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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

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激闘! 巨大雪だるま強襲!!

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第四章 救出

「お願いだ! 雪だるまの破壊は止めてくれ!」
「うるせぇ!! てめぇらがノロノロと修復作業なんかやってる間に、麓に小雪だるまが降りて行っちまってるだろうが!! 被害が拡大する前に、早いとこぶっ壊すんだよ!」
 山頂では、未だに三つ巴の戦いが続いていた。
 しかし――
「くっ……アーデルハイト殿の作った術式が複雑すぎて、なかなか先へ進めないでござる」
 魔法石の修復派、思った以上に難航していた。
 そして――
「ス、スノーマンさん……まだですか!? このままだと、たしかに被害が増えていっちゃいます!」
「わかってるでござる! わかっているのではござるが……」
 巨大雪だるまが存在し続けるせいで、麓への被害が拡大していることは、山頂にいる全員に見えていた。
 三つ巴の戦いは今、膠着状態にあった。
 ――と、そこへ。
「ちょっと、あんた達! どいて!!」
 突然、空から声が響いたかと思うと――高速で飛来したペガサスが巨大雪だるまの頭上に着地し、その背からルカルカ・ルー(るかるか・るー)と、パートナーの夏侯 淵(かこう・えん)が降り立った。
 そして更に――
「申し訳ありません! 通していただきます!!」
 スノーモービルで小雪だるまの襲撃を巧みに避けつつ、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)がやって来た。
「皆様! 実は先ほど、この付近で任務にあたっていた教導団の生徒とイルミンスール魔法学校の生徒が、消息を絶ったと報告が入りました! そして、その生徒達はこの巨大雪だるまの中に埋もれている可能性が高いとのことです! つきましては、今から救助活動に入らせていただきます!」
 そう言うと同時に、小次郎は殺気看破によって埋もれた生徒達を探し始めた。
「良い、あんた達? 戦うのは勝手だけど、もしも邪魔するようだったら絶対に許さないからね?」
 ルカルカは鬼気迫る勢いで周りに睨みを利かせると、彼女達も救出作業へと入った。
 そして――
「ん? このマッピングは……」
 ルカルカは、巨大雪だるまの頭部に施されたマッピングの跡を見つけた。
 すると――
「あの! そのマッピングした位置に、私のパートナーが誰か埋ってるのを見たそうです」
 ワイバーンに乗った四方天唯乃が、ルカルカにマッピングの意味を教えてきた。
「って、ことは……ここにレオンかフィリップさんが埋っているってことね!? ありがとう! さっそく確かめてみる!」
 唯乃の情報を得て、ルカルカたちはマッピングの位置を掘っていく。
 そしてすぐに――
「レオン!? い、今助けるから!!」
 雪下から、教導団のレオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)が出てきた。
「よかった……たいした怪我はしてないみたいね」
 ルカルカ達は、用意していたザイルを使ってレオンを引っ張りだすと、彼の様態を見て安心した。
 レオンは巨大雪だるまの頭部に埋る際、咄嗟に気道や呼吸空間を確保等の対策を行ったため、気を失い体温が低下した程度ですんでいた。教導団での訓練や判断力が、彼自身を助けたのだった。
 しかし、ここで淵が気づく。
「ん? フィリップ殿がいないな? 一緒じゃないのか?」
 レオンが埋っていた周囲を探してみても、一緒にいたはずのフィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)の姿が見えなかった。
 すると――
「……そこにいるのか!!」
 殺気看破でフィリップを探していた小次郎は、スノーモービルを踏み台にして飛び上がると、煉獄斬で巨大雪だるまの鼻に当たる位置を斬り裂いた。
「あ!」
 その場にいた誰かが声を上げる。
 一瞬、雪だるまの頭部の奥深くに、イルミンスール魔法学校の制服が見えたのだ。
「フィリップさんは、そこにいるの!? だったら今助け――」
 フィリップがいる位置を知ったルカルカたちは、彼の救出に向かうが――彼女達の目の前に、突然、ニコ・オールドワンドが立ちはだかった。
