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リアクション
「スノハちゃん、連れて来たよ。あれ、ねじゅお姉ちゃんは?」
スノハを連れて来た桃音はお姉ちゃんが一人足りないことに気付いて高天原 水穂(たかまがはら・みずほ)に訊ねながらきょろきょろと捜した。
「ねじゅちゃんは今、お手洗いに行ってますわ」
水穂は、近くのトイレの方に顔を向けながら答えた。ちなみに今日の彼女は用意した腰から下のみのエプロンを身につけてきっちりと名札のバッジも付けて用意万端。
「そっかぁ」
桃音は頷き、スノハと繋いで手をぶんぶんと振りながら待っていた。
「ごめんね、みんな」
お手洗いから慌てて出て来たのはちびっこになる薬で小さくなったネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)だった。
「あ、ねじゅお姉ちゃん? ちっちゃくなってる?」
桃音はいつの間にか小さくなっているネージュに驚いた。
「うん、ちっびこになる薬を飲んでみたんだよ」
桃音に答えながらくるりと回った。すっかり園児と同じ大きさになっている。それだけではなく体質の問題がさらに顕著になっていたりもする。
「ねじゅちゃんも戻って来ましたし、遊びに行きましょう。途中、お手洗いが行きたい子がいたら教えて下さいね。水穂お姉さんが付き添ってあげますからねー」
水穂はぱんと手を叩いて注意を自分に向けてから集まった子供達に言い、ちらりと絵音の両親の相手で参ってしまっているナコの方を見た。殺伐とした空気がこれ以上、園児達に伝わらないようにするため遊びに行くことを提案した。
「遊んでる間に絵音ちゃんは帰って来るから大丈夫だよ」
「うん」
公園を出発する前、ネージュはにっこりと笑顔でスノハを励ました。
「ねじゅお姉ちゃん、水穂お姉ちゃんが忙しかったらボクが一緒にお手洗いに行ってあげるから任せてね!」
励まされるスノハの横で桃音が子供なりにもしっかりとネージュを気遣うのだった。
「ありがとう、ももんちゃん」
嬉しくなったネージュは笑顔で礼を言った。
そして、公園を出発した。
「あ、お兄ちゃん」
白銀 アキラ(しろがね・あきら)を見つけるなり獣人の少年が走って来た。
「おまえ、元気だったか」
以前の雪だるま騒ぎで顔見知りになった少年に笑いかけた。
「うん」
力強くこくりと頷いた。
「智知(ともち)! 遊ぼうぜ!」
少年の背後から大人の事情はどこ吹く風の少年達の声が降ってきた。
「お兄ちゃんも遊ぼうよ」
「おう。と、その前に」
智知の誘いの前に手に持っているちびっこになる薬を一気に飲み干した。みるみる小さくなり、身長が智知と同じになる。
「うわぁ、すごーい」
憧れの目でぱちぱちと手を叩きながら声を大きくする。
「行くぞ!!」
準備が整い、いざアスレチックに向かおうとした時、
「アキラ」
「ん? 何か用か」
自分を呼ぶ声に振り向くと何人かの女の子を連れた北都がいた。
「僕、少しここを離れるから干してるスノハちゃんのリボンを頼むよ」
北都はアキラの返事を待たずに用事を頼んで女の子達を連れて公園を出て行った。
「……リボン、大丈夫だな。だれがいちばん早いかきょうそうだー。負けたら罰ゲームだぞ」
ちらりと干されているリボンの所在を確認した後、アキラは智知や他の子供達を率いてアスレチックで遊び始めた。子供達の不安が吹っ飛ぶぐらい思いっきり。
安宿の一室。
ドアの前でアニス・パラス(あにす・ぱらす)と佐野 和輝(さの・かずき)は『迷彩塗装』で隠れながら部屋の様子を探っていた。
「……ありゃ? 誘拐犯の人達、悪い人じゃないみたいだよ。和輝」
「子供の方も帰りたがらないみたいだな」
二人は飛び出した絵音を追いかけてここまで辿り着いたのだ。誘拐犯と思われる三人組に接触していないのは絵音に万が一が起きたらいけないからだ。
「どうする? スノハも心配してるよぉ」
雪だるまの件で仲良くなった女の子を思い出していた。今日も彼女と彼女の友達絵音と一緒に遊んでいたのだ。スノハはきっとまだ泣いているはずだ。
「このまま連れ帰っても喧嘩をするだけだ。もう少しそっとして自分で行動するのを待とう。その方が二人のためだ」
絵音が自分で行動することを見守ることにした。彼女を三人組に任せても大丈夫だろうと分かったからだ。
「……見守る。ほうほう、絵音の味方だね。じゃ、あの子を捜してうろついている人を近づけなければいいんだね!!」
和輝の言葉で自分の役目を知ったアニスはスノハのことを心配しつつも絵音の見守りに
徹することにした。
「……とくに、武力で解決しようとする者は」
二人はこのまま絵音の見守りを続けることにした。
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