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リアクション
5.迷いの森
「……という訳で、森に着いたでござる」
椿 薫(つばき・かおる)はニカッと笑う。
一行は「迷いの森」を前にして、足を止めた。
「【救助隊B】は仲間の救出に向かうため、これにて御免!」
そう言って、薫は橘 恭司(たちばな・きょうじ)を伴い一行から離れた。
彼らは今後【救助隊B】として、迷いの森の前で別行動に移る。
■
「私達も、ここでちょっと……」
えへへ、と曖昧に笑って、片野 永久(かたの・とわ)、三池 みつよ(みいけ・みつよ)、グレイス・ドットイーター(ぐれいす・どっといーたー)の3名も別行動を取ることとなった。
表向きは、【救助隊A】としての参加だったが。
(こういう危ない所には、今までの犠牲者の落し物が落ちてたりするわよね? という訳で、金目の物を探すわよー!)
という、リーダー・永久の本音は、決して一行に知られてはならないのだ。
もちろん、1人真面目なみつよにも。
「落し物捜しも救助も、しっかりやろうね! 永久」
「う……うん、そうね。みつよ……」
そうして3人は一足先に、森の中へ姿を消してゆく。
はるか後方から、気配を殺して隼人が永久達の後を追う。
■
他の者は「安全に館まで辿り着く方法」を探ることとなった。
■
だが、一行の中には不埒な考えの者もいるようで。
「朔の奴め。この大悪魔たる私を呼び付けるとは! 偉くなったものだよなぁ〜?」
言って、女は鼻先で嘲笑った。
鬼崎 朔(きざき・さく)のパートナー――魔道書のアンドラス・アルス・ゴエティア(あんどらす・あるすごえてぃあ)である。
「この『不和の侯爵』たる私を呼びつけるとは! この代償は高くつくぞ?」
使い魔の傀儡、カラス、狐を配置し、豹柄のネコに耳元で囁く。
「フラウロス、お主にこいつらの指揮権を譲渡する。存分に暴れさせろ! ククク……」
その隣ではスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)が、連れの大型騎狼、パラミタ猪、狼を森の前に置いていた。
「迷いの森に、動物さん達は入れないのであります。寂しいですが、ここで待っていて欲しいのであります……」
そして町民や学生が来たら通し、魔物や乗り物や不審者にはフラウラス達と共闘するよう言い含めて去った。
だが、動物達は怪しいかそうでないかの基準は分からない。
しかたないので、「フラウラス」に従い、森に近づく者を無差別に撃退する。
かくして、事はアンドラスの思惑通りに運ぶこととなるのであった。
■
逆に、意図的に一行に近づいてくる者もある。
パラ実のガオ・ゲオ(がお・げお)。
彼は、蝋人形化されてしまった契約者のレアル・アランダスター(れある・あらんだすたー)と交信を行っていた。
既にレアルが蝋人形化されてしまっているらしいことは、察している。
というか、「起きろ、起きろ、起きろおおおおおっ! 気付け!」と、大声で思念を飛ばされてしまっては、バレバレだ。
「しかしよお、レアル。フツーはジブンをタスけてくれ! てのがサキなんじゃねえのか?」
(いいんだ! 女のためには「蝋人形化」も何のそのだぜ!)
レアルは欲望のために、鼻息も荒く言う。
(必要なのは光精の指輪と楽器だ)
「ユビワ? モってないぜ! サイフもおまえがモってて、ガッキカうカネもねーだろ?」
何だか体もおめーしよおー、とガオは辛そうに息を吐く。
(まあ、おまえ1人じゃ戦闘キツイだろう)
そういうレアルもキツイのか、溜め息。
(情報提供して薬を分けてもらってくれよ。指輪は仕方ねーが、楽器は代わりに歌でも歌っとけ)
ガオ、上手く協力してくれ。
レアルはトレント達の歌を教えつつ、心の中で合掌する。
(じゃあ、事が済んだら2人でアリアを嬲ってやろうぜ。 ヒャッハー!)
などという目的の下に、一行に接近したのであった。
■
一行は「迷いの森」の前まで近づく。
トレント達の不気味な呪詛の歌が流れてくる……。
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