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THE 合戦 ~ハイナが鎧に着替えたら~

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THE 合戦 ~ハイナが鎧に着替えたら~

リアクション

「レティシアさん。張飛さんは、一騎打ちの後、激戦を続け銃弾まで食らっていますからライフはもうほとんど残っていません。仕留めるのでしたら今ですね」
 レティシアのパートナーのミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が、潜ませていた別の忍者部隊をけしかけてから言う。忍者部隊は、張飛軍団を翻弄しながらよく戦っていた。
 忍者軍団の後方で作戦を練ってレティシアを支えていた彼女は、移動本部として動きながら戦況を綿密に分析していたのだ。
「火計を使っている部隊もいますし、のんびりしていたら森は火に包まれて出られなくなってしまいます。長居は無用です。早く決着をつけましょう!」
「虎の子の忍者軍団も、かなり減ってしまいましたしねぇ。ここで張飛さんを倒しておけば、金星なのですよぅ……」
 レティシアは決意すると、もう一度張飛に一騎打ちを挑むことにした。もう、忍者軍団なのか武闘派集団なのかわからないが、決着をつける時が来たようだった。
「張飛さんっ! もう一度勝負なのですよぅ!」
「おおっ!」
 張飛が、レティシアに向き直る。間髪いれずに激しい戦いが始った。

張飛・翼徳VSレティシア

LIFE◇LIFE

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「あれだけ鉄砲隊から総攻撃を受けてまだライフが残っているって、どんな身体しているんですかぁ」
「うおおおおおっっ!」
 張飛が、これまでにない激しい反撃を見せてきた。ドドドドドーーーン! お互い、渾身の一撃が炸裂する。

張飛・翼徳VSレティシア

LIFE◇LIFE

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◎◎◎ 勝者:レティシア

「ぐああああああ、無念だ! すまねぇ、兄者……ぐふっ!」
 地響きを立てて、とうとう張飛は倒れた。
「張飛さんのライフゲージをたった二つ削るのに、あちきもこんなにダメージを……」
 どれだけ強く設定されていたんですかぁ、とレティシアも深いダメージを負ってその場でひざまづく。
「はぁはぁはぁ……」
「やりましたね、レティシアさん。これで勝負ありです」
 ミスティはレティシアを助け起こした。
「ぐぐぐ……、まだだ。まだ俺は戦える……ぜ!」
 三国志の英雄は、ライフがゼロになっても立ち上がった。すでに人間の域を越えていた。ただ意識は朦朧だが闘争本能だけで突き進もうと足を踏み出す。
「ぐぐ……、俺は負けん。俺は負けんぞ……!」
「……もうあまり無理はしないほうがいい。これ以上お前たちの勝ち目はない」
 張飛の視線の先で、道を塞ぐように立ちはだかったのは、さっきから張飛軍団の歩兵たちと戦っていたセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)だった。
 シャンバラ軍として参戦していた彼女は、500の矛槍歩兵で行く手を阻んでいた。
 張飛が倒れたため、ひどく混乱している張飛軍団を抑えるように進撃する。
「貴様……っ!」
 張飛は焦点の合わない目でセリスを睨みつけた。巨大な鋼矛を気力だけで振り上げ、よろよろと迫ってくる。
「その裂帛の武勇、さすがは張飛殿じゃのう。あっぱれじゃわい」
 セリスのパートナーの玉藻 御前(たまも・ごぜん)が歩み出てきて微笑む。
「お主が誠に万夫不当の豪傑ならば、策と寡兵で万の大軍に挑むその心を知っておろう? 倒れてなお戦おうとするおぬしのその意気も、わらわどもとも通づるものがあると思うがのぅ……?」 
 どうじゃ、ここらへんで手打ちにせぬか? と手を差し伸べる御前に張飛の動きが止まる。
 見回す彼は、周りがすでに炎で包まれているのを確認して、ぐううう……と悔しそうにうめいた。
 彼の率いていた軍団は多くが火計によって飲み込まれ壊滅状態になっている。残った兵士たちも、驚愕と恐怖にどうしていいかわからないようだった。
「火を放ったのはわらわたちじゃ。お主がここで降ってくれると、これ以上被害も出ずにすむのじゃがのぅ……」
 ゆっくりと説得を試みる御前に、もはやここまでかと張飛はがっくりと膝をついた。
「負けだ。好きにしろ」
「うむ。潔さも見事じゃ」
 御前は頷いて張飛の手を取る。
「火計から逃れた投降兵は、そのまま受け入れろ……」
 セリスは、張飛軍の降伏を呼びかけ、無事だった兵士たちを救出し始めた。
「ぼ、ボクのこと、忘れてないかな……」
 鉄砲で撃たれ全身穴だらけになりながら直江兼続がずりずりとこちらへ這い寄ってきた。肌の色がすでに死人だ。どうしてこんなになるまで放って置いたんだ。いや、それ以上に生きているのが不思議だった。
「さあ、逝こう、兄弟。ボクたちの……愛の園へ……」
 最後のシーンを見届けると、ガクリと彼は逝った。
「逝くな!」
 セリスが抱き起こす。
 直江兼続の表情はとても愛に満ち溢れていたという。

