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【蒼空・三千合同】鍋会にいらっしゃい

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【蒼空・三千合同】鍋会にいらっしゃい

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5.川で一息

「鍋会っつーことは、アレだな、アレ!」
 見た目も涼しげな川のほとりで、ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)は何やら熱く燃えていた。
 凸型の独特な形状をした鍋を熱し、ラム肉、マトン肉、野菜とたれを用意して……
「そう、ジンギスカン!」
「……焼き肉じゃない?」
「鍋ですからー! ジ・ン・ギ・ス・カ・ン・な・べ、ですからぁ!」
 ぼそりと突っ込むソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)に殺意を込めたガンを飛ばす。
 じゅうじゅうと熱せられた鍋の音を聞いたハイコドの目がぎらりと光る。
「そら、中央の山の部分に肉を! 周りの凹の部分には野菜を敷き詰めろ! 肉を食いながら肉汁とタレで野菜を煮込め! もやしは茶色く柔らかく硬さが無くなったら食い頃だ! 肉ともやしを米の上に乗せて一気に頬張れ!!」
 箸を持つソランとニーナ・ジーバルス(にーな・じーばるす)たちにばしばしと指示を出す。
 そう。ハイコドはジンギスカン奉行だった。
「ああ、忘れちゃいけねぇ、特製ジンギスカンたれ!」
 息つく間もなくジンギスカンを堪能させられる。
(鍋会とくれば、俺の使命、ジンギスカン鍋の旨さを世間に広めるとゆう目的が果たせる!)
 手を止めることなく熱い想いをたぎらせる。
 そしてふと見れば、鍋を頬張るパートナーの姿。
「そーいやソラ、お前なら闇鍋の方に行くと思ったが……」
 ふとした疑問をぶつけたのを、ハイコドは大変後悔することになる。
 ソランは口の中の肉を堪能しながら平然と答えた。
「んー? 聞きたい?」
「……いや、いい。よく思いとどまってくれた」
 ソランの次の台詞が容易に推測でき、慌ててそれを止めるハイコド。
 こいつが参加しなくて本当に良かったと、改めてハイコドは思うのだった。
「ま、いいから川だ川ー! 陽菜都も行くよー!」
「ひゃあっ!?」
 ジンギスカンでの腹ごしらえが住むと、ソランは遠山 陽菜都(とおやま・ひなつ)を誘い川に飛び込んだ。
「ふふ、涼しい……」
 それを見ながらニーナは、川と氷を使った自作の涼み場で目を細める。

「ううううううう」
「味付けはあっさり目の塩炊き風で、締め用にうどんと冷や飯も用意したし……」
「ウうううううううう……」
「よし、ボリュームたっぷり、パラミタの山海珍味がたっぷり入ったパラミタちゃんこ鍋の、できあがりー!」
「はぐうううううううう……」
「……って、どうしたんですか? ずうっとそんな調子で……」
 ハイコドと同じく鍋作りに勤しんでいた 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)に声をかける。
「だって、だってだって!」
 マリエッタは川を指差した。
 そこには、水着を着て遊ぶソランと陽菜都。
「鍋をやってるのよね? よかったらこれ、入れてもらえないかしら?」
 更にはそこに綾原 さゆみとアデリーヌ・シャントルイユが訪れた。
「闇鍋でもないのに、材料だけ持って来てしまって」
 アデリーヌが持ってきたのは春雨と白滝。
 さゆみが持ってきたのは……かき揚げ。
「かき揚げを入れる鍋なんて、なかったかしら?」
 味噌煮込みならギリギリセーフか。
「うーん、よく分かりませんが、使わせていただきますね。ありがとうございます」
 さゆみから具材を受け取ったゆかりがマリエッタを見ると。
「ううううううう……」
 再びの、呻き声。
「どうしたんですか?」
「だってだってだって!」
 マリエッタが川で遊ぶ人々を、そして蒼空学園の女子水着と白のクロスワンピースに身を包んださゆみとアデリーヌを指差す。
「みんなみんな水着着て、『ボン・キュッ・ボン』なのに自分は……」
 自身の水着姿を見る。
 言うほどまっ平らでもないその体型は、しかし19歳なのに女子中学生体型だと感じるマリエッタのコンプレックスとなっていた。
「い、いつかきっと胸だって大きくなるんだから!」
 どぼーん!
「はいはい」
 涙にむせびながら、川へと飛び込むマリエッタ。
「川から上がったら、アイスも用意してありますからねー」
 アデリーヌが声をかけた。
「やっぱり、川があるなら泳いでみなくちゃね」
「そうだな」
 さらにそこに、レイナ・ハイゼルとレオン・クラースナヤまでやって来る。
 ちなみにレイナは豊満な身体を布地の少ない白いワンピースで包み、レオンはやや小さめに見える黒いビキニに身を包んでいる。
 マリエッタが見たら、唸り声が止まらないだろう。
「ほら、雅羅。後片付けはオレがやるから、遊びに行っておいでよ!」
「そう……? じゃあ、お言葉に甘えて」
 更にはそこに、想詠 夢悠から渡されたスクール水着……は断って、購入した水着を着用した雅羅までやって来る。
 皆で楽しい川遊びタイムが始まろうとしていた。

