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「死の予言」を打ち砕け!

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「死の予言」を打ち砕け!

リアクション

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百合園女学院にて。

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汝、冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)は、死の恐怖から暴徒と化した民衆から、
パートナーの冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)をかばい、日奈々が泣き叫ぶ中、死ぬであろう。
===


「変な夢、見ちゃったな……」
冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)は、寮の自室のベッドで寝返りをうった。
余計な心配をかけないために、
パートナーの冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)には、
予言のことは内緒にしている。

暴徒に襲われないためには、
自室を出ないのがいいだろうと、「女の子の日」を理由に、
部屋で休んでいるのだった。

「ああ……体調悪いのは本当だし。
最悪……」



「千百合ちゃん……」
日奈々は、パートナーの様子がおかしいことになんとなく気づいていた。
理由が、本人の言っていることだけでないことは確かだろう。
結婚相手でもあるし、
千百合がつらそうなのは、日奈々にとってもつらい。

「どうすれば……いいのかなあ……。
そうだ……!」

薬を買ってきてあげれば、身体の痛みが緩和されれば、
千百合も少しは元気になるかもしれない。
そう考えて、日奈々は書置きを残し、
白杖を持って街へと出かけた。



「日奈々ー?」
ドアをノックして、千百合はパートナーの部屋を訪れる。
「あれ、どこいったんだろ……?」
ふと、白杖がないことに気づいて、
千百合は日奈々が外出したことを悟る。
「え、まさか!?」
机の書置きには、薬を買いに行くとある。

「まぁ、予言だと死ぬのはあたしだったし……あれ……?
あの予言であたしが庇わなかったら日奈々はどうなるの!?」

千百合の脳裏を最悪の想像がかすめる。

「だめ、それだけは……!」



ヴァイシャリーの街は、いつも以上にざわざわとしていた。
「何かあったのかな……?」
日奈々は、周囲の喧騒を訝しみながら、薬屋への道を歩く。
人ごみや騒がしい場所は、苦手だった。
いつもであれば、こんなに騒がしい場所ではないのに。

誰かが、叫ぶ声がした。
人の走ってくる音。
馬のいななき。
馬車が走ってくる。

「え、きゃあああっ!?」
日奈々は、誰かに突き飛ばされた。
「日奈々!?」
追いついた千百合が、倒れたパートナーを見て叫ぶ。

「待って、日奈々、今……!」
千百合が駆け出す。

それと同時に、誰かが叫んだ。

「馬が! 誰か、止めてくれ!」

「え……」
振り返った千百合の身体が、宙を舞った。

どさり。

少女が地面に落ちる音。
それだけが、鮮明に、日奈々の耳に届いた。

「千百合ちゃ……いやあああああああああああっ!?」

誰かの叫ぶ声。
暴走する馬の鳴き声。
大勢の人が走り回る音。

「千百合ちゃん千百合ちゃん千百合ちゃん千百合ちゃん千百合ちゃん!!」

真っ暗な世界に、日奈々の泣き声がこだました。



2022年8月某日、冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)さんが、
ヴァイシャリーの路上で、馬にはねられて死亡しました。
千百合さんは、パートナーの冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)さんをかばって、
事故にあったとみられていますが、
現場は正体不明の魔物への恐怖から騒然としており、
集団パニックが発生したとみられています……。