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リアクション
「助けを聞いて手を貸しに来た」
ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)は日課の巡回パトロール中に双子の救援の声を聞き駆けつけて来たのだ。
「ありがとうございます」
新たな助けにトゥルスは安心の見える声で感謝を口にした。
その様子に何かを感じたヴァルは事件に遭った彼らに対しての慰めではなく、厳しい言葉を投げかけた。
「助けに来たからと安心しているようだが、俺達が君に勝るのは単純な力、ただそれだけだ。それがどういうことか理解できるか」
「……はい」
「この騒ぎをショーの形に収め、観客を喜ばすパフォーマーとしての矜持があるならば、そこから目を逸らすな。自分で考え、自分で行動しろ」
「……はい」
他人に任せて安心してしまっているトゥルスにこの事件はただ解決すればいいものではないと、ショーを見に来た観客がいて彼らの楽しい一日を守るために何かをしなければならないと。本当のパフォーマーならどんなことでもショーに出来るはずだと。
トゥルスの返事は重かった。ヴァルの言葉はよく分かる。そもそも自分達で起こした事件を他人に解決を任せてぼんやり見ているのはどこか間違っている。出来ることを考えてやらなければならない。ショーを楽しみにしている観客に事件は関係ないのだから。
「さて、俺は俺の為すべき事をするとしよう」
自分の言葉が相手に伝わったのを確認し、ヴァルはスカイレッドの準備を始めた。
「さて、何色に……」
キリカ・キリルク(きりか・きりるく)はヴァルがトゥルスに檄を入れている間にスカイレンジャーの色を物色していた。
「レッド、イエロー、ブルーはいるとしていないのは、ピンクとグリーンだけですか」
スカイレンジャーに姿を変えた他の人達を見回しながら足りない色を確認する。
「……ピンクをやるしか」
ピンク色のスーツを手に取り、しばらく考え中。セクシーなピンクというところで考えているのだ。自分の性格とピンクの設定を考えると少し違う気がしてならないが、いないのならやるしかない。観客の中にはピンクのファンだっているはずだから。
「あの、私もショーに出たいのですが。怪我も治療して貰ったので」
考え中のキリカに波穂が声を掛けた。
「ショーにですか。しかし、怪人は通常より何倍も強くなっていますよ」
キリカは、今の状況がただのパフォーマーに敵うはずはないと静かに言った。
ロズフェル兄弟はキリカの言葉に小さくなっていた。
「……分かってます。でも、みんなが助けてくれるのをぼんやりと見ていて自分も何かしなきゃと思って」
力強い声としっかりとした目でキリカに答えた。大怪我をしてしまうだろということも覚悟しての決意。
「……分かりました。ただ、無理をしないようにして下さい。何かあればすぐに呼んで下さい」
何を言っても引き下がらないだろうと察したキリカは、ショーの参加を認めた。今後の彼女達のためにもここは願い通りにしてあげた方がいいだろうと。
「……はい、ありがとうございます。それじゃ、私はスカイピンクを」
足手まといだと断られると思っていただけに波穂は安心し、スカイピンクを選んだ。
そこにヴァルに檄を入れられたトゥルスが加わった。
「俺も出るよ。パフォーマーとしてぼんやりしている訳にはいかないからな」
トゥルスは、スカイグリーンを選んだ。
「ピンクとグリーンということは、僕はブルーを選びましょうか」
全部の色が揃ったところでキリカは、分析家でクールなブルーを選んだ。
ヒーロー達の準備が整った頃、司会者達もこれから始まるショーに気合いを入れていた。
「ヒーローの準備も整ったところでいよいよ司会の出番」
ミニスカートにマイクとかわいい司会のお姉さんな霧島 春美(きりしま・はるみ)は準備が整ったのを確認し、子供達の賑やかな声が溢れる舞台を見た。
「おう、最高なショーにしようぜ。派手な音楽を頼むぜ!!」
気合い十分のウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)は音楽担当のカンナに声をかけた。歌や舞踊が好きなため気になったのだ。
「音楽はあたしの大事なもの、ヒーローや司会に負けるつもりはないよ」
カンナは先ほどまで渋っていたのが嘘のように引き締まった顔でウォーレンに答えた。
「おもしれぇショーになりそうだな」
カンナの返事に満足し、ウォーレンはマイクを握り直した。
「……たくさんの声」
人前に出るのが苦手なアデリーヌは緊張でマイクを握る手にも力が入る。
「心配は無用じゃ、司会は四人じゃから。それより、観客から被害者が出ないうちに早く始めた方が良かろう」
ルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)はアデリーヌを落ち着かせ、今自分達がするべきことを言葉にした。
「そうですわね」
アデリーヌは頷き、気を引き締めた。
「それじゃ、行くよっ!!」
春美を先頭に司会組達は舞台へと急いだ。
「見守ってるから頑張って」
ローズは司会者達と共に舞台に出て行くカンナの背中に言葉をかけた。カンナは振り返らず、片手を上げて応えて登場の音楽を奏でながら舞台に行った。
「行ってらっしゃい。あたしは観客に混じって様子を見てるね」
滝宮 沙織(たきのみや・さおり)は元気に手を振りながら司会組とカンナを見送った。
しばらくして次々にヒーロー達も舞台に立っていく。それを確認してから春美は騒ぎを悟らせないという任務を背負って観客席に向かった。
ローズは春美が行ってからにカンナの様子を見守るため観客席に移動した。
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