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リアクション
■ 強大な魔物に囚われて ■
顔を横向ければ、柔らかく曇ったガラスごしに、また少し雪がちらつくのが見えた。
「雪か……」
笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)も雪に興味がないわけじゃないけれど。
「もう少し、陽が昇ってからでもいいよね」
外はきっと寒いだろう。
コタツから出る気になれなくて、紅鵡はコタツ布団を肩のところまで引き寄せ直した。
コタツの温もりはどうしてこんなに心地よいのだろう。
ヒーターからの熱が、じわあっと絶妙な加減で脚に当たっている。
コタツ布団の表面はひんやりとしているのに、その内側は熱をたっぷりと吸い込んでふんわりと紅鵡の身に寄り添う。
冬場の暖房は数あるけれど、人の身も心も捕らえて放さない点では、コタツに勝るものは無い。
(このまま寝ると、風邪を引いちゃうよね……)
そう思ってさっきから耐えているのだけれど、それがなければ今すぐにでも、もふっとコタツに潜り込んで寝てしまいたい。
コタツにはそれだけの力がある。
こんな雪の日に、コタツという魔物に捕まってしまっては、もう逃れるすべはない。
紅鵡はコタツの天板に顎を載せた。
ひやっとするその感触が心地よい。
そう感じるのは、十分に身体があたたまっているからだろう。
コタツの上に置かれているのは、みかん……ではなく、お皿にのっかった小さな雪だるまと雪うさぎだ。
(……かき氷みたい……これに苺シロップをかけたら美味しいかな?)
そんな考えが浮かぶのは、ずっとコタツに入っていてそろそろ喉が渇いてきたからなのかも知れない。
しゃくしゃくとかき氷を食べたらどんなに美味しいことだろう。
せめて何か飲みたい……でもコタツから出たくない。
とりあえず、後回しに出来るものは最大限後回しにするとしよう。
コタツの魔力に囚われた紅鵡は、ぬくぬくとした幸せを満喫するのだった――。
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