 ――それがまさか、あんなことになろうとは……

 だーばん。
 だーばん。
 だーばんだーばんだーばんだーばんだーばんだーだんだーばんだーばん。
 謎のBGMと共に、川で遊んでいる少女たちに近づく影一つ。
「がおー!」
 水の中から奇声と共に何者かが飛び出した。
「ヴァ〜!」
 白いロングTシャツを身に纏い、黒い髪をふり乱したその姿は一瞬ホラー映画の登場人物かと見紛うほど。
「へ……」
「わ」
「きゃぁあああ!」
 一瞬呆気にとられた少女たちは、襲い掛かる影にちりぢりになって逃げだした。
(水着はー、脱がす! 女の子はー、泣かす!)
 川から出現した影の正体は、霞 蒼だった。
 彼女は鍋会が始まった早々から川の中にスタンバイして、今のこの時を待っていたのだ。

「きゃぁあああ、陽菜都、逃げてぇええ!」
「えっ、えっ、やぁあっ!」
「こら、ソラン……きゃっ」
「いただきー!」
 陽菜都を庇うふりをしながら、ソランはどさくさに紛れて陽菜都の胸を揉みこむ。
 更には止めに入ったニーナも揉み倒す!

「や……っ、これはさすがにNGよー」
「しょうがないわね……後でじっくり洗ってさしあげますわ」
 新曲を披露しようと準備していたさゆみは蒼からどろりとした白い液体(米のとぎ汁)をかけられ、頭からつま先まで液体だらけになる。
 そんなさゆみをアデリーヌが慰める。

「ひゃぁあ、何か足に触った! あ、やっ、もっと上にまで……」
「ご、ごめんなさい、それは私の手、で……」
「ちょっと、水着……脱がさないで!」
 慌てて逃げようとしたマリエッタとゆかりは絡み合い、雅羅は水着を奪われそうになる。
(おぉお、シャッターチャーンス……じゃない! た、助けなきゃ!)
 デジカメを構えていた夢悠は慌てて救助に駆け付ける。

(くくくくく……次の獲物は……はっ!)
 蒼が次に向かおうとしたのは、レイナとレオン。
 しかし蒼の悪戯の手が、一瞬止まる。
 僅かな布地から零れんばかりのレイナの肢体。
 黒い布地が際立たせる、レオンの双球。
(これは……少しでも触れたら大変なことになる!)
「皆、何を慌てているのかしら?」
「さあ……」
 蒼が躊躇している間に、二人は何事もなかったかのように去ってしまったのだった。

 蒼はその後もしばらく川で暴れまくり、やがて川の周囲には誰も寄り付かなくなった。
「はー、遊んだ遊んだ……っと?」
 堪能した蒼は気づいた。
 間もなく、帰らなければいけない時間だということに。
「あ、ちょっと、まだ鍋も何も食べてないのに……」
 早くしなければ、ゲートが閉じてしまう。
 色々遊び呆けていたせいで、蒼は鍋を食い損ねてしまったのだった。