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それぞれの里帰り

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それぞれの里帰り

リアクション

 陽も落ちて、辺りはすっかり暗くなっている。といっても街中の屋上ゆえに、どこを見ても蛍光灯やらLEDやらネオンやらの光が眩しく街を照らしているわけで。
「夜のネオンも綺麗でしょ」
 今もまだ騒がしい街中の静寂を壊さないようにリーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)ティセラに添いた。彼女は手すりに指だけを乗せて、街を見下ろしていた。
「えぇ。見事です。人も、減りませんね」
 駅前広場も見渡せる。足を止めている者は少なく、絶えず人が現れては流れ去ってゆく。
「これだけの人が駅や街を利用しているのですから、あんな事があっても不思議ではないのかもしれませんね」
「みんなで一緒に買い物したかったですよね?」
「それは……」
 広場から瞳を逸らして振り向いた。
 ほどほどに広い屋上内。壁際のテーブルには、お菓子やジュースが並んでいて、ちょっとした立食パーティが催されていた。散り散りに逃げ回った事も、話種としての役割を十分に果たしているようで。メイド喫茶や同人即売会などで働いていた生徒たちも、どうにか間に合ったようだ。
「ど、同人アニメ〜!!!」
 秋葉原四十八星華の一人、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が即倒しそうになっていた。
「し、詩穂が、おんにゃのこ同士であんなことや、こんなことを?〜〜!!〜〜〜?!!」
 薦められて、買ってしまった手前、ティセラは小さく顔を赤らめた。それでも、興味を持ったことに対して申し訳なく思えば良いのか、それとも購入したことについて思えば良いのかは、彼女には分からなかった。
「情熱を〜〜!! 持て余すわ〜〜!! 持て余しまくるわ〜〜〜!!!」
 遂に詩穂が発狂した。顔を真っ赤にして叫んでいた。今日はライブ小屋で3公演ほどしてきたはずなのに…… 元気ですね。
「全員集合よっ! もう一度、歌うわっ! 『サプライズ路上ナイトライブ』 決行よっ!!!」
 叫びながら携帯のキーを叩き殴って駆け出て行った。…………サプライズ路上ナイトライブ?  単語は幾つか並んでも、みな、疑問のままにそのままにして、立食トークに戻っていくのだった。
 屋上中央には吹き出し式の設置花火が。そこから離れて八方で、それぞれに手持ち花火を楽しんでいる。
 しゃがみ込んで小さくなって、揺れる花火を見つめているセイニィカチェア・ニムロッド(かちぇあ・にむろっど)が声をかけた。
「私も、混ぜてください」
 線香花火を手に、パッフェルの隣にしゃがみ込んだ。
 儚く落ちる弾ける火薬を、3人は顔を寄せて見つめていた。
「次の線香花火。同時に火をつけてみませんか?」
 カチェアの提案に2人は頷き、3人同時に火を点けた。
 パチパチパチパチパチ。実際には、そんな音すらしていないのかもしれない。それほど優しく弾ける火花は、幾らか弾けて、そして落ちた。
 ポトリ、と落ちたはセイニィの花火。続いてポトリ、ポトリ、と2人の花火が追い落ちた。
「落ちちゃった」
「そうね」
「………………」
 落ちて消えて見えなくなった花火を見つめてしまうのも、独特の余韻。逆らわないようにカチェアセイニィに手を差し出した。
「握手してください。私のこと、友達と思ってくれるなら」
 まぁるく開いた瞳が、優しく細まり。セイニィはしっかりと、その手を握った。
「これで良い?」
「うんっ」
「……私も」
「えっ?」
 パッフェルが2人の手を握って。ごちゃごちゃになって繋ぎ直して。3人で手を繋いで輪になった。まぁるい笑顔が向き合った。
 不意にドラムの爆音が鳴り響いた。発信源は駅前広場。建物に背を向けて並び立つは 『秋葉原四十八星華』 の面々。その中で、詩穂が叫んだ。
「みんなぁ〜!! イっクよ〜〜!!!」
 キャンピングカーに積まれたスピーカーから曲が流れて、メンバーが一斉に踊り出す。
 広場のボルテージが一気に弾けた。
 ファンも通行人も一緒になって、メンバーと同じに跳びあがる。叫ぶ。コール。足踏み。舞う。
 一曲が終わる前に、広場は人で溢れかえった。
 相変わらずの集まりの速さと広場全体が一つになっているかのような一体感に、ティセラは圧倒された。
「凄い盛り上がりですね」
「えぇ」
 ティセラに並んで戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)も群衆を見下ろし見つめた。今日一日、あのパワーに振り回されたのだと思って見ても、この規模の人間が一体となっている様は 『異常』 なのだろうが、それはまた 『素晴らしきこと』 なのかもしれないとすら思わされてしまいそうで。小さく笑えた。
「まぁ、警察が来るまで、ですけどね」
「ふふっ、そうですね」
 言ってるそばからサイレンの音が鳴り響いてきて、警官が駆け寄ってきた。
 詩穂も、メンバーも、スタッフも、栗たんも。客と一緒に一斉に散っていった。それでも駆ける誰もに笑顔が溢れているように見えた。
「追い回されたりしましたけど」
 ネオンに溢れた街を見つめて。
「良い街ですわね」
 ティセラは小さく雫して笑んだ。






担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 お久しぶりです。ゲームマスターの古戝正規です。

 この度は、リアクションの公開が大幅に遅れてしました。
 大変に申し訳ありませんでした。

 蒼空のフロンティアは、ストーリーも世界観もシステムでさえも刻一刻と変化するゲームです。
 そんな中、一部の時間を停滞させてしまった事を、重く受け止め、反省しております。

 ご迷惑をお掛けしてしまいました。
 以後、このような事のないよう、これからも全力で挑ませていただきます。
 よろしくお願い致します。 

▼マスター個別コメント