「う〜ん、さすがに雪だるまを壊す人が多くなってきちゃったなぁ。このままだと、長く面白い戦いが見れそうにないし、空飛ぶ雪だるま騎士の相手も疲れたし……ちょっとだけ、壊す人をじゃましちゃおっと!」
 そう言って、ニコはブリザードをルカルカや小次郎たちに向けて放つ。
「くっ……これじゃあ、助けることができない」
 彼らは、ニコの邪魔によって身動きが取れなくなってしまう。
 更に――
「あぁ、もう! 小雪だるまが邪魔!!」
 次々と巨大雪だるまの体表に生成される小雪だるま達が、ちょこまかと妨害を加えてきた。
 思わぬところで足止めを受けてしまった救出隊。
 だが、そこへ――
「だったら、雪だるまは私達に任せて! 私もフィリポくんを助けたいから、戦うね!」
 桐生 理知(きりゅう・りち)と、パートナーの北月 智緒(きげつ・ちお)が現れ、小雪だるま達と戦い始めた。
「雪だるまさん! 寒いから、一緒にオシクラマンジュウで遊びましょっ♪」 
 智緒は元気いっぱいに、バーストダッシュで小雪だるま達に次々と突撃していく。
「って、あれ? 壊れちゃった……じゃ、次の小雪だるまにダーッシュ! あれ? また壊れちゃった。オシクラマンジュウってこんなんじゃなかったっけ? ま、いいよね。身体が暖かくなってるし、きっとこれで正解……な気がする……たぶんね♪」
 智緒によって、巨大雪だるまの周りの小雪だるまが破壊されていくと――
「待ってて、みんな。すぐに頭の上の小雪だるまもやっつけちゃうから!」
 その後に続いて、理知がレビテートを使って巨大雪だるまの頭上へと登ってきた。
 そして理知は――
「えいっ!! これでどう!?」
 ミラージュによって生み出した幻影を展開させると、頭上の小雪だるまが幻影に向かって集まりだした。
 その隙を突いて彼女は、集まった小雪だるま達をサコキネシスで一気に持ち上げると――
「それじゃ、これ返すねっ!」
 全ての小雪だるま達を、巨大雪だるまに向かって投げ返したのだった。
「さ、みんな今のうちにフィリポくんを助けだして!」
 理知の活躍によって、小雪だるまの問題は何とか解決した。
 そして、そこへタイミングよく――
「フィリポ! 今助けるからね!」
 小型飛空艇オイレに乗った赤城 花音(あかぎ・かのん)と、パートナーのリュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)がやって来た。
「兄さん、フィリポは巨大雪だるまの鼻の位置に埋ってるみたい!」
 オイレの索敵センサーによって、フィリップの埋っている場所を探り伝える花音。
 すると、リュートはロープを上手く使い――
「わかりました。それでは、今から降りていきます」
 飛空艇から巨大雪だるまの鼻まで下降していった。
「よし。何とか鼻の位置まで降りてきました。後は、このポリ容器に詰めた温泉のお湯で、雪を溶かして足場ををつくり、プラスチックシャベルで掘るだけです」
 ついに、フィリップの救出作業に取り掛かるリュート。
 だが――
「くっ……これは、ブリザード魔法!?」
 突然、ロープに捕まったままのリュートに、ブリザードの嵐が吹き荒れる。
 この人為的なブリザードの正体は――
「さっきも言ったけど、これ以上大事な大事な混沌の元凶、巨大雪だるまを壊されるのはいただけないんだ。それに、君達が救出にヤキモキする様も結構おもしろいしね♪ 邪魔させてもらうよ!」
 混沌を求めるニコが、ブリザードを放った張本人だった。
「それっ!」
 駄目押しとばかりに、再びブリザードが放たれる。
「くっ、このままでは……」
 ロープにぶら下がったままのリュートは、一気に命の危険へとさらされる。
「邪魔をするなっ!」
 一刻を争う事態に、珍しく小次郎が感情を剥き出しにして、巨大雪だるまの頭上からニコへと斬りかかった。
 しかし――
「う〜ん、残念♪」
 魔法の箒に乗ったニコは、小次郎の斬撃をヒラリと避けてみせた。
 誰しもが一刻も早くフィリップを助け出したいのだが……そのためには、どうしても巨大雪だるまの鼻に当たる位置まで、安全に降りて掘るしかなかった。
「クソッ!」
 その場にいる、フィリップを助けたい人間は誰もが歯がゆい思いをしていた。
 だが――次の瞬間。
「あ!?」
 ニコがその存在に気づいたときには、もう手遅れだった。
「フィリップ君!! 今すぐ行くからね!!」
