアンネリーゼに言わせようとする。
 すると背後から男の声がした。
「なぁ、サドでマゾのお姉ちゃん」
「はいは〜い……あ」
「あれだけ、言っても全然こりないのであるな」
 そこにいたのは、またしても万願だった。
 今度は手に金のハリセンが握られている。
「あはは……(パキンッ)
 軽快な音が晴天に響いた。
 アンネリーゼは呟いた。
「よくわかりませんわ」

「さて、全員がアンネリーゼ殿に捕まって……誰か足りないのではないのではないだろうか?」
 アマゾンの説教が終わり、捕まった人間を数えていた万願は人数が足りないことに気づく。
「これで全員だと思いますわ」
 アンネリーゼは全員捕まえた気でいた。
 そこへ完全に忘れられていた優が慌てて走ってくる。
「ちょ、ちょっと待ってください! まだワタシがいますよ!」
「?」
「麻木 優ですよ。覚えているでしょ!?」
 アンネリーゼは優の顔をじっと見つめて言う。
「さっきの……不審者?」
「違う! あぁ、今変装を解くから待って……ほら、これならわかるでしょ?」
 わかってもらえないのはコスプレのせいだと思い、優は顔だけ変装を解いた。
 しかし――
「……(フルフル)」
 アンネリーゼはわからないと首を横に振った。
 ただ単に優の顔を忘れていただけだった。
 その様子を見ていた女の子が悪乗りしてミルディアに囁いた。
「ん? なになに……優さんは不審者役だからやっつけていいって? ラジャー!!」
 女の子の指示を受けたミルディアは身体を前に倒したまま、物凄い勢いで優にぶつかっていく。
 突然のことに戸惑う優。
「え、え、なんでそうなるの!? なんでそんな楽しそうなの!? ちょっと、まっ、ぶしゅえぇぇえええ……%☆π*△¢&¥!?!??!」
 優の腹部にミルディアの頭部が直撃。
 吹き飛ばされた優は盛大な音を立てて背中から滑り台に激突した。
「迎撃完了!!」
 ミルディアの視線の先では泡を噴き出した優が気絶したまま滑り台を降っていた。
 ――その後、かくれんぼはいつの間にか終了し、交代の時間まで女の子はミルディアとアンネリーゼと一緒にキャキャとはしゃぎながら走り回っていた。