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リアクション
7.闇鍋 ――材料投入2
「待て、待つのだ! 我は、この鍋奉行のマネキ・ングであるぞ!」
傍若無人な材料投入にたまりかねたのか、鍋奉行を自称したマネキ・ング(まねき・んぐ)が前にしゃしゃり出る。
「この鍋と我の前では、世界に我より尊い存在はおらぬ! 皆々、図が高いわ!」
「いやマネキ、何勝手に名乗ってるんだ」
どこからどう見ても立派な招き猫のマネキの宣言に呆気にとられている面々をぬって、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)がマネキの首根っこを掴んで引き戻そうとする。
「ぐおお……待て、まだ食材を……! 食材は、重要だ! 特にアワビとか……アワビとか……」
だぼだぼだぼーん。
セリスに引きずられながら、マネキはなんとか食材を鍋に入れる。
自家製の養殖アワビ。
アワビアワビアワビ。
なんだかんだでいい出汁も出るし美味しいそれは、全員に歓迎された。
マネキとセリスが引っ張り合っている間に、自分もひとつ……とマイキー・ウォーリー(まいきー・うぉーりー)が前に出る。
「愛の戦士であるボクが、皆の為にとっておきの鍋の食材を提供するよ!」
言うが早いかマイキーは鞄の中から大きな箱を散り出した。
「オゥッ! ボクがこの時の為に、大事に取っておいたこの愛が溢れる一品の出番だね!」
それは、マイキー曰く禁断の愛の塊……マイキーが以前とある人物から貰ったクリスマスケーキ!
愛の全知全能の神様も大絶賛のコレを、投入ー!!
だぼーん。
賞味期限的にも鍋的にも危険極まりない物質が投入された。
「全く、好き勝手に食材を入れて…… 俺は、せめて犠牲者があまり出ない事を祈らせてもらおう。そして、食材は……」
セリスが持参してきたクーラーボックスの中を見る。
ぎっしり、アワビが詰まっていた。
「なんでアワビなんだ!? もっと他に入れるべきものがあるだろう!」
そうこう言いつつ、セリスもアワビを投げ入れるのだった。
「洞窟で鍋大会なんてドキドキするね〜なのだ」
そう言いながら、矢良 黎明華は持参した日本酒を皆に配る。
お子様の玲亜たちにはちゃんと気を遣って、ジュースを。
黎明華が用意してきた鮭。
少し星空 涼にあげたので、半分の切り身になったそれを入れる。
(気にしない……気にしない……引きの悪さなんて気にしない!)
闇鍋のヒキの悪さでは定評のある、闇鍋に挑みし者・大凶の緋柱 透乃(ひばしら・とうの)。
気合十分にパワードパックをぱかりと開ける。
そして中にあるコンバットレーションを放り込む。
(できれば私は参加を遠慮したかったのですが……)
透乃ほどではないが、こちらも闇鍋関連の運は良くないことを実感している緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)はやや遠い目をしながら食材を用意する。
入れる材料は、7月の七夕にちなみ、笹繋がりで粽。
「そういや、闇鍋って初めてだったな」
酒杜 陽一(さかもり・よういち)は隣の酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)の様子を伺う。
(絶対ヘンなモノを入れる人が出てくるんだろう……美由子みたいに。それが醍醐味なんだろうけどさ。俺は普通の食べ物を入れてみるかな)
そんなことを考えながら、陽一はテイストミースイーツを投入。
テイストミースイーツ……様々な味の混ざった不思議なお菓子。
それはそれでアリなんじゃないかと陽一は考えたらしい。
一方の美由子は……
「ちょ、何入れてんだよ!」
ドス黒くウネウネした形容のし難い物体。
「『ブラックアリスのアーガマーハ』」
美由子はけろりと答える。
「新たな可能性の欠片を食べるなよ!」
「塩辛にしてみたら食べれたから大丈夫!」
美由子はあくまでも自身の感覚を信じるらしい。
「真夏の真っただ中なのになぜ鍋? ……まああのサニーの考えることだから仕方ないわね」
ウェザーのイベントの常連、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は以前広告モデルをした時と同様の華麗な水着姿。
「ウェザーのイベントも久しぶりね……というか、これが新婚旅行代わりなんだけどね」
「ええ……っ、それは光栄な……姉貴が聞いたら狂喜するよ」
セレアナの言葉に驚くクラウド。
彼女たちもまた、先日結婚式を挙げた新婚さんなのだ。
あれこれ忙しい二人にとって、このイベントが新婚旅行に相当するという。
「それじゃあ、あたしはコレを入れるわ!」
どぼーん!
