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リアクション
女の子はお菓子とケーキを一通り口にすると、理沙の提案で雑木林に木苺を摘みいくことになった。
「帰ったらジャムを作りたいですわ」
雑木林を歩きながらセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)は皆でジャム作りをする所を想像して微笑んだ。
さらにフミ・サギリ(ふみ・さぎり)が隣を歩きながら提案する。
「せっかくだからここにいる人以外の方にも参加してもらいましょう」
「いいですね。あっ、理沙。もう少し気を付けて歩るいた方がいいですわ」
セレスティアは、女の子と手を繋ぎながら浮き出し立つ理沙を注意した。
「わかってるわよ」
理沙は振り返りつつ手を振って見せた後も、相変わらずはしゃいでいるようだった。
「もう、全然わかっていませんわね」
セレスティアは理沙の方が女の子より子供のように思え、苦笑いを浮かべた。
すると傍で、【ちぎのたくらみ】により幼児化&女装しハルカとなった 緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)がため息を吐いた。
「どうかなさいましたか?」
「実は遥遠がメイド服を欲しいというから参加したんですが、どうもハルカにそのメイド服を着させたいみたいなんです」
セレスティアが尋ねるとハルカは困ったように答えた。
すると、シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が落ち込んだハルカの肩に手を置いて励ましの言葉をかけた。
「大丈夫だよ。君のことはワタシが保障する」
「シオンさん……」
ハルカが守ってくれるのだと感動していると、シオンの指が前方を指さした。
指し示す先には、女の子と手を繋ぎはしゃぐ月詠 司(つくよみ・つかさ)の姿があった。
「ツカサもそうだけど、きっとハルカちゃんもきっとメイド服が似合うよ」
司はタルタル特製・気付け薬を飲まされて少女化し、成人男性の自覚などまったくなく、小さな少女ツカサちゃんとしてはしゃいでいた。
あの姿なら確かに似合いそうだと思うハルカだった。だが――
「その励まし方は全然嬉しくありません」
目線をずらすとセレスティアとフミが微妙な笑みを浮かべていた。
三十分ほど歩き女の子と生徒達はようやく木苺が取れる場所までやってきた。
木苺ができている場所はわりと広く、皆それぞれ自由に行動することになった。
「……ツカサ……メイド服……」
アイリス・ラピス・フィロシアン(あいりす・らぴすふぃろしあん)は黙々と木苺を手に持った籠に入れながら、司にメイド服を着せた後どんな風に辱めようかと考えていた。
「アイリスさんもパートナーにメイド服を着せたいのですか?」
「!?」
ふいに呼び掛けられた。いつの間にか背後に紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)が立っていたのだ。
「アイリスさんとは話が合いそうです。私もハルカちゃんにメイド服を着させてあげたいと思っているのですよ」
遥遠はアイリスに柔らかい笑みを向けていた。
アイリスは小さい声で話した。
「ハルカ……似合う……」
「ありがとう。ツカサさんもきっと似合いますよ」
「うん……司似合う……」
遥遠はアイリスの言葉に同意したが、その意味はまったく異なっていた。
遥遠は少女の「ツカサ」を想像し、アイリス男の「司」を想像していた。
話はそれなりに盛り上がる。
木苺摘みに興味がなかった遥遠はこれで時間が潰せそうだと思った。
「あっ、ここにもあったの〜」
少女ツカサは葉の陰に隠れた木苺を見つけ摘み取ろうとした。
すると、白いウサギが飛び出してきた。
「きゃっ!」
驚き、倒れこんだツカサは後ろからセレスティアに抱きしめられた。
「大丈夫ですか?」
「……びっくりしたの」
後頭部にあたる柔らかい胸の感触。セレスティアはツカサの頭を優しく撫でた。
