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リアクション
其の六
「わーい、動くアトラクションだー♪」
鳴神 裁(なるかみ・さい)はキラキラと青い瞳を輝かせた。
ここは1F出入り口。
外への道には巨大機晶マスコットロボが立ち塞がる。猫型なのは黒幕がマネキだからなのか……。
ロボは裁を見つけると巨体をノシノシ揺らして彼女に襲い掛かる。
「え、アトラクションじゃない? あー暴走なんだこれ? だったら、ぶっこわしても問題ないよね☆」
でもせっかくなので、人数が集まるまではロボと戯れることにしよう☆
裁の普段着兼戦闘服の魔鎧、ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)が超人的肉体でもって裁の無茶な機動をささえている。
ドールはミラージュを展開、回避能力の向上を図る。
裁に憑依中の物部 九十九(もののべ・つくも)も、彼女の身体能力をさらに高める。
ゴッドスピードで速度アップ、リジェネレーションによる再生力のおかげで多少の怪我ならお構いなしだ。
フリーランニングフリップ、マカコ、ヴォルト、540キック――。
ディメンションサイトでの空間把握&行動予測、歴戦の立ち回りによる超回避。グラビティコントロールでロボの体に張り付き、軽々と登ってゆく。
刀を振り回すロボの巨体を、裁は風のような動きで翻弄した。
「やー、これは登りがいがあるなー☆」
裁にとって巨大ロボはアトラクション同然だ。
× × ×
「何やら大変なことになりましたね」
アルバイト中の香 ローザ(じえん・ろーざ)が賢狼ヘリュに向かって呟いた。
ただでさえ迷宮のような屋敷なのに、殺人機晶ロボまで出回るなんて、他のお客さんが心配だ。
「早急な救助も仕事のうちですね。お客さんを探して1階を目指しましょう!」
殺気看破と賢狼ヘリュの視覚、聴覚、嗅覚で敵の隠れ身に警戒しながら進む。
ヘリュの優れた感覚はお客さんを探し出すのにも大活躍だ。
「この辺りは見覚えがあります。みなさん、そろそろ出入り口ですよ」
お客さんをズラズラと引き連れて、ローザはどうにか1階に辿り着いた。
「ええっと、……あれは……?」
目の前には信じられない光景。
鈍く輝く巨大な刀を振り回す猫型マスコットロボ。
そのロボと戯れているひとりの少女。――裁だ。
「えっ、あ、遊んでる? というか、もはや人間の動きじゃないような……」
ピョンピョンと跳び回る姿に呆然とする。
「って、見てる場合じゃないですねっ。私はみなさんをお守りしないと」
気を取り直してロボの方へと向かった。
× × ×
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)とリーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)が駆ける。
「くっそ! 作ってる時からおかしいなー? とは思ってたんだよ!」
え? そこにソレ作っちゃうの? みたいなこと後半やたら多かったし!
「しかたねぇ! 正面から突っ込むぞ、リーズ」
「ほんと唯斗扱いが荒いわねー」
リーズが言うのはハイナのこと。
ハイナの勅命により事態の解決を命じられたのだ。
「それに付き合う私も大概だとは思うけど……」
……これが惚れた弱みなのかなぁ。
リーズはそっとため息をつく。
巨大機晶ロボのもとに、裁、ローザ、唯斗一行が集った。
「あれ? いつのまにか人がいっぱいだー☆ そろそろ遊ぶのは終わりかな。ちょっと残念だけど……ぶっ壊すか!」
ロボの首に巻きついていた裁がスルスルと降りてきた。
「援護します! 敵の動きを封じますのでとどめは頼みます!」
ローザは銃夢で敵の刀を避けながら手にした魔銃で弾幕を張る。
敵の視界を奪ったところで背後に回りこみ、すれ違いざまロボの腕の継ぎ目をシャープシューターで正確に狙った。
弾丸が隙間を塞ぎ、ロボの動きが鈍った。ギギギと重い音を立てるだけ、刀を振るえずにいる。
諦めて、太い足で地団太、踏み潰しを仕掛けてきた。
「あんまり動き回るんじゃないわよデカブツ!」
リーズのアルティマトゥーレが敵の足元を狙う。足は地面と一緒に凍りついた。
「よし! あとは任せたわ、唯斗!」
攻撃に巻き込まれないように距離をとる。
「ソッコー片付けてハイナにお説教だ! 逃げるなよハイナアアアアアッ!!」
唯斗はポイントシフトで高速移動しながら敵との間を一気に詰めた。巨大ロボの関節に超理の波動を叩き込んで、空中に高く跳び上がった。上空から気孔波で敵を狙う。
そこに、
「わーい、ボクも遊ぶーっ♪♪」
裁も加勢した。ダンスと古今東西の蹴り技をミックスしたリズミカルな蹴り技コンボ、XMAで敵を蹴りたぐる。
金属のひしゃげるエグイ音が大きく響いた。
ロボからもうもうと立ち上る白煙。
あわれ、巨大猫型ロボは原型を留めないほどのオーバーキルで木端微塵のテツクズと化したのだった。
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