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グリフォンパピーを救え!

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グリフォンパピーを救え!

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 ふたりは、判断を誤ったことを知った。今から胴体を断ち切っても、激突は避けられない。
 失敗なのか…!!
 絶望が、ふたりの相貌をよぎった、そのときだった。ふたりのプリーストを乗せた軍用バイクが、光と闇を縫うように宙に飛んだ。煙を吐きながら墜落をつづける胴体内部にそのまま強行突入する。
 音子のパートナー、フランソワ・ド・グラス(ふらんそわ・どぐらす)と健勝のパートナーのレジーナ・アラトリウス(れじーな・あらとりうす)である。
「来ちゃ、ダメ!」
 音子が叫ぶ。
「あなたたちは、プリーストでしょう?! パピーの治療に戻りなさい!」
「戻りません!」
 フランソワとレジーナ、ふたりの剣の花嫁は、同時に叫び、顔を見合わせ、やわらかい笑顔を生み出した。
「ここで胴体を自爆させれば、岩盤への被害は最小限で済みます。崩落して、洞窟に被害が出るようなことにはなりません」
「なに、言ってるんだ!」
 日ごろの軍隊調の言い方を忘れて、健勝が声を振り絞る。
「レジーナ殿、あなたは、自分に、目の前で自爆する姿を見せるために、このパラミタ大陸に呼んだのかッ?!」
「そうではないぞ、健勝、音子。プリーストとか剣の花嫁とか、そういう肩書きの前に」
 我らはともだちではないか。
 フランソワのやさしい声に、見開いた音子と健勝の目から涙が流れ落ちる。
「じゃあ、フランソワ、私にとってあなたはともだちではないの。いのちを守り、癒すプリーストが」
 自分で自分を殺すっていうの!
 ふたりのプリーストは頷き、
「それで、あなたたちを守れるのなら」
 わたしのいのちよりも大切なあなたたちを守れるのなら!
そう応じる。
「我らのせいで、そなたらを家族から引き離してしまった。そのことを悔いない日がなかったのでな」
 フランソワのさびしそうな声だけが聞こえる。
「そんなこと…」
 音子は絶句する。
「健勝、至らないパートナーでごめんなさい。でも、最期に、あなたを守れる。それが、私、今、とっても嬉しいです」
 ばかやろう! 健勝がレジーナにそう叫びそうになったときである。自分たちのからだが不意に抱きとめられ、空中に浮いた。