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リアクション
室内に入ると
「な、何だよ、お前ら」
「何なのよ」
20歳の青年と22歳の女性がびっくり顔で七人を迎えてくれた。
「絵音ちゃん、久しぶり!!」
「元気そうね、絵音」
イリアとセレンフィリティは真っ先に部屋の奥の椅子に座っている絵音に声をかけた。
「あ、お姉ちゃん」
絵音は、前に遊んでくれた二人のことを覚えていたらしく嬉しそうに挨拶を返した。
「間違いなく、絵音じゃな。事情を話して貰うかの」
挨拶する二人に答えた絵音の様子を確認したルファンは、ドアの前に立ち尽くしている青年を問い詰めた。
「念のために言っておく、抵抗はするなよ? 今は誘拐犯として見られているんだ。必要なら撃つ」
洋は誘拐犯三人組に腰のマシンピストルを見せながらとどめを刺した。
「そ、それは……」
こんな大勢に囲まれ言い逃れはもうできないと観念した三人組はゆっくりと自分達の名前を明かし、事情を話し始めた。
三年前の事故で両親と当時5歳だった妹を失ったこと。
両親の遺体は見つかったが、妹は行方不明であること。
三年前からずっと生きていると信じて妹を捜し続けていること。
「今日、サミエを捜しに来ていてそこで絵音ちゃんに会って。思わず、連れて来てしまったのよ」
「誘拐するつもりはこれぽっちもなかったんだ。なぁ、ナカト」
「あぁ、ただサミエに似てて」
姉弟は、水分が大量に含んだ目で悪意の無い気持ちを訴えた。
「なるほど、妹さんにそっくりだった訳ですね。で、こちらのお嬢ちゃんは」
姉弟の次は、頑固な顔をしている少女の事情。
「あたし、帰らない」
洋に聞かれるも表情と同じように頑固な答えしかしない。
「どうして帰らないの?」
「だってぇ」
イリアの親しげな言葉に絵音は少し涙を浮かべて答えるも深い理由までは口にはしない。分かったのは、ナコ先生達と空京に遊びに来てスノハと喧嘩して飛び出したことだけ。肝心のどうしての部分が分からないまま。
「……こりゃ、絵音ちゃんの気が済むまで付き合うしかないわね」
「三人組を警察に引き渡して絵音を親の元へって感じ簡単にはいかないわね」
セレンフィリティは肩をすくめ、セレアナは大変なことになりそうだと頭を抱えた。
「ずっとこれなんだよ」
「さっきから困ってるんだ」
ハルトとナカトも愚痴を口にするが、それを耳にしたセレンフィリティの顔色が変わった。
「もう、泣き言を言わないで。だいたい、衝動的にもほどがあるわよ。少しは知恵を絞りなさい」
自分達のしでかしたことにだらしなく愚痴る二人を厳しく叱った。三人組のせいで事件になってしまったのだから。叱られている横で絵音は空腹を訴え始めた。
「お腹、空いたぁ」
知っている人に会ってほっとした絵音はますます空腹を強く感じ始めた。お腹を押さえて我慢できそうにない様子。
「絵音ちゃん。はい、これ。ショコラティエのチョコとチョコ菓子です」
「わしも持っておるよ。小腹を満たすぐらいはできるじゃろう」
みととルファンが手持ちのチョコを絵音に渡した。
「わぁ、ありがとう」
受け取るなり、三種類のチョコを次々と口に放り込んでいく。
「絵音、帰りたくないのはどうして?」
お菓子を食べて少し機嫌が良くなった頃合いを見てセレアナが口を開いた。
「……嫌いだもん。あたしのことパパもママも誰も心配してないもん。いらない子だから。ここにいる。わがまま?」
まだマカダミアナッツチョコを口の中でもぐもぐしながらほんの少しだけセレアナの質問に答えた。
「そんなことないわ。我が儘とは思わないけど。両親のこと不満で嫌いでもいいけど、いらない子とか言わないで。みんな絵音のこと心配しているのよ。気持ちを言う必要はあるけれど」
絵音の気持ちは理解出来るので無理矢理帰しはしないが、両親の元に帰るようにするにはもう少し時間がかかるなと感じた。
「チョコだけじゃ、すぐにお腹空くよね。よーし、イリアが何か作るよ。材料があればだけど」
何とか落ち込んだ空気を明るくしようとイリアが名案を口にするも肝心なことを思い出し、困った顔になった。
「材料ならあたしが買いに行くよ。ついでに時間潰しができる物も一緒に」
すかさず、セレンフィリティが名乗り出た。それを聞いた絵音は物欲しそうな顔で今の状況にとってとんでもないことを口にした。
「お外に行くの? あたしも一緒に行く!!」
当然、断ると思いきや
「じゃ、一緒に行こっか」
セレンフィリティはあっさりと許可をした。
「ちょっと、セレン!! それじゃ、居場所がばれるでしょ」
セレアナが急いでいい加減な相棒にツッコミを入れる。先ほどの話で捜索している生徒達がいると知ったはずなのに。
「大丈夫よ。ほんの近くのコンビニとか店に行くだけだから」
ちょろいと言わんばかりに陽気に言い放つ。
「捜している人は多いのよ。少しでも見つかったら尾行されて一発よ」
「……行きたいって言ってるんだから。大丈夫だって。他人の空似は三人ぐらいいるものだし」
二発目のツッコミを放つも効果は薄く、すっかり絵音と手を繋いでしまっている。絵音はセレアナの言っていることが分かるのか不安そうな顔をしている。
「よーし、お姉ちゃん任せてよ」
絵音に笑いかけ、いざ部屋を出ようとした時、イリアがいつの間にか用意した買い出しメモを渡した。
「……このメモに書いてる物お願い」
「分かったよ。それじゃ、行って来るよ」
セレンフィリティは絵音と共に買い出しに行った。その際、セレンフィリティは目立たないように普通の服装で行くことに。
「絵音、外に出ちゃったよぉ、和輝。あたし達も行く? でも一緒にいるのって前幼稚園にいたセレンフィリティだよ〜」
アニスは外に出て行く絵音を困ったように見ていた。追うのならまだ間に合うはず。
「ここに来る者を監視するために残ろう。絵音は無事に戻って来るはずだ」
絵音の側にいるのは、彼女の味方だから心配は無い。何より絵音が行きたがったのだからこのまま公園に戻るという可能性もある。
「そうだね〜、武力で解決はだめだもんね」
アニスは頷き、武力で解決をしようとする生徒達が来ないように見張りを続けた。
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