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リアクション
何とか空いている席を見つけた沙織は隣の観客に声をかけた。
「隣、いい?」
「いいよ〜。あ、沙織ちゃん」
沙織の声に振り向いたのはノーンだった。
「あれ、ショーを見に来たの?」
思わぬ所で出会い、少し驚きながら訊ねた。
「そうだよ。すごい迫力で楽しいよ!!」
「そ、そうだね」
純粋にショーを楽しんでいるノーンに複雑そうに沙織は頷いた。
他の観客がいるため詳しい事情を話すことができないためただ頷くしかなかったのだ。
「沙織ちゃん、大丈夫だった?」
先ほどの沙織人質騒ぎをドキドキしながら見ていたノーンは心配そうに訊ねた。
「大丈夫、大丈夫。こっち空いてるよ!」
明るく答え、ノーンの左の席に座るも、ローズがこちらにやって来るのに気付き、言葉をかけた。
「ありがとう」
そう言ってローズは沙織の隣に座った。
「なかなか最高の音楽だよ。ショーがすごく盛り上がってるし」
沙織は、カンナを見守るローズに嬉しい言葉をかけた。
「レオング将軍との戦いの音楽どきどきしたよ。生演奏のヒーローショーなんだもん」
沙織に続いてノーンも嬉しい言葉をかけた。
「二人共、ありがとう。カンナもこれで少しはスランプから脱出出来ればいいんだけど」
ローズは二人に礼を言い、戦場に行っては演奏をするカンナをじっと見守っていた。
ノーンと沙織は司会の呼びかけにはしっかりと応え、ショーを引き立てつつ楽しみ、ローズは戦闘が終わる度にカンナに大きな拍手を送っていた。
「呼ばれて飛び出てニャニャニャニャーン。正義のヒロイン☆ウルトラニャンコだニャ」
助太刀ヒーローをする娘子は登場するなり雑魚戦闘員をあっという間に倒し、立派な髭を持つ逞しい男と一対一の対決を演じていた。
「悪はウルトラニャンコが許さない!!」
びしっと対峙する怪人に言い放つ娘子。
『貴様、我々の世界征服を邪魔するというのか』
巨大な斧を握り締め、怪人は野太い声で言った。
「真剣な戦いですわ。みんなの応援の力を!!」
少し司会に慣れてきたアデリーヌは子供達に声援を呼びかける。
「やっつけちゃえ、ウルトラニャンコ!!」
「負けないで!!」
「……しっかり、カンナ」
物を持っているにも関わらず、パンチを繰り出しながら応援するノーンと声を張り上げる沙織。すっかり子供達と楽しんでいる二人。
そして、カンナを応援するローズ。
「悪の心と野望はこのウルトラニャンコの拳で砕く!」
拳を握り締め、斧を振り回す怪人を軽やかにかわす。その動きは滑らかで魅せる動き。
「うなれニャンコの拳と肉球!」
かけ声と共にショーらしいオーバーなアクションと華麗なる速さで強烈な一撃を入れ、怪人を倒した。
『くそぉぉぉぉ』
悔しげな叫び声と共に怪人は消えた。
「悪は散るのが運命」
娘子は格好良く決め、次の戦場へと向かった。
「スカイピンク、参上!!」
「スカイグリーン、参上!!」
波穂とトゥルスも何とか頑張ろうと雑魚戦闘員の前に立った。手にスカイソードを持って。
声のは出さないが、胸の内は緊張と不安に溢れていた。
何とか登場するもそれが精一杯であることを感じている二人。
「……この二人だけじゃ」
とりあえず戦闘曲を奏でていたカンナも思わず心配の声を洩らしてしまった。
演奏をしている自分でも分かる。雑魚とはいえこの二人にでは敵わないと。
「……何かあったら」
もし何かあれば、足を出した方がいいかもしれないと、近くにいる自分が何もせずに二人がやられる中、ただ演奏をしているのは良い気分ではないから。
そんな時、
「ピンクとグリーンの前に大勢の戦闘員じゃ」
「大変ですわ」
ルファンとアデリーヌの声が響き、他のヒーローの耳に入った。
「スカイレンジャー、もう大丈夫よ!!」
近くで戦闘をしていたリーシャが登場し、雑魚戦闘員達を『光条兵器』の堅固なハンマーで粉砕した。
「……どこからでもかかって来い!!」
共に登場したマグナも『ソードプレイ』で次々に雑魚戦闘員達を槍の餌食にしていく。周囲への被害を最小限にするため大技や広範囲攻撃ではなく単体攻撃を使っているが、十二分に魅せる戦いとなっていた。
「あっという間に戦闘員達は全滅だ!!」
ウォーレンの声と共に子供達の歓声と共に混じる声。
「格好いいよ!!」
「……よかった」
ノーンは助太刀ヒーローの戦闘に魅せられ、沙織は波穂とトゥルスの無事に安心した。
「……何とか無事で」
ローズもカンナの演奏終了で拍手をしながら沙織と同じように二人の無事に安心した。
この後も波穂やトゥルスは助けられながらもショーを続けた。乱入者が登場し、決着が決まるまで。
「わぁ、モジュナだぁ」
観客席にいた少女が毛並みの良い可愛い系の怪人を発見し、もふもふしようと席を離れ始めた。ちなみにモジュナは悪者軍団にいるにも関わらず無害だったりする。
『モジュゥ』
人語を発しないが、近付く少女に嬉しそうに声を上げる怪人。
「うわぁ」
嬉しそうにする少女の横から大剣を持った筋骨隆々の厳つい鎧の男。
少女は自らに迫る危機に気付いていない。
「待てい!」
どこからともなく力強い警告の声。
怪人は思わず手を止め、声をする方向、高い位置にある給水塔の上を見た。
「みんな、上だ!!」
ウォーレンは、視線をさまよわせる子供達にびしっと指を指して位置を示した。
「己の力に絶対的な価値を置き、他者を踏み躙ろうとする。人、それを暴虐と呼ぶ」
高い位置から朗々とヴァルが登場。神々しい音楽と共に登場。
「天空より舞い降りし太陽の使者、スカイレッド!」
ここでヴァルは格好良くポーズを決め、
「貴様らに名乗る名など無い! 続け、スカイブルー!」
軽やかに怪人の前に着地する。それに続いてスカイブルーを演じるキリカも登場。
「さぁ、俺達が相手だ、来い!!」
ヴァルは二つの黒曜石の覇剣を構えた。
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