 浴衣姿に炎を纏い、宮殿用飛行翼で高速飛来したフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)は、火の鳥さながらの姿で、あっという間に巨大雪だるまの頭部へと突入していった。
「ま、まさか……捨て身で巨大雪だるまに特攻するなんて!」
 一瞬、何が起きたのか――それどころか、ニコを含む全員が本当に火の鳥を見たと勘違いしてしまっていた。
 だが――
「でも、そんなことはさせないよ! ブリザードで突入した穴ごと塞いでやる!」
 すぐに状況を理解したニコは、サッと杖を掲げた。
 ところが――
「くっ!?」
 ニコは、ほぼ本能的な反射に近い速度で魔法の箒の高度を上げた。
 すると、次の瞬間には彼のいた位置を魔道銃の弾丸が通り過ぎていった。
「ごめんなさい。あの子、完全にフィリップ君のことで頭が一杯みたいなの。さっきなんか、ホテルでみんなの卓球を見てたのに、行方不明の噂を聞いて飛び出してきたのよ」
 魔道銃を放ったのは、フレデリカのパートナーであるルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)だった。
「そんな恋する乙女を邪魔する無粋な魔法使いは……私が相手になるわよ?」
「ふ〜ん……怖そうなお姉さんを敵に回しちゃったみたいだねぇ」
 ルイーザーのあまりの殺気に、ニコは思わず鳥肌がたってしまった。
 そして、巨大雪だるまの自己修復が始まりかけた瞬間――
「フィリップ君、大丈夫!?」
 遂に、フィリップが救助された。
 だが――
「ルイ姉、どうしよう! フィリップ君、脈がない!!」
 事態は、危険な状況となっていた。

「フィリップ君? フィリップ君っ!?」
 急いでホテルのロビーへ戻ってきたフレデリカは、ただガムシャラにフィリップに人工呼吸を施そうと唇を重ねた。
 しかし、パニック状態の彼女には上手く息を吹き込むことができない。
 するとそこへ――
「フレデリカさん! AEDを使って心肺蘇生を行います!」
 事前にAEDを用意していた花音もやってきて、フィリップの心肺蘇生法を実行する。
「みなさん、離れてください!」
 心臓マッサージや人工呼吸用マウスピースを使っての人工呼吸後に、AEDが試される。
「いきます! 1、2、3!」
 花音がAEDのボタンを押すと、フィリップに電気ショックが与えられ――
「うっ……うぅ……」
 フィリップは意識を取り戻した。
 そして、ちょうどそこへ――
「フィリポ、大丈夫かい!?」
 医者の卵である本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)がやってきて、フィリップを診察する。
「ふむ……魔法が使えるパラミタに感謝だね。本来だったら、巨大雪だるまの奥深くに埋もれた時点で助かる見込みはないけど、上手く火術で呼吸空間を確保できたのがよかった。でも、後半はそのせいでアイスマスク現象が起きて呼吸困難になり窒息したみたいだけど。まぁ、第V期から意識を取り戻してこうやって喋れるのも、ナーシングという魔法のおかげだ。本当、最後まで魔法に感謝だね」
 フィリップは意識を取り戻して数分後には、喋れるまでに回復していた。
 本来であれば入院は確実なのだが……フレデリカや花音の手厚いナーシングによってなんとか回復したのだった。
「さ、あとは低体温症の治療だけだ。そろそろ、温かい食べ物が来るはずだから……フィリップの治療は二人に任せようかな」
 ――と、ここで。
「皆さん、温かいスープが出来たのでこれを食べて体を温めてくださいね!」
 ホテルの調理場から、涼介のパートナーであるヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)が、ジャンボ七輪に鍋を乗せてやって来た。
 彼女が作ったのは『ソパ・デ・アホ』というスペインのニンニクのスープで、身体の芯から温まる一品だった。
 そして、ちょうどそこへ――
「お! 美味そうな、スープだなぁ! 小次郎先輩のせいで山頂から歩いてきたから、腹空いてたんだよ!」
 レオンと小次郎がロビーへとやって来た。
 その様子を見て、涼介は驚愕する。
「ちょ、ちょっと待ってくれレオン! 君は、巨大雪だるまから救助されたばかりなのに、歩いて来たって言うのか!?」
「ん? まぁな。なんせ、小次郎先輩が乗ってきたモービルを踏み台にして壊しちゃったからなぁ」
「あれは……雪中行軍の訓練だ。それに軍人たるもの、アレぐらいの距離を歩けなくてどうする」
 さすがの涼介も――
「さすが、シャンバラ教導団って言うか何て言うか……」
 開いた口が塞がらなかった。