リアクション
10.おまけ?
──タネ子も食べ終わり、後片付けも済んで、いよいよお開きになった。
痺れが微妙に残っている六人は、口を気にしながら帰り道をとぼとぼ歩いていた。
すると、管理人に呼び止められた。
「おい! 口の中はどうだ?」
「……まだ…ちょっと。でもさっきよりは全然……」
剛太郎は苦笑しながら答え、横でコーディリアも同じよな顔をした。
タネ子の頭は、ケルベロス君が美味しそうに食べている。
味を堪能出来なかったのは残念だが……自業自得。仕方ない。
「そうか……」
管理人は顎に手を当てて、何かを考えている仕草をした。
「……よし、じゃあちょっと来い」
「?」
隣接されている管理人室に連れて行かれると、どこからか瞬間湯沸かし器を取り出して熱いお湯を作り──
各自のコップに、緑の葉を一枚ずつ浮かべた。
「出来た。ほら、お前達飲んでみろ」
「………」
──緑茶が濃くなった感じ。
飲んで飲めないことは無い……
「あれ……」
途端にリアクライスが、ある事に気付いた。
「緑茶って……味が分かる!? 分かるよ!!」
味覚の戻った嬉しさに、皆は緑茶もどきを勢い良く飲み干した。
「気休めにしかならんと思ったが…ちょっとは効いたようだな。お前達だけまともに食べられないんじゃ、わしも納得がいかないからな」
そして。
「旨いもん食わせて、帰ってもらうぞ」
管理人はそう言ってにっこり笑うと、棚の上から香水のような物を自分含めて全員に振り撒き始めた。
「これは……なんですか?」
大地の視線が空気中に飛び散る霧を追いかけながら尋ねた。
「これか? これはタネ子の嫌いな匂いを発する香水だ。触手からもタネ子の頭からも逃れることが出来る。まぁ、頭に食われる危険性は今日は無くなったがな」
「え…………………………」
こんな物があるなら早く言ってよ……という心の叫びは、脱力に負けて、誰も言えなかった。
◆
先程食べてしまったあの口が痺れる白い実を、再び管理人はいくつかもぎ取った。
祥子が怪訝そうな顔をする。
「それ……」
「いいから見てな」
それらを全て包丁で四等分にすると……
切った断面の色が徐々に変化し始めた!
白には違いないが、目にも鮮やかな白蛍光色から柔らかなホワイトへと──
「どうなってるんですか、これ??」
エレンは思わず叫んだ。
「……こいつはな、空気に触れさせなきゃダメなんだよ。で、1分間、時間を置く。滅多に食べられない超高級品だぞ? 今回は特別だ」
「あ、ありがとうございます〜!!!!」
時計を見ながら管理人は言った。
「もう良い頃だな」
食べるよう勧めるが、さっきのこともあって皆は中々手が出せなかった。その様子を見て、管理人は可笑しそうに笑う。
「おい〜、これは食べる時も時間を逃すと、すぐに萎びてしまうんだぞ?」
「え、ええ!?」
その言葉に慌てて口に含むと……
冷たい粉雪のようなものが、口いっぱいにひろがった!
「つ、冷たーい♪」
「なになに? 雪? これ??」
「温室でアイスが食べられるなんて思わなかったです」
「アイスって感じでもないのかな?」
「なんでしょう……懐かしい味がする。優しい感じの…」
「甘さも程よくて、冷たくて……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
生徒達が帰っていく。
みんなが楽しそうに、嬉しそうに、今日の出来事について話している姿を、管理人は目を細めて微笑みながら、ずっと見ていた。
(お礼は出来たと思って良いだろうか…?)
「──管理人さん! ありがとうございました」
「美味しかったよー!!」
はちきれんばかりの皆の笑顔とその言葉が、答えだった。
「こちらこそありがとう! 喜んでくれて本当に良かったよ……!」
姿が見えなくなるまで管理人は手を振り続けた。
こちらのシナリオを担当致しました雪野です。ご参加下さいまして、ありがとうございました。
毎度サンプルアクション等の出し方が下手くそで申し訳ありません。
悟られないようにしなきゃと色々考えていましたら、またしてもこのような結果に……!
触手…なんだか徐々にヤバくなっている気がするのは私の思い過ごしでしょうか?
全年齢対象、全年齢対象…と、言い聞かせて書いてます。ギリですか? ギリと信じたい……いや、もう……
はい。自粛します。
楽しんで頂ければ嬉しいです。ご参加ありがとうございました。