リアクション
「さて今回の優勝者でありんすが」
決勝進出者が三人というのは、初めてではない。だが、全員が一勝ずつというのは、四回目にして初の出来事だった。
ハイナ、房姫、唯斗、プラチナムの四人はどうしたものかと相談したが、
「全員優勝でいいんじゃないの?」
という唯斗のあっさりした提案が、採用されることになった。
「わっちは嬉しいでありんす」
ハイナが突然、泣き出した。
「四度目の御前試合で、遂に優勝者が明倫館! それも三人とも! こんな嬉しいことがありんしょうか!?」
そーいえばそうだった、と唯斗は思い返していた。過去三年、明倫館の生徒が全滅するたび、ハイナのイライラは八つ当たりとなって、周囲の人間にまき散らされてきたのだ。
それを考えると、この三人には本当に感謝してもしきれない。
「これで、副賞も役に立つでありんす。明倫館の食堂で使える食券半年分でありんすよ!」
おおっ、とどよめきが広がる。
セリスは単純に有難がったが、マネキ・ングは早速、転売を考え始めた。マイキー・ウォーリーは仲間が愛の勝利を収めたことに喜び、冷 蔵子は――食堂で冷蔵庫の一部と化していた。
陽子は大食いなので、特に喜んだ。緋柱 透乃と霧雨 泰宏も、陽子の勝利を称えた。優勝を意識して戦ったわけではないが、やはり勝てば嬉しいものだ。
平太は――まだ病院なので、この場にいない。ベルナデットも付き添っているが、副賞の話を聞けば喜ぶだろう。
「さて今回は、もう一つ副賞がありんす!」
唯斗とプラチナム、それに房姫はぎょっとした。そんな話は聞いていない。またぞろ、キスとでも言い出すのだろうか? 会場はまたざわめき始めた。
ふふふ、とハイナはまったくもって嬉しそうな笑みを漏らす。この素晴らしいアイデアを出したのは、ルカルカ・ルーだ。後で礼を言う必要があるだろう……。
たっぷり一分ほど待って、自分の今のセリフがどんな効果をもたらしたかを確認すると、ハイナは言った。
「優勝者三人には、エキジビジョンマッチとしてわっちと戦う権利を与えるでありんす!!」
歓声と叫び声が上がった。前者は主に観客席から、後者は参加者からである。明倫館の生徒は同情めいたため息を漏らした。ハイナが言い出したからには、確実に実行するだろうという、諦めでもあった。
しかし、意外にも当のセリスと陽子はやる気満々だ。武道を嗜む者にとり、ハイナ・ウィルソンは一度は戦ってみたい相手であった。
「試合は終わったばかりです。選手たちは疲労困憊。一人は病院にいるぐらいですよ。無理でしょう」
房姫が柳眉を顰め、やんわりと忠告する。
「それもそうでありんすね」
ハイナは頷いた。
「全員、明倫館でありんすから、予定が組み易いでありんす。三人の体調が万全になり次第、特別試合を行うでありんすよ!」
やんわりとした忠告は、全く効果がなかった。
観客たちも盛り上がり、後日、三人対ハイナの試合が行われることになったのだが、それはまた別の話である。
優勝 セリス・ファーランド (葦原明倫館)
緋柱 陽子 (葦原明倫館)
北門 平太(宮本 武蔵)(葦原明倫館)
お待たせしました。本当っに久しぶりの蒼空のフロンティア&一年ちょいぶりの御前試合でございます。
毎度のことですがご説明しますと、先にじゃんけんで勝負を決め、それに合わせて戦闘シーンを書いています。防御しているだけなのに勝ったり、指定していない場所を攻撃して勝ってる、というのはそういう理由です。
また、試合の順番はほぼランダムです。一回戦に関しては、パートナー同士がぶつからないように移動させましたし、希望のNPCを配置したりはしましたが。
NPCは相手の「手」を見ずに適当にキャラの性格などに合わせて選んだのですが、なんか結構勝ってしまいました。びっくりです。カタルと平太があんまり勝つんで、ぶつけ合って潰すことにしたり。
細かいことは本編をご覧いただくとして、最後の試合としてはまあいい結果に終わったんじゃないかな、と思っています。
なお、今回のみ、称号が「覇者」になっていませんが、それは試合結果のためです。
さて次回は再び「三千界のアバター」を予定しております。後一回ぐらい、こちらでシナリオを出せればと考えていますが、どうなりますでしょうか。
その際は、ぜひとも皆さん、ご参加ください。お待ちしております。