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第四回葦原明倫館御前試合

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第四回葦原明倫館御前試合

リアクション

○第十二試合
ニケ・ファインタック(にけ・ふぁいんたっく)(葦原明倫館) 対 セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)(シャンバラ教導団)

 ニケは試合場に出ると、観客席を見上げた。後ろの方にいた北門平太と目が合い――とニケは思った――、彼はぎこちない笑顔で手を振った。その横にはベルナデット・オッドが座っている。
 パートナーであるメアリー・ノイジー(めありー・のいじー)を元に戻す術を探し続け、もうどれだけの時が経ったろうか。同じように身体を乗っ取られたベルナデットは、完全な元通りと言えぬまでも、ああして平太の横にいる。
 羨ましい、と思わないでもない。メアリーもいつか――。
 フッと微笑み、ニケはセレアナに向き直った。ヘッドホンを外し、
「お手柔らかに。私、弱いですから」
「こちらこそ」
「でもまぁ、奮起してやろうとは思っているんですが」
 セレアナは、その言葉に表情を引き締めた。
「ファイッ!」
 唯斗の合図と同時に、ニケがするすると距離を縮める。セレアナは引き金を引いた。二人の足元で、銃弾が木刀で弾き返される。
 ニケはそのまま突進し、セレアナの服を掴もうとした――が、生憎彼女はホルターネックタイプのメタリックレオタードの上に黒いロングコートを羽織っているだけだった。セレアナは掴まれたコートからするりと身を抜け出し、銃を撃った。
 ニケの額にゴム弾が当たり、塗料が付く。ニケは次の攻撃に備えたが、発射された弾はニケの足元に命中し、たちまち腰の辺りまで凍りついた。ニケは動かぬ足をもつれさせ、そのまま勢いよく転んでしまった。
「勝負あり!」
 唯斗の手が上がった。
 ニケは座り込んだまま、上を向いてふうと息を吐いた。目の端に平太たちの姿が映る。
 もし優勝できていたら――。
 もし、これがロマンス小説なら――。
 自分は、平太に言ったのだろうか。
「お付き合いしてください」
――と。

勝者:セレアナ・ミアキス


○第十三試合
フィーネ・アスマ(葦原明倫館) 対 麻篭 由紀也(あさかご・ゆきや)(葦原明倫館)

「にーさま!」
 目を輝かせながら、フィーネは観客席の東雲秋日子と遊馬シズに手を振った。シズはぎこちない笑顔で振り返す。
「もう少し、いい顔で応援してあげなよー」
「勝っちゃったら、まずいじゃないか……」
「でも私たち、二人とも負けちゃったんだよ? これでフィーネさんも負けたら、全員一回戦負け……」
 秋日子はぶるりと震えた。
「明倫館の生徒として、それはヤバイ!」
「いや、でもなあ……」
「いいからほら、にこやかに応援して!」
「は、はい……」

 シズの笑顔に、フィーネは天にも昇る心地になった。その顔のまま由紀也に向き直り、木刀を突きつける。
「にーさまとのデートのため、負けてもらいます!」
「え? いや、デートは羨ましいし負けてあげたい気がしないでもないけど、それは困る!」
 しかもそんな理由で負けたら、きっと瀬田 沙耶(せた・さや)に叱られる。
 だがもちろん、フィーネはそんな由紀也の事情など知ったことではない。
「行きます!」
 猛スピードで突っ込んでくるフィーネに、由紀也は慌てて長銃を構えた。発射された弾は、あっさり木刀で弾かれる。
「覚悟!」
 由紀也の脳天目掛け、木刀が振り下ろされるが、彼は咄嗟に銃でそれを受け止めた。更に蹴りを入れようとしたが、それは後ろに跳び下がることで避けられてしまった。トンッ、トトンッ、とフィーネは軽やかに間を離していく。
 だがそれは、由紀也の間合いであった。
「悪いね」
 構え、照準を合わせ、引き金を引く。狙い澄ました一撃が、フィーネの胸に命中する。
「それまで!」
「フィーネさん!?」
 衝撃で目を回したフィーネを解放しながら、これでデートせずに済んだと胸を撫で下ろすシズであった。

勝者:麻篭 由紀也


○第十四試合
緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)(葦原明倫館) 対 マイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)(葦原明倫館)

「【荒れ狂う鎖と狂刃の使い手】緋柱陽子対【メテオライトを呼ぶ男】マイキー・ウォーリーだあああ!」
 唯斗が叫んだ。陽子は、丈夫な縄にゴム――といっても、ゴム弾と同じで当たればかなり痛い――を先端につけた手製の武器を手にしていた。対するマイキーは、素手である。
「ボクの武器は愛さ!」
とはマイキー自身の話であるが、正確に言うならば、彼の武器は「足」だった。
 くるくると回りながら近づき、その勢いで蹴りを入れる。
 だが最初は、陽子の武器の間合いが広く、近付けなかった。向かってきたゴムが彼の腰を強かに打つ。マイキーは踊るように移動し、陽子を攪乱した。次に飛んできたゴムを避けると、思い切り彼女の脛を蹴る。
「ッ!!」
 陽子は顔を顰めながら、武器を思い切り叩きつけた。ちょうどマイキーの二打目が、そこでぶつかり合う。
「制限時間、そこまで!」
 唯斗が二人を下がらせる。結局時間内に勝負はつかず、二人ともに二回戦進出となった。

引き分け