▼張飛翼徳、戦闘不能。
▼マイキー・ウォーリー、戦死。
▼張飛軍団:3000→1000。
▼レティシア忍者軍団:1000→200。



「悪い子はいないですかぁ。火をつけている悪い子はいないですかぁ……」
 ルーシェリアの軍勢は、恭也の部隊を蹴散らした後も、森の中を探索していた。
 あちらこちらで火の手が上がり、森は炎に包まれ始めていた。
 どうやら多くの部隊が火攻めを選んだらしい。張飛もともかく、自分たちもうかうかしていると、大火災に巻き込まれかねない。
「おお、ルーシェリア殿。キミにこの私を助ける栄誉をあげるから、早く助けてくれなさい」
 張飛に吹っ飛ばされて伸びていた禰衡が森の奥からよろぼい出てくる。煙を吸って苦しそうだった。
 その物言いにちょっとイヤな感じはしたが、根の優しいルーシェリアは治療をしてやる。
「これは、もう終わりですねぇ……」
 辺りを見回しながら、ルーシェリアは残念そうに言う。大して戦うこともなく、森での合戦は幕を閉じようとしていた。
「ヒャッハー!」
 ガサガサガサ……。
「……?」
 ふと、おかしな声が聞こえたような気がして、ルーシェリアは振り返った。
 生い繁る木々、深い草、そして、忠実に待機する軍団が控えているだけだ。
「……そもそも、あの猪突猛進野郎だけで戦おうというのに無理があったのだ。やはり、義兄弟がいないと何も出来ない、モーホー男……」
 禰衡は、ぶつぶつと呟き続けている。
「ヒャッハー!」
 ガサガサガサ……。
「……?」
 また同じ音が聞こえて、ルーシェリアはもう一度振り返る。
「何だ、草が揺れ動いただけですかぁ」
 彼女は退却の準備を始めた。張飛が敗れた以上、もうここにいる必要などない。さっさと帰るとしよう……。
「……ちょっと待つのですぅ。そんな色の草があると思っているのですかぁ」
 ルーシェリアは、すぐ傍で草のフリをしていたモヒカンの兵士の髪の毛を掴みあげた。
「ひゃっは!?」
「どうしてモヒカンなのですかぁ?」
 彼女が首を捻ったとき、ガサガサガサと草の音が大きくなり、モヒカンが集団で近寄ってくる。
 指揮していたのは、バグに取り込まれていた大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)だった。
 彼は、武将ではなく、張飛の部下の一人である足軽組頭として配置されており、近付いてくる来る敵を待ち構えていたのであった。
 その足軽なんだが、全員なぜかモヒカンだった。バグの仕業でこの世界に呼ばれたらしい。髪の毛が草むらに擬態して隠れるのに適しているから(?)。初耳だった。
「勝ったら敵の持ち物を略奪していいぞ!」
 剛太郎の言葉に、モヒカンたちはヒャッハーと歓声を上げる。一気にやる気を出して、ルーシェリアと禰衡の、総計6000まるまる残っている兵たちに襲い掛かってくる。
 10人で……。
「……」
 ルーシェリアは目を疑った。そう、出現したのは剛太郎とたった10人のモヒカンたちだった。
 きっとバグの仕業であろう、剛太郎は他の契約者たちとは違い武将として設定されていなかった。ただの張飛軍の足軽組頭である。従って、彼は3000の兵を指揮する立場ではないのであった。
 モヒカンたちの装備はいつもの西洋風の衣装に棍棒や剣,斧など。これまでの武将たちとは異次元の弱小部隊であった。
「え、えっと……倒しちゃっていいんですよねぇ、これ……?」
 ルーシェリアは戸惑う。この兵力差に健気に挑んでくるモヒカンが可哀想に思えた。
「ここまで来たらやるしかないでしょ! 全員、行きなさい!」
