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今日は、雪日和。

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今日は、雪日和。

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 ■ 雪だるま勝負 ■



 窓を開けたら、一面の雪景色だった。
「うわぁ〜真っ白だぁ」
 秋月 葵(あきづき・あおい)は思わず窓から身を乗り出すようにして、外の景色にみとれた。
 今日は学校が休みだから、葵は少し遠出をするつもりでいた。
 けれどこんなに雪が積もっているんだから、予定変更して雪を堪能するほうが楽しそうだと思い直す。
 遠出はまた別の機会に出来るけれど、雪が休日にふんわりと積もってくれる機会は、そんなにあるものではないんだから。

 そうと決めると、葵はマフラーをぐるぐると巻き付けて外に出た。
 真っ白な雪に踏み出せば、1歩また1歩と葵の足跡が点々と刻まれる。
「わ、これ楽しいな♪」
 気分がのってきた葵は、今度は両手を広げて雪に全身ダイブ!
 ぼふっ、と埋まった雪からそっと身を起こすと、ぱたぱたと身体についた雪をはたき落とす。
「うぅ……冷たい……」
 ふんわりしていても、やっぱり雪は冷たい。
 でも、一度やってみたかったことだから、葵は雪に自分のつけた人型を大満足で眺めた。
 と、どこからか笑い声が聞こえた。
 もしかして誰かに見られたのかと葵は慌てて周囲を見渡した。
 誰もいない。
 けれどまた、声が聞こえた。
「向こうかなぁ……?」
 葵が声のした方向に進んでみると、そこにいたのは魔装書 アル・アジフ(まそうしょ・あるあじふ)フォン・ユンツト著 『無名祭祀書』(ゆんつとちょ・むめいさいししょ)だった。


「うんしょ、っと……」
 無名祭祀書は3つ目の雪玉にとりかかった。
 寒くないようにもこもこに着込んだ胸元からは、ひょっこりと猫が顔を出している。
「シスターちゃん、幾つ雪玉を作るですかぁ?」
 アルに聞かれ、無名祭祀書は当然のように答える。
「雪だるまを作るんだから、3つなのですよー」
「でも2段のほうがかわいいですぅ。それに作りやすいし……」
「2段だと足がないですよー」
 無名祭祀書にとって、雪だるまといえば3段。
「座ってるところだから、足はなくてもいいですぅ」
 アルは断然2段派だ。
「ん? 丁度、まいますたーが起きてキタですよ。どっちの雪だるまが良いか勝負するですよ!」
 葵を見付けた無名祭祀書がそうもちかけると、アルも頷いた。
「受けて立ちますですぅ」
「どっちの雪だるまも楽しみにしてるね」
 完成したら呼んでねと、葵は一旦その場を離れた。
 雪の中で遊ぶ無名祭祀書とアルの為、お汁粉でも作ろうか。それならせっかくだから、かまくらを作ってみよう。
「DSペンギンさんたち、ミニ雪だるまさんたちもみんな手伝ってね〜」
 葵はスコップを持ってくると、雪をどんどん盛り上げていった。


 無名祭祀書が作るのは、3段のスノーマン。
 3つの雪玉を重ねてしっかり押さえてから、炭や小枝で顔を作ってゆく。
「鼻は人参を使うのが定番ですよ〜」
 枝をさして手にしたら、自分が巻いていたマフラーをスノーマンに巻き付けて完成だ。
「アルのはまだですか〜? 1段少ないのに時間かかってますね。早く作ってくださいよ〜」
「え、あの、もうすぐできるですぅ〜」
 まだ2つ目の雪玉を作っている途中のアルは、無名祭祀書にせかされて焦った。
「はわっ」
 慌てて雪玉を運ぼうとして、雪に足を取られて転んでしまう。
「アル、大丈夫?」
 差し出してくれた無名祭祀書の手につかまって立ち上がりながら、アルは情け無さそうに呟いた。
「やっぱり不幸ですぅ……」

 それでもなんとか雪玉を重ねると、アルは雪だるまの目をぱっちりとみかんで作り、石や小枝で表情をつける。
 頭には逆さまにしたバケツをかぶせて、出来上がり。
「む、2段のもなかなかですねー。まいますたーに見せてどっちが良いか聞くですよー」
 無名祭祀書は葵を探しに行ったが、すぐに戻ってきてアルの手を引く。
「そんなに引っ張ったら転んでしまうですぅ」
 言いながらアルは引っ張られていった。

「あ、やっぱり雪だるま作るほうが早いかぁ」
 葵は雪うさぎの形に作ったかまくらに、皆が入るための穴を開けていた葵は、やってきた2人をみて笑顔になった。
「あともう少しで出来るから、そしたら中でお汁粉食べようね。良い雪だるまが作れてた子には、お餅増量サービスだよっ♪」


 きっとどちらも良い雪だるまだろうから、お汁粉はお餅をたくさん入れて作ろう。
 寒い外、冷たい雪で遊んだあとは、
 暖かいかまくら、温かいお汁粉で身体もぽかぽかに。

 そんな雪の日の思い出――。