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リアクション
第一章
「いくら噂に過ぎないとはいえ、実際に夜間無断外出をする生徒も出ている以上、このまま放ってはおけないと思うのです」
ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)は静かに言った。
「ですから皆さん、協力して調査をしてくださいね。後は皆さんにお任せします」
ルミーナは集まった生徒たちを見渡し、部屋を静かに出て行った。
アレン・アッシュワース(あれん・あっしゅわーす)が、いかにも軍人らしい短髪の頭を上げ、静かに口火を切った。
「抜け出す生徒がいる、不審者の目撃もあるし、生徒の連れ戻し、事実関係の調査、現場の張り込みに分担してやっていくのが効率的だろうな」
ここでいったん言葉を切ると、集まったメンバーが皆一様に賛意を示したのを見て、アレンは続けた。
「何はともあれ、一般生徒たちに危険が及ばないようにすべきだろう。自分は昼間のうちに周辺を見渡せるポイントを探して、明るいうちから潜むことにしようと思うのだが。調査になるんだろうが、まあ、現場一帯の張り込みだな」
ドラゴンニュートでアッシュワースのパートナーのゲルド・ヴィンバルト(げるど・びんばると)が赤い炎のような瞳をアッシュワースに向けて言う。
「現状ではなんともいえないが、なんらかの危険要素ある可能性も考えられるからな」
影野 陽太(かげの・ようた)がおずおずと言った。
「アッシュワースさんとヴィンバルトさんに、遠方からの見張りをしていただいて指示をもらって、張り込みメンバーと、生徒の抜け出し対策メンバーとの総合連絡をやっていただければよろしいのじゃないかと思うのですが……俺は「ダークビジョン」と「不寝番」が使えますし、抜け出す生徒の制止に回りますよ。説得がうまくいかなかったら「ヒプノシス」も使えますし。」
「おお、それはいい考えだと思う。長時間にわたる潜伏はオレらの得意とするところだしな」
ヴィンバルトはそう言って壁に寄りかかった。褒められて陽太は照れくさそうにもじもじした。黒髪が顔にはらりとかかる。彼らの言葉を聴き、生徒たちは生徒の制止、調査、現地張り込み、とおのおの名乗りを上げてゆき、大まかな3つのグループに分かれることになった。
生徒の連れ戻し担当を申し出たセルマ・アリス(せるま・ありす)は、隣に立っている、ヴィンバルトよりがっしりした感じのドラゴンニュート、ウィルメルド・リシュリー(うぃるめるど・りしゅりー)を愛しげに見て、長い黒髪をさっと払った。
「俺はオルフェリアさんと協力して学生が寮から抜け出さないように見張ろうと思ってるんですが。ウィルがとにかく恐がってるもんで、早く解決したいですね。抜け出す生徒に怪我しないようにさせるのはもちろんですが……」
はかなげな美少女といった風情のオルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)は、その見かけと裏腹に元気な口調で言う。
「セルマさんと協力して、寮の窓や入口付近で張り込みますよー。雅刀で昏倒させますから! あ、怪我はさせませんよ、させませんとも」
黒猫の獣人夕夜 御影(ゆうや・みかげ)は部屋の角に丸くなったまま、上目遣いにセルマの方を見て言う。
「みんな……なんか怖いお話してるから……やだやだやだー!お化け怖いにゃー!」
セルマは御影の傍に歩みよって、背中をなでながら優しく言い聞かせた。
「大丈夫だよ。みんないるし。御影は夜のお散歩してる人を見つけたらいつも通りに背中からぎゅーってすればいいだけだから。な?」
「そうなのですかー。それなら得意です〜♪」
ウィルメルドが老獪なドラゴンという外見とは正反対の、幼い子どもそのものの声で、
「わしは確かに幽霊の話は怖いが全て人任せにするわけにもいくまいし……。セルマ達に同行して御影が見つけてくれた学生を、怪我させんように雷術で気絶させて制止しようと思うのじゃが。……実験室は恐いしの」
と言った。
銀髪の美女といった風情だが、実際は男である神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)が鈴を振るような声で言う。
「では自分は寮内の見回りをしましょう。万一不審者を見かけたらそれを追いかける方向で」
紫翠のパートナーシェイド・ヴェルダ(しぇいど・るだ)が吸血鬼らしい美しい顔に不敵な笑みを浮かべて言う。
「オレは紫翠の見回りの手伝いだな。夜の方が、動きやすいし。フフフ。鬼が出るか?蛇が出るか?見ものだな」
伊吹 藤乃(いぶき・ふじの)が吸血族特有の整った顔に毅然とした表情を浮かべ、「いかなる理由があろうとも風紀は乱すべきじゃない! 噂の確認がしたいから抜け出すなんて言語道断! 生徒を見つけたら「警告」するけど、警告を無視したら「逮捕術」の出番だよ!」
と力説する。
元気のいい黒髪の中性的な美少年安芸宮 和輝(あきみや・かずき)が、
「学園側の警備当局に協力をもらって、実験室への通路にロープを張ったり、窓・天井も可能なら封鎖して事件解決まで関係者以外の出入りを防止してはどうでしょうか?」
と提案した。シェイドがそれに対して、
「いや、封鎖はまずいだろう。こちらの動きを不審者に気取られてはまずい。しばらく鳴りを潜めて、またほとぼりが冷めたころに動くだけだろう。あんたは体術の心得もあるようだし、連れ戻しに協力がいいだろう」
「ああー、そうか〜、そうします」
安芸宮は言って、頭を掻いた。
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