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リアクション
昼過ぎに、京都駅に集合。
こんなアバウトな時間設定にしたのは、携帯電話というツールを所持しているという油断と自信、それから 『土産を買いたい』 という共通認識からだった。
それはもう 『土産を買わずして、なぜに電車が動き出す』 と言わんばかりの主張だった。
「それにしても…… 早すぎたかな」
時計表示を見つめて瀬蓮が雫した。時刻はまだ正午を回っていなかった。
「ねぇねぇ! 見て見てっ!」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の小さな掌いっぱいに、小さな碗が乗っていた。
「これ、可愛いよね〜」
「美羽ちゃんっ! 持って来ちゃダメだよ〜」
正真正銘、店の外。店の正面に居た。店内に入りて碗を戻すと、棚には、たくさんの「お茶の道具」が並んでいた。
「これが「『湯さまし』、こっちが 『宝瓶』、美羽ちゃんが持ってきたのは 『玉露碗』 だね」
「へぇ〜、いろんなのがあるんだね〜」
ふむふむ。値札を見た訳では無いのですよ。
レストランなどで薬味入れとして用いられている小さな蓋物は 『茶入れ』 としても使える、と聞いて美羽はそのうちの一つを手に取った。金色の下地に薄蒼の葉が描かれていた。
「これは 『自分の』 にしよう♪」
自分への土産を買うのって楽しいですよね。反対に、人への土産を選ぶのは、悩むものです。
「これなんか、どうかな」
朱印の一つを手にとって、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)に訊ねた。エオリアは肩を傾けて朱印を見つめてから「良いと思います」と答えた。それでもエースは顔を曇らせたままだった。
「これは…… さすがに違うよな」
蒼空学園で留守番をしているパートナーへのお土産。お土産で朱印を貰ったなら…… 「あ、うん…… ありがとう」 ってな反応になるよな。
高原 瀬蓮(たかはら・せれん)の実家付近は京都の西陣。西陣といえば勿論 『西陣織』 だよな…… ん?
朱印帳が目に付いた。朱印を頂くもの…? これからまた時々京都に来れるように! これは是非! 買わないとなっ!
……………… 土産、忘れないようにしないと……。
ペタペタペタペタ。くっついていた。京都観光3日目になっても、霜月 楓(しもつき・かえで)は霜月 帝人(しもつき・みかど)の腕に引っ付いていた。
「楓、これなんて、どうですか?」
「買って…… くれるの?」
「えぇ」
うちわの形を模したストラップ。
「京うちわ」は京都の夏の風物詩、伝統と歴史の一品である。
レジを通して受け取るまで、楓は、じーっとストラップを見つめていた。受け取ってからも、じっとずっとに見つめてから、沸き上がる衝動と共に笑顔を弾けさせた。
「え。ストラップ…?」
楓の笑顔を遠くに見て、負けじと鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)もストラップ売場へとリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)を導いた。吊され並ぶストラップに触れて眺めて、リースは同じストラップを2つ、手に取った。
「じゃあ… これが良いな」
「えっ、どーして2つ?」
「……… おそろい………… 嫌、かな?」
氷雨が笑みを溢れさせた。こちらも、ずっとに引っ付いていたが、最期にも良い思い出が出来たようだ。
高原 瀬蓮(たかはら・せれん)の夏の帰省。それぞれに多く笑み合えた、そんな旅になったのでは、ないかな。