 繁みの反対側からは、剛太郎のパートナーの鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)も姿を現した。彼女もまた、剛太郎と同じく足軽組頭としての配置である。
 望美はイコンの甲冑{ICN0004158#フライトスター}を装着していた。少々いかついデザインは、まあいいとして、せっかくの甲冑を、剛太郎の指示により草で偽装する事に少し不満を抱いていた。さらには、配下のモヒカン足軽たちがヒャッハー! 言いながら望美のナイスバディをギンギンに見つめているのだ。彼女のテンション下がっていくのが手に取るようにわかった。
「私、この部下たちちょっとイヤかも。だって、私のこと変な目で見てくるんだもの」
「ヒャッハー、森林にたわわに実るスイカ(?)を発見したぜぇ。誰が植えたんだ、これ?とにかくこれより収穫に……ぎゃあああああっっ!」
 望美の大きな胸にむしゃぶりつこうとして飛び掛ったモヒカン足軽の一人が、容赦なくボコボコにされ、森の肥やしとなった。
 望美の配下のモヒカン足軽は10人から9人に減ってしまった。
「ああ……」
 と剛太郎は、天を仰ぐ。どうするんだ、これ? シャンバラ軍に勝てるのか……?
「大丈夫じゃ。わしが教えたことをよく思い出すといいぞい。自軍が負けたときには速やかに逃げることじゃ」
 近くで心強く励ましてくれたのは、剛太郎のパートナーにしてご先祖様の英霊大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)だった。
 何しろ、藤右衛門は、生前は平時は農耕で身を立て、有事の際は武士となる農耕武士であった。なんでも、関ヶ原の合戦では西軍として参戦したという華々しい経歴も持っているとか。戦国の経験においては頼りになるのであった。
「最初から逃げる算段でありますか……」
「ばか者。敗走する敵の雑兵を追撃しないとも教えてあるじゃろ」
「ヒャッハー、逃げる敵を追わないと、略奪が出来ないぜぇ! 大量だぜぇ!」
 藤右衛門の配下のモヒカン足軽は早くも勝った気分である。勝ちもしていないのに皮算用するモヒカンたちを、藤右衛門は隊長らしくビシリと止める。
 彼も10人のモヒカン兵士たちを率いていたが、剛太郎たちよりワンランク階級が上の足軽頭であった。30人(→29人)の精鋭部隊を率いる指揮官である。生前の経験を生かしてのことだった。
「この雰囲気、戦場の張り詰めた空気……、ヴァーチャルと言えど妙に懐かしいわい」
 かつてを懐かしむ、藤右衛門。
「今こそ、わしらの武勇と気概を見せるときじゃ! 全員行くぞ!」
 彼は知っていた。大軍と戦う方法を。その采配、しかと見せてやろう……!
 おおおおおっっ! と雄たけびを上げるモヒカンたち。
 6000対29の絶望的な戦いが始った。
「ヒャッハー!
「……」
 すぐに終わった。
「今日のところはこの辺で勘弁しておいてやるぜ。覚えてろ……!」
 剛太郎たちは、捨て台詞を吐いて逃げて言った。その後、この世界で彼らの姿を見たものはいなかったという……。
「……」
 いや、本当に……、なんだったんでしょうかぁ、とルーシェリアは首をかしげた。

 かくして、森の中での張飛との戦いも決着がついたのであった。
 禰衡は何のために出てきたのかわからないくらい役に立たずに去っていった。

 ところで、アレ……? 何か忘れてない……?

▼藤右衛門モヒカン歩兵部隊:29→0

◆マイキー・ウォーリーのデータが抹消されました。

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