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リアクション
第三章 出撃、戦場はデパート屋内!!
溢れる怪人達、逃げ惑う人々で賑やかな店内。
「これは大変なことになってるね」
「……そうだな」
ルカルカとダリルは一通り店内を見渡した。
雑魚戦闘員の中に何匹か強そうな怪人の姿ががちらほらとある。
これ以上、大きな被害になる前に退治をしなければならない。
「よぉし」
ルカルカは敵の弱点把握のために看破のメガネを取り出し、装着。
「……あそこが賑やかそうだ」
ダリルは雑魚戦闘員の悲痛な叫びがこだまするある一角を示した。
「ルカ達と同じように店内に来てる人がいるかも。ダリル、急ごう!」
「……全く」
やる気に溢れるルカルカと違ってダリルは装置のために協力をしているだけなので二人の温度差がかけ離れてしまっている。
二人が到着した先にいたのは、強敵と雑魚に囲まれたスカイブルーとスカイイエローだった。ちょうど、ダリルが興味を持ったプロジェクターが大変なことになっていたが、この時は知る手段など何も無かった。
店内に到着した巽とティアは早速ヒーロー活動を始めていた。
「そこまでだ! テンペストニウム!」
大声を上げ、怪人達の注目を集める巽。
「空を駆ける一陣の風! スカイブルー!」
「空を貫く一筋の稲妻! スカイイエロー!!」
注目を集めてから巽、ティアの順で名乗りを上げ、最後は同時に
「大空戦隊スカイレンジャー、ただいま参上!!」
と声を上げ、戦闘に突入する。
「スカイレーザー! シュート!!」
ヒーロー物定番のレーザー銃として風銃エアリアルで雑魚を端から倒していく。
次々に叫び声と共に雑魚戦闘員は消えて行くも消えたら消えた分増えて一向に終わりが見えない。単調なことの繰り返しだが、巽の『歴戦の立ち回り』と『軽身功』によって素晴らしい殺陣となり一般人の中には逃げずに見ている者がいた。当然、デパート内の店や陳列物に被害が出ないように気を付けている。
ティアは強敵を巽に任せ、後衛のサポートとして増える雑魚戦闘員を一網打尽にすることにした。
「レッド、戦闘員は任せて」
「頼むぞ!!」
ティアは技名を叫ぶと共に『雷術』を使った。
「スカイサンダー! って、ブルー!? 避けて避けて!!」
通常なら問題無く敵に命中するが、今はヒーローショーの最中、自分の役であるドジっ娘イエローを見事に演じる。
「ちょ、お、おい」
強敵に集中しようとしたところに突然の雷。
慌ててドジっ娘イエローの攻撃を何とか避け、
「イエロー、ドジもほどほどにしろよ」
「ごめんごめん。今度は大丈夫だから」
リーダーらしく叱るレッドと可愛く愛嬌を見せるイエロー。
『貴様ら、無視しやがって』
なかなか相手をしてくれないことに苛立つ奇妙な顔をした怪人が剣を振り回し始めた。あまりにも無計算な動きに巽は労力を消費せず、難なく避けて『光条兵器』の十握剣を手にする。
「スカイソード!」
鮮やかな一撃を与えると同時に怪人の頭上に雷が落ちる。
「今度は大成功だよ」
雑魚を倒したイエローは『稲妻の札』で怪人にとどめを加えた。
『ぐぎゃおぉぉぉ』
奇妙な叫び声と共に怪人は消えた。
『兄者!!』
『許さねぇ』
先ほど消えた怪人とそっくりの外見をした二匹の怪人が武器を力強く構え始めた。
そこに新たな乱入者。
「そこまでよ。私はスカイレンジャーをサポートする正義の科学者ルカルカ」
割り込んだのはいいが周囲のざわめきに頭が真っ白になり、勢いに任せてヒーロー名を名乗るルカルカ。
「……言うに事欠いて……科学者とは」
隣に立つダリルは小さな声を洩らして呆れていた。
「覚悟!!」
