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リアクション
審判:紫月 唯斗
○第四試合
緋柱 陽子 対 葛城 吹雪
「あんたは男はいるでありますか?」
毎度お馴染みになった質問だが、陽子もまたかぶりを振った。
「そうでありますか――」
「女ならいますが」
陽子は緋柱透乃の妻なのである。
「ならばここで死ぬがいいであります!!」
嫉妬の力【エンヴィファイア】がどす黒い炎となって、吹雪に纏わりつく。だが、陽子は動じない。錘代わりのゴムのついた縄を投げつけ、吹雪の首に絡ませると引っ張った。吹雪は勢いよく、鼻から地面に突っ込んだ。
「ぎゃ! な、なかなかやるでありますね!」
すぐに起き上がった吹雪は、鼻血を出しながらも言った。
「ですが、テロリストは一人で死なないであります!!」
吹雪は狙撃銃を構えようとしたが、そんな余裕を与える陽子ではなかった。いったん解いた縄を、再び投げつける。吹雪の顔面目掛け、ゴムは勢いよく飛んでいく。
「きゅ〜……」
二度も急所を攻撃された吹雪は、鼻血を噴き出しながら気絶した。
勝者:緋柱 陽子
○第五試合
ルカルカ・ルー 対 カタル
一回戦から酒を飲んで観戦していたカルキノスは、敗退した淵が隣にやってきたときには、既に相当できあがっていた。
「おー、こっちだこっち」
「おまえ、これからルカが試合だというに……」
「ちゃんと応援してるぞー。お前らのときも、ちゃんと応援してたぞー。それより食え食え。飲め飲め」
「食えって、もうほとんど空ではないか」
「あんまり美味かったもんでな」
ダリルの作った弁当は、通常の五人前はあったはずだが、弁当箱の端にちょっぴり卵焼きが残っているだけだ。一つはハイナに分けたというから、四人前を一人で平らげたらしい。
「試合はまだ始まらねぇのか? よしっ、それじゃ俺が暇潰しにいいもん見せてやろう」
カルキノスはすっくと立ち上がり、【ドラスティックフォーゼ】を始めた。
「ばかこら、よさんかっ!」
炎でも吐き始めたら事だ。淵は慌てて、弓で殴りつけた。バシーン! と実にいい音が響いて、カルキノスはその場に崩れ落ちた。
「よし、寝ておれ」
ちなみにこのやり取り、周囲の客には大層受けたようである。
「久しぶりね、カタル」
ルカルカとカタルは、かつて共に戦った仲である。
「その節は、お世話になりました」
「立派になったじゃない。嬉しいわ。でも勝負は勝負。手加減はしないわよ?」
「望むところです」
ルカルカは右半身を前に、左手の木刀は下げ、カタルに近づいて行った。カタルは左の木刀を警戒して、一定の距離を保つ。
たんっ、と地面を蹴り、素早い動きでルカルカは右の木刀を繰り出した。まずは足元、そして鳩尾。カタルはどちらの攻撃も見極め、棒で弾く。二撃目を弾かれたルカルカは、くるりと回転し、その勢いを以て左の木刀で薙いだ。
だがカタルはそれも見越していた。カタルがいない。木刀は見事に弧を描いて空振りした。気が付いたとき、カタルはルカルカのすぐ眼の下にいた。
「しまっ――!」
しゃがみこんでいたカタルが、勢いをつけて飛び上がった。棒の先が、ルカルカの顎を突く。その一撃で、ルカルカは意識を失ったのだった――。
勝者:カタル
○第六試合
正義の騎士セレーネ 対 北門 平太(宮本 武蔵)
二回戦を不戦勝で突破した平太(武蔵)は、かなり不機嫌だった。一方のセレーネは、ややテンションが下がっている。なぜとなれば、奇稲田神奈もペルセポネ・エレウシスも既に敗退しているからだ。
「これ以上、戦う意味があるのでしょうか……?」
「こら待て。棄権なぞしたら、ただじゃおかんぞ?」
「というと?」
「そうだな」とちょっと平太(武蔵)は考えた。「うむ、おりゅんぽすとやらに代わって、俺が葦原を支配してやる。どうだ?」
「そ、そんなことはさせません!」
セレーネは慌てて木剣を構えた。気合十分である。結構結構、と平太(武蔵)は笑った。
セレーネは木剣を振り回した。間合いを掴み損ねたのか、平太(武蔵)の額に一文字の傷が走る。しかし平太(武蔵)は意に介さず、木刀に冷気を纏わせた。セレーネは木剣ごと吹き飛ばされる。腕が凍りつき、うまく動かない。
「正義のためです!」
それでも、セレーネはくじけない。二人は同時に、剣を振るった。
木剣と木刀がぶつかりあい、弾け飛んだ。二人もまた、衝撃で吹き飛ばされる。
「武蔵さん!」
再び、声援が飛ぶ。
平太(武蔵)は、その場で堪えていた。セレーネは倒れ、そのまま起き上がることはなかった。
尚、ドクター・ハデスは遂にこの正義の騎士の正体について知ることはなかったという。
勝者:北門 平太(宮本 武蔵)
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