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静香様からの手紙
GW間近のうららかな日に薔薇の学舎のクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)の元にピンクの封筒で手紙が届いた。
これで何通目になるだろう。
あの人のペンフレンドになってまだ日は浅い。
だがこの封筒が届く度、心臓がドキドキする。
「今回は静香さまどんなお手紙くれたのかな?」
そう、クリスティーの文通相手とは百合園女学院の校長桜井 静香(さくらい・しずか)その人なのです。
「静香様のお手紙はいつでも楽しみだな〜?」
クリスティーはうきうきと手紙を開封する。
静香様の手紙はいつでも心が踊るのだ。
しかし、便箋に書いてある内容を見てクリスティーは目を見開きます。
「静香様がタシガン貴族とお見合いーーーーー!」
彼らしくない素っ頓狂な声を上げます。
しばらく、頭が混乱するクリスティーでしたが、頭を落ち着かせると便箋を握りしめ、自室を出て行きます。
「とにかくお見合い相手のセシル・ラーカンツさんについて調べなきゃ」
その時、クリスティーは気づきませんでした。
パトナーのクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)がドアの陰にいたことを。
そして楽しそうな笑みを浮かべていたことを。
鋭峰様のお見合いセッティング
空京にある上品なたたずまいの旅館では、シャンバラ教導団校長金 鋭峰(じん・るいふぉん)指揮の元、静香とセシルのお見合いのセッティングが行われていた。
お見合い回数には自信のある鋭峰。
だが、その回数の多さが周りに不安を与えていた。
教導団生琳 鳳明(りん・ほうめい)もその一人だった。
(「なんてったって、金校長の指揮だもん。いつの間にか教導団の訓練場が出来たって、おかしくないよ、ここは私たちが頑張らないと。女の子のセンスって大事だよね。百合園女学院の娘、いるかな?」)
鳳明は、あたりを見回す。
するとそこには百合園女学院の生徒がいたのだが、鋭峰を相手にお見合いごっこをしている。
その生徒とは百合園のヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)である。
「私は、お見合いの場のセッティングの総指揮をしなければならないのだが」
鋭峰が席を立とうとするが、ヴァーナーが放してくれない。
「静香校長先生は可愛いのが好きで、セシルおにいちゃんはきぞくさんなのでじょうひんなお茶とかお菓子をご用意しておけば大丈夫ですよ。それより、折角、金校長先生とご一緒できたんだから私もお見合いしたいです〜」
「そうは言われてもな」
鋭峰が困っていると一人の女生徒が鋭峰に話しかけてきた。
「金団長、こんなところで遊んでいていいんですか?」
話しかけてきたのは、雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)である。
「おお、そうだな。私には、責任があるのだ。お嬢さんのお相手は今度させて頂こう」
そう言って、鋭峰はリナリエッタに連れて行かれるように歩いていく。
「いや、君、助かった」
鋭峰が礼を言うと、リナリエッタは、にっこり笑って首を振る。
「いえ、団長さんのお役に立てたのならいいんですよ。それよりちょっと相談にのってもらえませんか?」
「ん、何だね?」
「私の知り合いに20越えでお見合いばっかりしてる人がいるんですよ……」
「ほ……ほう」
鋭峰の眉間にわずかにしわが寄る。
「20越えで女性と一回も付き合ったこともないなんてどう思います?」
「……そういう者も珍しくないのではないかね?」
「そうかもしれませんけど、その年で女性けいけ……あら、私ったらはしたない。けど無いのってどう思います?」
「いや、えー……私は総指揮に戻るので失礼する」
言うと、鋭峰は足早に設営指揮に向かうが、リナリエッタは見逃さなかった。
鋭峰の目元にうっすらと涙が滲んでいたのを。
「うふっ。からかいがいのある団長さん♪」
言って、にっこりと笑みを作る。
鳳明の元に来た頃にはいつもの鋭峰の表情になっていたが、背中に哀愁が漂っていた。
「金校長何かありましたか?」
「な! 何もない! 私の指示の元一刻も早くお見合い会場をセッティングするのだ!」
「は、はい!」
鋭峰の気迫に鳳明は首をかしげるのだった。
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