「可愛らしいうさぎさんですわね」
「……うん」
まるで母親のように接するセレスティアにツカサの顔は赤く染め、暫くそのままでいた。
「シャッターチャンスれすっ!」
段ボールに隠れて様子を伺っていた月詠 ヒカリ(つくよみ・ひかり)はここぞとばかりに自身の目についたデジタルカメラを回した。
「ヒカリ! ちゃんと撮ってる!?」
横ではヒカリと同じようにシオンが特製スパイカメラセットでツカサを撮影していた。
ヒカリは看板を取り出し、筆談で会話する。
『バッチリです!!』
「グッジョブ!」
シオンとヒカリは元に戻った司が見たら恥辱で苦しみそうな映像を取ることに熱意を燃やしていた。
そんな彼女らの傍では、フミが女の子と先ほど飛び出してきたウサギを眺めていた。
「可愛いうさぎさんですね。動物は好きですか?」
女の子は恍惚の表情でウサギを見つめがら、頻りに頷いていた。
フミは女の子に触らせてあげようとウサギに手を伸ばした。
「追いで、追いでぇ〜、あっ……」
しかし、そんなフミを無視してウサギは藪の中へと逃げていってしまった。
残念そうにする女の子。
そこへ理沙が近づいてきた。
「何? 動物を探してるの?」
「はい。この子に触らしてあげようと思って」
「なるほどね。だったら、あっちでリスを見たわよ。一緒に探す?」
女の子は嬉しそうにしていた。
理沙とフミは木苺を積みながら、女の子の動物探しに付き合った。
気づけば日がすでに暮れ始めている。
手持ちの籠を木苺でいっぱいにした女の子と生徒達は、どうにか日が落ちる前に屋敷にもどってきた。
「あ、戻った」
屋敷に戻るとタルタル特製・気付け薬が切れて司は男性の姿に戻ってしまった。
「私は、何て恰好をしてるんだ……それに、さっきは……」
司は先ほどまで女の子達と少女服を着てはしゃいでいたことを思い出し、頭を抱えた。
すると、シオンが特製スパイカメラセットに録画した映像を司に見せてくる。
「ツカサ、見て見て〜」
「ん……なっ!?」
映っていたのはセレスティアの胸の中でよしよしと頭を撫でられるツカサの姿だった。
司は恥ずかしさのあまり穴に入りたい気持ちだった。
「あはっ、ツカサ顔真っ赤!!」
頭を抱えてふさぎ込む司を見てシオンは腹を抱えて笑っていた。
皆と同じように司の身体の変化に驚いていた理沙だったが、ふいに屋敷にいる生徒達が少ないことに気が付いた。
「君、他の皆はどこにいったんだ?」
「ああ、何人かは貸していただいた型紙を騨さんの元へ届けに行きましたよ」
「「え?」」
朔夜の回答を聞いたアイリスと遥遠は目を丸くしていた。
アイリスと遥遠の目的は騨の手伝いではなく、メイド服の型紙を手に入れ、メイド服を作るというものだからだ。
「ハルカ、いきますよ」
「ワタシ達も……」
アイリスと遥遠はパートナーを無理やり引っ張り騨の家へ駆け出した。
「……えっと、ジャムを作りましょうか?」
なんだか、慌ただしく駆け抜けた生徒に驚きながらも、セレスティア達はジャムを作り始めた。
屋敷の主人に庭を借りた生徒達はいくつものグループに分かれ、まるで林間学校のように生徒達はカレーの代わりにジャムを作る。
「ねぇ、出来たジャムを喫茶店のメニューに入れてもらいましょうよ」
「いいですわね」
理沙の提案にセレスティアは笑顔で返した。
一方、アンネリーゼは朔夜の指示でジャムを作る。
「えっと、次はですね……」
「朔夜くん、電話ですよ」
優に呼ばれ、朔夜はアンネリーゼに断って屋敷に向かう。
屋敷の入り口まできて、朔夜は指示を出し忘れたことを思い出す。
「あ、そうだ。アンネリーゼさん! そこの蜂蜜かレモン汁を入れといてください! そしたら後は温めるだけですから」
「え、どれですの!?」
「えっと、どろっとした感じのとか黄色いのとか――」
「電話どうしますか?」
「今、行きます!」
朔夜は慌てて屋敷の中へ消えていった。
「どろっとして黄色いの……これですわね」
残されたアンネリーゼはそのどろっと黄色いものを鍋に投入した。
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