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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

リアクション


第五章 それぞれの正義の果てに――

 突然、一匹のレッサーワイバーンが巨大雪だるまの上空に飛んできたかと思うと――
「ウハハハハハ! リアジュウシネー、マジシネー! リアジュウシネー、マジシネー!」
 完全に何かに取り憑かれた如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が、レッサーワイバーンの背から巨大雪だるまの頭の上に降臨した。
「な、何だアイツ!?」
「悪魔か!?」
「白目むいてるぞ!!」
 突然の状況に、ざわめく麓の人間達。
 しかし――
「静まれ、リア充どもっ!!」
 驚異的な一喝によって、辺りは水を打ったような静寂に包まれた。
「聞け、愚かなリア充どもよ!! 貴様らはこんな寒い中、わざわざカップルでスキーに来て何が楽しい? いや、スキーだけじゃない。バレンタイン、ホワイトデー、卒業式の後に告白、入学式で一目ぼれ、夏の海でナンパ、クリスマス…………ふざけるな! 死ね! リア充マジ死ね!! 俺がスキー場でバイトをしてるときまで、イチャコライチャコラを見せ付けてるんじゃねぇ!! それで、アレだろ? どうせスキーが終わったら混浴風呂でイチャつくんだろ? で、それが終わったら次はベッドという名の夜のスキー場でイチャつくんだろ? もう、怒った! 俺は怒ったからな!!」
 完全に周囲がドン引きして動きが止まる中、正悟は魔法石に触れると――
「貴様らリア充を、俺は粛清する! リアジュウシネー、マジシネー……リアジュウシネー、マジシネー……リアジュウシネー、マジシ(ry」
 コンジュラーである正悟は、リア充を恨むある意味で魔法使い的なフラワシを大量に呼び寄せ、謎の呪文を唱えだし魔法石にパワーを送り出した。
 すると――
「ウハハハ! さぁ行くぞ、リア充粛清魔人!!」
 魔法使い的なフラワシによる術式修復と、奇跡の嫉妬パワーのコラボレーションで、信じられないことに巨大雪だるまが正悟の言うことを聞き始めたのだった。
「な、なんということでござるか! あの御人、最後の最小構成術式を書き換えて、魔法石を完全に支配してしまったでござる!!」
 まさかの展開に、修復チームから驚きの声が上がる。
 しかし――
「さぁさぁさぁ! 全てのリア充を粛清だ――ぶふぉ!?」
 正悟は、レオンの放った弾丸が直撃して――
「ぐはっ……今此処でこの雪だるまが倒れても、第二第三の嫉妬充が……ガクッ」
 あっさりとその場に倒れたのだった。
「いや……とりあえず、撃っとかなきゃヤバイかなぁと思って」
 その場にいた全員が、レオンの判断に無言で頷いたのだった。

「と、とにかく……これで一安心でござる。魔法石の暴走は無事に治まったでござるよ」
「嫉妬パワー、恐るべしですね。しかも、嫉妬という原動力だけで限界以上のフラワシを周囲から呼び寄せて使役したのにも驚きです」
 何とか魔法石の暴走が治まり、ホッと息を撫で下ろすスノーマンとクロセルたち。
 彼らの傍らには、すっかり大人しく言うことを聞くようになった巨大雪だるまが鎮座していた。
 スキー場には、再び平穏な雰囲気が戻ってきていた。
 そして、そこへ――
「スキー場にお集まりの皆様、私は雪だるま王国女王、赤羽美央です。どうぞ、よろしくお願いします」
 威風堂々と現れたのは雪だるま王国から長い道のりを急いでやって来た、女王の赤羽 美央(あかばね・みお)で、彼女が纏うドレス型の重鎧は、パートナーである魔鎧 『サイレントスノー』(まがい・さいれんとすのー)だった。
「……さて。今回私は、お願いがあってここに来ました。もちろんただのお願いですから、強要はしません。でも一人破れば一つ、雪だるまが増えることになるでしょう。つまり、手足を縛って、雪だるまに埋め込んで雪だるまの気持ちを味合わせる素敵な儀式です」
 新雪のような爽やかな笑顔でとんでもない事を口にする美央。
 彼女の演説は続く。
「確かに、何かしらの脅威が襲ってきたときは、それに対処すべきだと思います。ですが、何も壊したり殺しちゃう必要はないじゃないですか。その脅威がされば、もう安全なはずです。もし破壊して殺したりして脅威が去ろうとも、ただその先には復讐が待っているだけです。つまり、何が言いたいかというと……雪だるまは、破壊しないでください」
 美央は、護衛の小雪だるまを手のひらに乗せて周囲に見せて回る。
「ほら、この可愛い雪だるまを見てください。こんなに優しい子もいます本来『雪だるまと人間は平等』なのです。それを簡単に破壊するということは、残酷な行為だと私は思います。なのでどうか皆さん、雪だるまの保護にご協力ください! そして、雪だるまと友達になってください!!」
 堂々と雪だるまとの友好を宣言した美央。
 しかし――
「フンッ! 甘っちょろいな、オラァ!!」
 突然、ジガンが美央の護衛であるミニ雪だるまに向かって刃を振り下ろした。
 だが――
「お前……陛下の頼み、聞いてなかったのか?」
 ジガンの攻撃を、日比谷 皐月(ひびや・さつき)が愛剣のスラッシュギターで受け止めた。
「あ? 雪だるまと友達になれってやつか? だったら、そんなもんはお断りだな」
「何でだよ……人間も雪だるまも、関係ねぇだろ」
「いや、俺にとって雪だるまは殲滅する対象だ。んなもんと、仲良しごっこなんかできやしねぇよっ!」
 一旦、ジガンはあえて後ろに引いて態勢を立て直した。
 そして――
「魔法の暴走が治まろうと関係ねぇ! 俺は雪だるまをぶっ潰す! ハッハァハー!!」
 一気に地面を蹴って飛び出す。
 それと同時に――
「だったら、お前に好き勝手させるわけにはいかねぇな! 雪だるまが傷つけば、俺の大事な仲間が傷つくからな。雪だるま王国“用務員”日比谷皐月、罷り通る……ってか? いくぜっ!!」
 スラシュギターを構え、皐月も飛び出した。
「「オラァッ!!」」
 周囲が止める間もなく、ぶつかり合う二人。
 ところが――
「ねぇ、ママー! この大きい雪だるまさん、スゴイねぇ♪ あ、小っちゃい雪だるまさんも可愛い!!」
 ジガンの目と耳にに飛び込んでくる、一般客の子供の笑顔と笑い声。
「チッ……」
 気づけば、ホテルに避難していた一般客たちが外に出始めていて、いつの間にか巨大雪だるまや小雪だるま達と仲良く触れ合っていた。
「……フンッ」
 突然、ジガンは刃を引いた。
「な、なんだ? どうしたんだよ!」
 今まで戦っていたはずのジガンの行動に、首を傾げる皐月。
 するとジガンはスキー場の帰り道へ向かいつつ――
「しらけた。別に俺は人間に恨みはねぇし、あのガキどもの楽しみを砕く気もねぇ」
 と言って歩いていってしまった。
 しかし、最後にはやはり――
「ただ……テメェが雪だるまを保護したせいで、また人間が傷つくってのなら――今度は、テメェの王国ごと砕くからな?」
 人間砕氷船の二つ名に相応しく、何もかもを砕くような眼で美央を睨むと、今度こそ本当に去っていった。
 そして、それを受けて美央も――
「絶対に……そんなことにならないよう、努力します」
 自分に言い聞かせるよう、小さく呟いて決意を固めるのだった。