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「死の予言」を打ち砕け!

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「死の予言」を打ち砕け!

リアクション

■□■

魔物の出現とは別の事件も、シャンバラでは起きていた。
同時多発テロである。

===
汝、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)は、
プラヴァ―を強奪したテロリスト集団に襲われ、
鬼神のごとく戦うも、命を落とすであろう。
===


「……うん、それが私の死か」
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)は、
パートナーを呼び、
自分の見た夢を伝えた。

「何を言ってるんだ……」
シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)が、
アルコリアに詰め寄り、肩を揺さぶる。
「そんなことがあってたまるか!
お前が死ぬなどと……そんなことを言うな!」
「だって、これは『真実』になる夢なのでしょう?」
アルコリアは肩をすくめてみせた。
「怖くはないのか……」
「誰もが一度は通る道じゃない、大袈裟ね」
シーマの言葉にアルコリアは普段通りの調子で言った。
「お前を好き、慕い、愛する者達との別れが、惜しくないのかっ!!」
アルコリアは、小さく息をつき、微笑を浮かべた。
「私はそこまで強欲じゃないですよ。
ザナドゥの時一度死にました……法外なロスタイムを生きてるんです。
幸せ過ぎでしょう?」

「……」
ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)が自らに言い聞かせるようにつぶやく。
「……イエス、マイロード・アルコリア様」

「……そっか、それが『私達』の死なんだね」
ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)が、
いつものしゃべり方や、狂ったような笑いをやめて言った。
「では、私も契約を交わした魔鎧として、最後まで戦い死にましょう」

アルコリアの言葉を二人のパートナーは受け入れる。
しかし、シーマは。

「どうし、て……どうしてなん……だ、
ボク……だって……オマエが……」
アルコリアの笑みは安らかだった。
シーマは声を詰まらせ、
背を向けると、自室に向かって駆け出した。



海京にて。

「フィナーレです。
美しく……派手に行きましょうか」
魔鎧となったラズンを身につけて、アルコリアは、つぶやいた。

市街地の地理はすでに把握済みだ。

ビルの上、敵影を視認して、アルコリアは地獄の天使の翼を生やす。
ナコトの指示通り、ラズンは耐性スキルを付与している。

召喚獣:バハムートが、
ナコトによって召喚され、何体かのプラヴァーを吹き飛ばした。

「練度が足りませんわね!」
ナコトを認めたテロリストたちが、接近する。

「なまじ上等なプログラム・解析能力があることを後悔なさいませっ!」
インテリジェンストラントで、
大量の情報がプラヴァーたちを襲う。

システムエラーが、パイロットたちに混乱をもたらす。

「赤い羽根の……天使?」
「気でも狂ったのか!?」
混乱した通信に、かぶさるように、アルコリアの言葉が響く。

「赤き翼の女神の祝福を」
イヴィルアイで見極めた弱点に、
魔杖シアンアンジェロが叩き込まれる。
「天使を呼んで差し上げますっ」

「生身……人間なのか!?」
「馬鹿! アルコリアだ!」

「いやですね、宣伝もしていないのに」
「でもね、自分の死の理由を知ることができるのは、幸福かもしれないよ?」
「そうですね。普通は、知ることができることすら少ないのですから。
……私達も、テロリストさんも」
アルコリアとラズンが、離脱しつつ会話する。

そのまま、ビルの中で虚無霊:ボロスゲイプを呼び出し、
奇襲をかける。

「わああああ!」
「敵は生身だぞ、落ち着け!」

混乱した相手を誘い込むことなど、アルコリアには造作もないことだった。

ナラカの息吹を割り、環境を変える。
「異界適正など無いでしょう? 命、頂戴します」
イヴィルアイで、装甲の一番薄いところを突く。
歴戦の魔術が、プラヴァーを破壊する。

「機晶コーティングが万能だと思いました?
対イコン武器、もしくは……準エネルギーの魔法攻撃には無力です」

何体生身で戦ったと思っているんですか、テロリストさん?
アルコリアの言葉と同時に、プラヴァーのパイロットの意識は途絶えた。



痛みを知らぬ我が躯により、アルコリアはダメージを無視して戦った。

相手は、訓練を受けたパイロットの部隊だった。
次々とアルコリアやナコトの攻撃で撃破されていくが、
それでも集中砲火を受けていれば、
アルコリアは無事ではいられない。

「うわあああああああああああああ!!」

シーマが、髪を振り乱し、泣きはらした目で、アルコリアの前に立ちはだかる。

「見るな! その目<カメラ>でアルを見るな!」
情報撹乱で敵のレーダーを攪乱し、
全力の攻撃を放つ。

「うぉぉぉぉぉっっっ!!
認めん! 殲滅してやる、くたばれっ! サロゲート・エイコーンッ!!」

オーバードライブを使用したシーマが、
加速ブースターをふかしてルーンの槍を投擲する。
対イコンの魔槍を、何度も何度も、敵に投擲する。



アルコリアとパートナー達により、
海京のテロリスト集団は完全に殲滅された。

アルコリアの身体は、翼だけでなく、真紅に染まっていた。

「いやだ、いやだ、いやだ……!」
シーマに、ラズンが、諭すように言う。
「シーマさん、泣かないで。
少なくとも私にとっては救いです。
自ら死ぬのが怖くて、人の手が汚れるのを待っていた私には」
「いやだ、死ぬな、死ぬな、アル……!」
「貴女達と契約してよかった、こんなに早く安らぎを得られるなんて」
ラズンの意識が、薄らいでいくのを、アルコリアは感じた。

ナコトも、沈黙している。
安らかな静寂が、彼女に訪れたのだろう。

「今まで、一緒にいてくれて、ありがとう。
楽しかった。
いろんなこと、ぜんぶ」
「馬鹿なことを言うな! 目を開けろ、アル!」
「ふふ、もう疲れちゃった」
アルコリアが、歴戦の鬼神が、年相応の少女の笑みを浮かべた。

パートナーの顔がぼやける。
いくつもの顔が重なる。
今まで愛した、すべての人の顔が。
ひとりひとり。
皆、笑顔で。

「良い夢……見れそう……」
静かに目を閉じ、アルコリアは最期を迎えた。

「あああああああああああ!!」
唯一、生き残っていたシーマも、
慟哭とともに、パートナーロストで事切れた。


2022年8月某日、海京にて、
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)さんと、
パートナーのナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)さん、
ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)さん、
シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)さんが、
プラヴァ―を強奪したテロリスト集団と交戦しました。
アルコリアさん達はテロリストを全滅させましたが、
全員、死亡したということです……。