薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

【蒼空・三千合同】鍋会にいらっしゃい

リアクション公開中!

【蒼空・三千合同】鍋会にいらっしゃい

リアクション


1.鍋会イベント準備中

 初夏の眩しい日差しに木々の緑が生える。
 跳ね上がる滝の水には時折湯気が混じり、目には涼しげだが温泉の熱気を運んでくる。

 久しぶりの雑貨屋ウェザーのイベント、鍋会。
 看板娘サニー・スカイ(さにー・すかい)が思いついたこのイベントに、しかし今日もたくさんの人が押し寄せていた。

「サニーさーん」
「サニーさん」
「あっ、三月さん、柚ちゃん、ひさしぶりー!」
 準備に余念のないサニーに声をかけたのは、高円寺 柚(こうえんじ・ゆず)杜守 三月(ともり・みつき)
「あれ、でも柚ちゃん、苗字が……」
「サニーさーん、水着を売って欲しいって人がいるんだけど」
「あ、はーい、ただいまー」
 参加名簿を見て首を傾げようとしたサニーの元に、見知らぬ男女を連れた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)がやって来る。
「サニーさんも皆さんも、今日はとても熱いので熱中症には気をつけないといけませんよー」
「うーうっ、むっむー! むー!(ろら、だよー! ゆーわのお友だち?ならろらとも、おともだち、だよねっ! よろしくねー!)」
 更には水着パーカーに日傘を差した結和・ラックスタイン(ゆうわ・らっくすたいん)ロラ・ピソン・ルレアル(ろら・ぴそんるれある)と共にクーラーボックスを持って現れる。
「うん、ありがとー……って、皆、もしかして……」
 全員に言葉を返しながら、サニーの動きが止まる。
 友人たちの醸し出すある雰囲気に、その指に嵌ったモノに、そしてある事実に気付いてしまったからだ。
「サニーさん、お久しぶり」
 止めを刺したのは、綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)の報告だった。
「サニーさんたちに報告があるの。私達、先月結婚したのよ」
 さゆみはアデリーヌに寄り添うようにして告白した。

「えーーーーーーーー!」

 大声が響き渡る。
「そ、そんなに驚かなくっても……」
 面喰った様子で一歩後退するさゆみ。
 しかしサニーの驚きは4人分だ。
「え、え、え、あ、おめでとう……じゃあ、名前が変わってる柚ちゃんや結和さんも……」
「はい、サニーさんに結婚報告をしに来ました」
「私も、6月に……」
 柚と結和が揃って答える。
「私達も、新婚さんなんだよ、ね」
「うん」
 美羽とコハクの声が揃う。

「えーーーーーーーー!」
「さにーサン、落チ着イテクダサイ」
 再び動揺するサニーにウェザーの居候、サリーが突っ込む。
「はっ、そ、そうよね。何はともあれ……おめでとう! お祝いが遅くなってごめんなさい!」
「オメデトウゴザイマス! 私ハ妹ガ楽シミデス」
「ありがとうございます」
「ありがとう!」
「どうもありがとう」
「サリーさんの妹の予定はまだ当分無いですけどね」
 幸せな新婚さんたちを慌てて祝福するサニーとサリーに、さゆみたちは笑顔で答え、結和は苦笑する。
「はああ、でも、何時の間に結婚て……」
「私は一応、現役のアイドルなので、ファンの夢は壊したくないと思って……いえ、待って」
 サニーに説明していたさゆみの唇がふと止まる。
「待って待って、百合夫妻なアイドルもアリかも……」
「さゆみったら……」
 苦笑し合うさゆみとアデリーヌ。
 そんな中、サニーは若干落ち込み加減。
「どうしたの、サニーさん?」
 心配した三月が声を駆ける。
「は、ぁ、あ……」
 深い深い溜息。
「うぅう、お友達が結婚したのにずうっと気が付かなかったなんて……」
「あ、いいえ、こちらこそ報告で遅くなってごめんなさい」
「すいません……」
「ううん、そうじゃないの!」
 謝ろうとする柚たちに、サニーは慌てて手を振る。
「出来れば結婚式にお花とかお祝いをお送りしたかったなーとか、引き出物は是非ウェザーで! とか、新婦の友人が歌います! とか色々やりたいなーって思ってたのに……私ったらお仕事で忙しくってもう全然何にもできなくて、ごめんなさい!」
「気にしないでください」
「はっ、そうだ、今からでも遅くないわよね! 急いでサムシングフォーを用意するから!」
「ソレモウ遅イデスヨ?」
「それじゃあウェディングケーキとか!」
「モット遅イデスヨー?」
 慌てて結婚祝いを用意しようとするサニーを、サリーは冷静に抑える。
 いつもは突っ込む役のレインとクラウドが準備中なので、すっかり突っ込みに慣れてしまったらしい。
「ああん、ええと、それじゃあ……おめでとう! また、何か用意させてもらうわねー!」
「ソレジャアオ仕事シマショウネー」
 サリーにずるずると引きずられながら、心からのお祝いを述べるサニー。
 そうしている間にも、鍋会の準備が次々と整えられていった。

「やほー! サニー!」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)がサニーの元に駆けてくる。
「鍋の準備が出来たんだよ。味見してくれるかな?」
「ルカルカさん……」
 サニーはルカルカの手を取るとその顔をじーーっと見つめる。
「ルカルカさんは……まだ、よね? ね?」
「ほへ? 新婚さんのルカに何か?」
「あぁあー……」
 何だか分からないと首を傾げつつ、ルカルカはサニーの手を引き鍋の番をしているダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)たちの元まで導く。
 鍋や、そして何故かチョコレートの甘い香りが漂ってくる。

 いよいよ鍋会が始まるのだった。