First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last
リアクション
■□■
===
汝、遠野 歌菜(とおの・かな)は、
魔法少女アイドルとして、幼い子どもを助けるため、燃え盛るビルに飛び込み、
子どもを助ける代わりに、自らは命を落とすであろう。
===
「羽純くん、私……」
「大丈夫だ。歌菜は俺が守る。
それに、必ず事件も解決してみせる」
迷いつつも、パートナーに夢を打ち明けた遠野 歌菜(とおの・かな)は、
月崎 羽純(つきざき・はすみ)の力強い言葉に、うなずいた。
「うんっ! ありがとう。
羽純くんとなら、絶対に何とかなるよ!」
「ほら、泣くな。助かるって言っただろ」
羽純が、感激で涙をあふれさせた歌菜の目を、優しく拭う。
こうして、二人は、事件解決のために、街へと向かった。
予言が真実になろうとしているなら、
ビルが火事になり、子どもが危険にさらされているはずだ。
「あれ……!」
夢で見たのと同じ光景に、歌菜は絶句した。
そう、あのビル。
あの上階で、泣き叫ぶ子どもの姿……。
何もかもが、夢と同じだった。
「させない! あんな夢を現実なんかに!」
魔法少女へ変身しようとした瞬間、
歌菜は、全身の力が抜けていくのを感じた。
「はすみ……く……」
どうして?
そう問いかける暇もなく、歌菜は羽純の腕の中に倒れた。
「すまない。
歌菜を守るには……こうするしかないんだ」
羽純は、ヒプノシスでパートナーを眠らせると、
安全な木陰に移動させ、単身、ビルへと向かった。
■
夢の中で、愛する人の後ろ姿が見える。
待って。行かないで。
そう、声を出そうとするのに。
なぜか、言葉を発することができない。
羽純くん。
羽純くん……。
■
「羽純くん!?」
歌菜は、パートナーの名を呼んで起き上がった。
どのくらいの時間がたったのか、わからない。
ひとつ確実なのは、
今、パートナーが、自分の傍にはいないということ。
たった、ひとりで、ビルの中に走って行ったに違いないということ。
「私の代わりに……ダメ、そんなの!」
虹色の翼を広げ、
歌菜は、燃え盛るビルへと迫る。
さきほど、子どもが叫んでいた窓に、思い切って飛び込む。
「変身! 【魔法少女アイドル マジカル☆カナ】!」
ブリザードで消火をしながら、
ビルの中を探す。
「羽純くん!」
「バカ! どうして来た……!」
炎と煙から子どもをかばって咳き込みながら、羽純が歌菜に言った。
「バカじゃないよ!
私の代わりに羽純くんが死んじゃったら……そんなの絶対嫌だよ!
大丈夫。私は一人じゃない。
羽純くんがいるんだもん!
絶対、皆で助かろう!」
「……そうだな、一人じゃない。
二人居れば何とかなる……。
そう、だったな……」
歌菜の言葉に、羽純がうなずいた。
「こんな予言、絶対、嘘にしよう!
私達の未来は、私達で描かなきゃいけないんだから!」
「ああ。
俺達はいつだってそうしてきたんだ。
未来は、俺達の手で掴み取らなきゃな……!」
■
二人の連携は、完璧なものだった。
羽純の光条兵器が遮蔽物をなぎ倒し、アルティマ・トゥーレが炎を切り裂く。
歌菜のブリザードで、
迫る炎が勢いを絶たれる。
子どもを抱いた羽純と歌菜が、
ビルを脱出するのは、あっというまの出来事だった。
母親が、駆け寄り、子どもを抱きしめる。
もちろん、子どもには怪我はない。
「よかった……」
その様子を見てつぶやく歌菜に、羽純が言った。
「ああ、本当によかった」
そのまま、強く愛する人を抱きしめる。
「歌菜の言った通りだ。俺達は一人じゃない。
二人で、予言を打ち砕いたんだ……!」
「羽純くん、ありがとう……!」
二人は、抱き合って、無事を喜んだ。
予言は覆され、火事による死傷者が出ることはなかった。
のちに、この火事も、
テロリストが起こしたものだと歌菜と羽純は知ったが、
その目論見は阻止されたのだった。
First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last