セレンフィリティが突っ込んだのは、大量の棒状駄菓子。
「この間、懸賞で大量に当たったの」
「あー確かにスカはこの菓子が多いよな……って、入れたそばから溶けてるじゃないか」
「まあ、形も似てるしちょっと変わったきりたんぽってことで」
「無理がある……」
クラウドのぼやきを聞きながらセレンフィリティは駄菓子を入れ終える。
その間にセレアナが入れたのは、麺類。
パスタにラーメン、冷やし中華用面に春雨。
若干カオスではあるが、まともな部類に入ることは間違いない。
結和・ラックスタインは自作の餅チーズ鍋を投入用に固形にしたものを入れた。
見た目は少し……いやかなりアレだが食べてみれば美味しいのが結和の料理。
「うううっ……が、頑張ってるので、少しですけど、マシになってるんですよ……? ……やっぱりちゃんと普通のご飯を食べて貰いたいですし、闇鍋なら……」
見えなければどうということはない。
そう考えての、闇鍋参加だった。
(ねーねー、玲亜ちゃん、もう出ようよ! なんかここ怪しいよ!)
迷子になった末、闇鍋会場に迷い込んだ玲亜とそれに憑依する玲亜。
嫌な予感がすると必死になって玲亜をコントロールしようとする玲亜だが、玲亜はそんなこと気にしない。
「鍋に入れるモノ……持って来てないから、そこらに生えてたコレ!」
どぼーん。
玲亜が投げ入れたのは、そこらへんにあったキノコ。
(ああ、あ……)
入れてしまったということは、参加しなければいけないということ。
玲亜は頭を抱える。
「あ、私と同じね」
芦原 郁乃(あはら・いくの)が親しげに玲亜に声をかける。
「私も食材、用意してたんだけど家から持ってくるの忘れてて……」
その手にあるのは、にょろにょろした細長い生物。
「とりあえずさっき捕まえたヘビでいいかな……」
シャー! と威嚇しているヘビを、一気に鍋に放りこむ。
「同じだね!」
(お、同じって……)
にっこり笑顔の玲亜とその中で青ざめる玲亜。
「郁乃様ったらほんとに闇鍋好きなんですね……」
おどおどと周囲の様子を伺いながらやって来た秋月 桃花(あきづき・とうか)は、缶詰の桃を入れる。
「ところで先程カサカサという音が聞こえてきたのが今、急に聞こえなくなったんですが……何なのでしょう?」
「私は闇鍋というものはあまり経験がないのだが……」
そう言いながら、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が持ち込んだのはごくごく普通の野菜セット。
「人は野菜分が足りなくては体に悪いと私のデータにある。 大量に持ってきたので、皆遠慮なく食べてくれ」
「すごいまともな事言ってくれる人が来た……!」
「ロボットだがな」
クラウドが感動のあまり漏らした呟きを、コアは冷静に修正する。
「……だからなんで『闇』の方に参加すんのよー! 鍋の方でいいでしょ鍋のほうでー! バカーポンコツ―もーやだー!」
コアをポカポカと叩いていたラブ・リトル(らぶ・りとる)は、クラウドたちの視線(暗闇だが)を感じ、さっと声を整える。
「はろはろ〜ん♪ 教導団のNO1アイドル(自称)ラブちゃんよ〜♪」
そう言いながら、ブリの切り身を投入する。
「フフフ……闇鍋……マサニ我輩ニフサワシイ イベント……」
その隣では、夢宮 ベアード(ゆめみや・べあーど)が鍋によじ登っていた。
ハムスターサイズの一つ目球体のベアードは、鍋のふちに器用にバランスを取って立つ。
「何ガキテモ、我輩何デモ食ベラレルシ 逆ニドンナモノヲ 放リコンデモノーダメージ! 新規ノ客トヤラニモ、コノ シャンバラノキビシサヲ 教エテヤロウデハナイカ!」
そしてベアードは何かを取り出そうとする。
「我輩ガ鍋ニイレルノハ……アッ!」
つるっ……どぼん。
鍋の縁で滑ったベアードは、そのまま鍋にダイブ!
そして彼は浮かんでこなかった……
「くっくっく」
怪しい笑みを浮かべているのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)。
「どうか、カップル共に直撃しますように……」
吹雪が持ち込んだ食材は、蛸……らしい。
「許せ、蛸いやイングラハム!」
「あぎゃー!」
吹雪はパートナーのイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)を掴むとその触手を切り落とそうとする。
「こら、暴れるな!」
「いぎゃー!」
じたばたじたばた……どぼん。
暫くの間暴れる音がした後、何かが鍋に落ちる音がした。
そして唐突に訪れる静寂。
「……まあ、良し」
吹雪は満足気に頷いた。
こうして、闇鍋に全ての材料が投入された。
そして、シャッフルタイム!
誰が何を取るのか予測できないよう、鍋がかき混ぜられる。
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