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リアクション
其の四
「こんなの忍者じゃない!」
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の憤りは相当だ。
それも当然。
マスターニンジャである彼女にとって、こんなまがい物は存在するだけで悪。
こんなものの存在を認めるわけにはいかない。
「間違ってるあなたたちには、壊れてもらうでありますっ」
NINJAロボにパンドラガンの照準を合わせた。
いやおうなし、引き金を引く指に力がこもる。弾丸はロボの眉間、ド真ん中を撃ち抜いた。
別の一体が彼女に向け手裏剣を放つ。
「無駄ぁっ」
空蝉の術による変わり身。
部屋の中央で特異な存在感を放つ等身大美少女フィギュアと入れ替わった。
無残、少女の太陽のような笑顔に手裏剣がトツトツと突き刺さった。
再び吹雪を狙うロボ、その前に割って入る赤影が数体、怪しく舞う。
すべてが宇宙忍者イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)の姿だ。機晶ロボを分身の術で幻惑し、その隙を吹雪が狙う。
銃声が続けざまに響いた。
「粗製乱造っ、まだ出るか」
次々に敵の数は増える、吹雪もまた、分身の術で応戦する。
本物を前にして、NINJAロボは圧倒的に無力だった。
まがい物の末路はスクラップ。
吹雪とカニンガムは出来上がった金属片の山を一瞥した。
「これが本物の忍者の力であります!」
× × ×
「この服着るのかね。……美しくないな」
不動 煙(ふどう・けむい)は支給されたケバケバしい忍び装束をビリビリに破り捨てた。煙のドラゴンに乗かったコール・スコール(こーる・すこーる)も、部屋を見回して呟く。
「オーマイガと言いたいのはこっち……」
煙にくっついてバイトに来てみたものの、NINJA屋敷には興味がないようだ。退屈そうに足をブラブラと揺らしている。
「なにもかも、美しくない」
このセンスにはうんざりだ。とりわけ気に食わないのは、あのNINJAロボ。
「趣味の悪いロボだ」
しかも暴走し人を襲うのだという。つまり。
「次に見掛けたら、思う存分ぶっ壊していいんだな」
「煙にぃ、僕がサポートするよっ」
不動 冥利(ふどう・みょうり)が息巻く。ロボがDOGEZAするまでボロボロにしてやるのだ。
「ん? あれは――」
星条旗カラーの壁。そのストライプが心なしかななめにズレているではないか。なんとも雑な隠れ身だ。
「……美しくないっ」
インビジルトラップで罠を仕掛け、敵の隠れ身を解除する。
「迷わず逝けよ! 逝けばわかるんだよ! ダッシャァ!!」
テレビに影響されたらしい、どこか聞き覚えのある台詞とともに、冥利が天候操作を発動した。あたりに濃霧がたちこめる。敵の視界を遮って、その間にサポートスキルを連続詠唱。
オートガード、護国の聖域、肉体の完成、オートバリア、フォーティテュード――。
「問おう、ロボよ。煙を相手にしては時間が掛かり、他の者をあまり襲えんぞ? 構わないなら相手になろう」
武将の鎧兜が背もたれにくっついた大仰な金ピカ椅子に腰をおろし、余裕の態度で煙草を吸う。紫煙をフゥと吹き出した。
「忍術には色々あるな。だが、私だけしか使えず、どの属性にも当てはまらない忍術がある。――その名は嘔道! 食らうが良い!」
闇ドラゴンのブレス……もとい、嘔吐が機晶ロボを襲う。
おろろろろん――。
すさまじい臭気が漂った。
耐性のある煙一家でなければ、その効果はなんとも恐ろしいものがある。
煙はピクリとも動かなくなったNINJAロボを椅子から見下した。
「フン。醜いものにはお似合いの最期だな」
× × ×
「Σロボだこれー!(ガビーン!!)」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)がNINJAロボに衝撃を受ける。
気を取り直して――。
「殺人マシーンと化したあなたたちに、手加減は無用ねっ」
ホークアイと司書の眼鏡で敵の隠れ身と素早い動きに対応し、ライトニングウェポンで帯電させた刀をロボ目掛けて振り下ろす。
「さあ、次、掛かってきなさい! ――っ、消えた!?」
とっさの受太刀でロボの奇襲から身を守った。すかさず刀を横に払って敵を真っ二つに斬り捨てる。
残りの一体には峰打ちを。
「詩穂の機晶技術で修理できないかな?」
名案だ。
故障を直すことができれば、出口まで道案内してもらえるかもしれない。
ガチャガチャとロボの機晶回路をいじくり回す。
「んー、おっかしいなあ」
詩穂のスキルを持ってしても、どうにも直せそうにない。
「ってことは、もしかして、故障じゃないとか……? でもそれじゃあ」
最初から人を襲うようにプログラミングされていたということになるのだが……。
アトラクションに過ぎないNINJA屋敷に、そんな危ない物を配置させるものだろうか?
「まあ、今は考えてても仕方ないよね。とにかく、自力で上を目指すしかないってことか」
ひとつため息をついて、マッピングするためHCを起動させた。
使い魔と式神の術でイコプラを先行させ、さらにディテクトエビルでカラクリや敵に警戒しながら先を急ぐ。
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