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Cf205―アリストレイン―

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――、食堂車

スバルは頭を抱えて苦しんでいた。αネットワークによる意識の本流に当てられていた。大量の情報は脳の処理力を超えそのまま苦痛に変わる。
 本来ならば、アリサが幾つもの意識を受け取りつつ出力を抑え、共有の情報として受信側へと流しているのだが、スバルの場合はアリサが管理する情報の渦そのものに干渉してしまったようだ。故に、受信の苦痛により意識の送信は全くできなくなっていた。
「……マスター、頭の中に誰かの思考が……流れ……苦しい……」
 頭を抱え歪むスバルを見てアルテッツァは平然と分析をする。
「前にもこんな事態がありましたね……もしかして、アレンスキーくんも乗車しているんですかね」
 アリサの能力に関してはレポートで確認していた。《精神感応》によるポゼション能力。多人数で意識を共有できると聞いている。スバルもまたアリサつながっているのだと判断した。
 ただ、何故スバルが苦しんでいるのかは――、予想はつくが、今はそんな事どうでもいい。
「それで、何が起こっているんです?」
 苦しみつつも、スバルが答える。
「トレインジャック……世界開放機構、キケンブツ……十字教団、アリス……恐怖と不安……」
 乗客の畏怖すら受け取ってしまう。アリサと違い耐性のないスバルはこれに当てられていた。
「なるほど、二組のトレインジャックがあっていると……」
「いいえ……」
 アルテッツァの言葉を否定しスバルが言う。
「新しい……トレインジャック……が……あぁ……!」
「すばるちゃん!」
 スバルの体が椅子から崩れ落ちる。セシリアが落ちゆく彼女の体を支えなければ、頭を床に打ち付けていただろう。
「……限界ですか。スバル、あと何分で復帰できますか?」
「パパイ!」
 セシリアが訴えるようにアルテッツァを睨む。まるでスバルをもののように扱う彼に。しかし、彼は向けられる視線に何も感じていないようだった。
 寝台車からの銃声が聞こえていた食堂車は、騒然としていた。
「なんてこと……」
 ネームレスは愕然と驚いていた。
「銃声が聞こえたもんな……ベリアルもいなくなるし、何が起きてんだ?」
 輝夜も周りを警戒する。トレインジャックがあっていると聞こえた。
 ネームレスは悄然と呟く。動揺している。自らに起きた不幸に、その真実に――
「ほんの数秒……目を話した時には消えていました……! 我の視力は1.5です! でも、何故消えたのかわからないのです……! 我の……大盛りミートスパゲッティーが……!!」
「そっちかよ! てか、食っとる場合か!」
 その視力でテーブルと床につまれた食器の山脈を直視して欲しい輝夜だった。


 緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が鼻をくんくん動かす。
「なんか臭う」
「あら、コックさんが料理に失敗したのでしょうか?」
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)には焦げ臭さは感じなかった。
「そうじゃないなくて、アレだよ。血と硝煙の匂い。それも新鮮な」
 芳しいその匂いが立ち込める場所を求めて透乃は立ち上がる。
「ちょっと見てこようか。なんか色々とあっているみたいだし、腹ごなしになりそうだよ」
「あら? もうお腹いっぱい? でも、今から行くところで”メインディッシュ”が出たりするかもですよ?」
 勿論食べ足りない。だから透乃は言う。
「パンとワインならもっと食べたいかな」
 二人はパン〔Pain〕という肉を、ワイン〔Vin〕という血を食べにいく。
 対価〔Coin〕は痛み〔Pain〕で払い、
 食後にはVをWと重ねて、勝利〔Win〕のワイン〔Wine〕を飲むために。