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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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第二章 熱暴走を止めろ!

「こいつはだめだろう」
 和泉 猛(いずみ・たける)は高熱を発しながら横たわるあゆむを見つめて、呆れたように口にする。
「確かにな。こいつを起動をしたのはどう考えても間違いだぜ」
 クロイス・シド(くろいす・しど)が深刻そうな表情を浮かべて同意した。
 人によってはゴミ置き場に捨てられていても違和感がないと感じるくらいに、あゆむの損傷は激しかった。
「なんで、起動し――」
 叱ろうとした猛は目を見開いて言葉を飲み込んでしまった。
 早見 騨が泣いていたのだ。
 下唇を噛みしめ、肩を震わせ、悔しげに、ボロボロと涙を流していた。
「……やめようぜ。騨を責めたってしょうがない。それにさ。自分の力でどうにかしたいって気持ちは俺もわかるぜ」
 クロイスは励ますように騨の肩を掴んで、二カッと笑っていった。
 猛が深くため息を吐く。
「そうだな。その熱意は認めよう」
 猛が周囲に目を向けると、部屋のいたる所に機晶姫に関する本や資料が大量に散乱していた。
「たが、少しは周りを頼って欲しいものだ」
 猛は騨の頭に手を乗せ、「男が泣くな」と髪をくしゃくしゃにした。
 すると、朝野 未沙(あさの・みさ)がパンパンと手を叩いた。
「はいはい。いつまでもめそめそしてない! さっさとあゆむさんを治してあげましょう」
 騨は袖で涙をふき取った。
「彼女の言う通りだな。幸い、機晶石は無事なようだし、俺達の力でどうにかなるだろう。そうだな、まずは……」
 猛が集まった仲間にこれからやる手順を大まかに説明、役割分担した。
「……うん。そうね。よし! 皆、きっちりやるわよ!」
 未沙が拳を振り上げると、歓声と共に多数の手が掲げられた。
 それぞれが各々の持ち場に向かっていった。
 
「そこの工具とってくれ」
「これですか?」
「あぁ……」
 差し出された猛の手に、和泉 絵梨奈(いずみ・えりな)がレンチを渡す。
 絵梨奈の傍には様々な工具や器具が置かれており、猛のサポートが彼女の役目だった。
 その様子は医療現場の医者と看護師のようである。
 ふと、絵梨奈は自分たちを見つめる未沙の視線に気づいた。
「あの、なんでしょう?」
「ん、うん。お二人は兄弟なのよね?」
「そうですけど……?」
「いや、傷のせいもあるだろうけど、あんまり似てないかな。なんて……ね?」
 笑ってごまかそうとする未沙。
 猛は作業に集中していて聞こえなかったのか、はたまた聞こえないふりをしていたのか、何も言い返してこなかった。
 代わりに猛は絵梨奈に指示を出す。
「悪いが、ルネに次の物を倉庫から取ってくるように伝えてくれ……」
 猛の口から発せられる様々な部品の名前らしき物を絵梨奈は懸命にメモを取った。
「わかりました」
 確認を終わると、小走りに猛のパートナールネ・トワイライト(るね・とわいらいと)の元へ。
 ルネは伝えられた内容は細かく確認する。
「了解しました。では、いってまいります。猛さんをよろしくお願いします」
「あ、重い荷物だと大変だろうから俺も行くぜ!」
 ルネが背を向けて歩き出そうとすると、壁に寄りかかって暇を持ち余していた絵梨奈のパートナージャック・メイルホッパー(じやっく・めいるほっぱー)が申し出てきた。
 ジャックが「いいか?」と尋ねると、絵梨奈はうなずいた。
「じゃ、行ってくるぜ」
 小さく手を振る絵梨奈に見送られて、ルネとジャックは並んで部屋を出ていく。
 すると、ジャックはルネに質問した。
「なぁ、おまえのパートナー、うちのパートナーの兄貴にしてはやたら怖くね?」
 ルネは予期せぬ質問に目を丸くし、それからクスクスと笑って応えた。
「そんなことないですよ。猛さんは少し真面目なだけですから」

「この部品の予備がないな」
「どれだ?」
 猛が手に持つボロボロの部品をクロイスが覗き込む。
「あぁ、これなら俺の家の近くにあるジャンク置き場に落ちてる思うぜ。ケイにとりに行かそうか?」
「頼む」
「あいよ。ケイ!」
 クロイスが呼ぶと、ケイ・フリグ(けい・ふりぐ)がてってってっと近づいてくる。
「な〜に?」
「ちょっと例のジャンク置き場まで、これと同じ部品を取りに行って欲しいんだ」
「ん〜〜。うん、わかった」
 ケイは手に持った部品をじっと見つめてから答える。
 クロイスはケイに背を向け、作業に戻る。
 その額にはじっとりと汗が滲んでいた。
「にしても、あちぃな……」
「あ、それなら、シド。借りてたハンカチ返すね」
 袖で汗をふき取ろうとするクロイスに、ケイが脇からハンカチを渡した。
 クロイスはありがたく、そのハンカチを額に当てる。
「お、サンキュ。助かっ――ベチャ」
 ハンカチからドロリと溶けだした甘ったるい液体が、クロイスの額から鼻筋を通った。
「って俺のハンカチがチョコだらけにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
 チョコだらけのハンカチを手に叫びをあげるクロイス。
 その様子をケイは頬を膨らませてぷっぷっぷっと笑っていた。
「こんなことしてないで、さっさと行け!」
 ケイはクロイスから逃げるように笑いながら、去って行った。
「ったく、あいつは……」
「おい」
「なんだ?」
「作業はチョコを洗い落としてからするんだぞ」
「……」