そう言い、後に引けなくなったルカルカは、メタモルブローチで戦闘服にチェンジし、可愛らしくメガネを外す。作業はそれだけだが、そこはヒーローらしく演出は派手。ブリリアントリングの閃光を最高に使い、ぽいぽいカプセルからドラゴンスレイヤーを取り出し、格好良く決めポーズ。
「……おまたせ。か、彼は私の造った戦士ダリル」
ルカルカの華麗な変身を静かに眺めていたダリルに話の矛先が向けられる。
「げっ!」
予想外の設定に思わず愕然とするダリル。
もう突っ切るしかないルカルカは
「ダリル! 私と共にあいつらを粉砕しなさい」
何とか科学者らしく振る舞い、二匹の敵に『落雷の術』を使うルカルカ。メガネで見抜いた通り雷が弱点だったらしく少し焼け焦げたことに動揺して床に転げ回ったり、石像のように硬化している。
「……」
周囲の目がルカルカの紹介によってダリルに向けられている。ヒーローの二人もこちらを見ている。こうなってしまっては仕方が無い。
「……」
それらしく振る舞うことに決めたらしく、左手から『光条兵器』を生成。当然、店内への被害防止のため『真空波』でダメージ先を限定するようにしている。
「塵は塵に還れ」
冷徹な戦闘兵器らしく生成された剣で硬化している怪人の首を一撃で刎ね、転げ回る怪人には頭部を無慈悲に踏みつけて粉砕した。
『ぐうぇぁぁぁ』
二匹の怪人はあっという間に消えてしまった。
「見事よ、ダリル」
「……」
ルカルカの褒め言葉にも役のため無闇に言葉を発しないダリル。
「正義の科学者ルカルカ、よく来てくれた」
突然のアドリブにも動揺せずに上手く対応する巽。
「市民を助けるのは正義の味方として当然のこと」
こちらも見ている人に違和感を感じさせないように自然に振る舞った。心内は巽が声をかけたことによって自然な感じになったかもと安心していた。
ルカルカは変身を解き、見ている子供達にチョコバーと宣伝をした。しっかりと素顔を晒して。
「みんな、大丈夫だよ。今、他のスカイレンジャー達が屋上でたくさんの怪人達と戦ってるから応援してね。どうぞ」
「ありがとー」
「応援に行くよ!!」
子供達はチョコバーにかじりつき、嬉しそうに屋上に行った。
「……簡単に素顔を表して騒ぎにでもなったらどうするつもりだ」
ルカルカの様子を眺めていた冷静なダリルは、この騒ぎが誰の耳にも入るようなものになると考えていた。そんな騒ぎの中で目を引くようなことをすれば、絶対に話題になるはずだと。
「ブルー、怪人に襲われてる人がいるよー」
「今、行くぞ。科学者ルカルカ、戦士ダリル、互いに正義のために戦おう」
ルカルカと話して和んでいた巽はティアに呼ばれ、挨拶もそこそこに現場に向かった。
「……ここは二人に任せて大丈夫みたいだから、一度屋上に戻ろう」
「そうだな。装置が気になるからな。何も起きてなければいいのだが」
二人は一度、屋上に戻ることにした。
残りの怪人達はスカイブルーとスカイイエローに任せても大丈夫だろうと。
現場に駆けつけた巽は、
「スカイストーム!!!」
怪人達の攻撃から一般客を助けるために『風術』を使い、自分達の方に引き寄せ、救出した。
それと同時にティアが放った矢が見事に怪人達を貫き、倒していく。
「それっ!! 今度はドジをしなかったよ」
「見事だ、イエロー。今のうちに早く安全な場所へ!!」
一般客達は礼を言い、素早く避難をした。
ルカルカの言葉通り、二人はあっという間に怪人達を一掃した。
「ブルー、他に避難が遅れている人がいないか探すよ!」
ティアは静かになった店内を見渡しながら巽に言った。
「そうだな」
あまりにも混乱していたので逃げ遅れや倒し忘れている怪人がいてもおかしくはない。完全に終わったと分かるまでがヒーローの仕事だ。
二人は、安全確認に急いだ。そのおかげで袋小路の持久戦を終わらせることが出来たのだった。
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