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リアクション
・図書館 三階
「これは……」
三階部分で蔵書を調べていた東條 カガチは、先刻罠だと思って引っ張り出してしまった書物の内容に驚愕していた。解読したのはエヴァ・ボイナ・フィサリスである。
「なぜこれが他の本と違って読めるのかは分かりませんが……ここはおそらくただの図書館ではありません!」
その時、近くの壁から大きな物音が聞こえてくる。
「な、なんだぁ?」
その方角を見ると、何名かの人間が出てくるのが見えた。曖浜 瑠樹達、隠し通路らしき場所へ入っていった者達である。
「まさかここに繋がってるとはなぁ……隠し通路だから、もっと何かあると思ったのに」
瑠樹は残念そうである。ただ、突然出てきたせいでカガチ達の警戒は強まっているようだ。
「いやー、でも出れて良かったよ。壁が落ちてきた時はどうなるかと思ったくらいだ」
リシトの言葉に反応したのは図書館の中にいた側だ。
「カガチ、ひょっとしてさっきのは……」
「ああ、うん。まさか外で作動してるなんてなぁ」
リュース達は皆苦い顔をしている。なぎこや皐月は飲み込んでいないらしく、きょとんとしているが。
「でもあれからちょっと時間が経っちゃってるんだよねぇ〜。その壁が落ちたってのはどこでだい?」
縁が壁から現れた者達に問う。
「我達が入っていってから中は思ったより入り組んでまして。だから時間が掛かって、出た瞬間は隠し部屋についた、って思ったくらいです」
小次郎が言う。落胆していた理由は、それなりの時間歩いたからであるらしい。
「で、そうだおねえちゃん、その本の内容ってのはなんだい?」
「その本ってのはなんだ?」
合流組はまだ事態を把握していなかった。
「実はですね……」
そのため、今の状況をリュースが説明した。
「なるほど、本棚のトラップか。で、それがそん時に手に入れた本ってことか」
瑠樹は最初こそ呆気にとられたが、別に責めるつもりはないようだ。
「そうです。これまでの書物は肝心な部分が分からないせいで解読出来ないものばかりだったんですが、これは異なるみたいなんです」
ある程度落ち着いた所で、エヴァが説明を始める。
「ここに書いてあるのは要約すると――古代シャンバラの兵器実験のレポートです。それも、非人道的なものも含んだ……」
・二階 隠し小部屋
「隠し扉みたいなのは結局なし、か。じゃあこの部屋はなんだってんだ?」
藤原 和人達は粗方隠し部屋を調べ終えていた。
「例の兵器の絵みたいのが書いてあるものと設計図、これだけのためにこんな隠し部屋なんて用意するのでしょうか?」
エメが疑問を口にする。
「何か見落としているかもしれませんわ。沙幸さん、図書館にいる時に何か感じませんでしたか?」
美海は時間を遡って考えているようだ。
「そういえば、周りの人達が『肝心な部分だけがみんな読めなくなっていて書いてある事が良く分からない」と言ってたよ。あれ……」
沙幸はその違和感に気づいた。
「だとしたら、これが読めるのはなぜなんでしょう? もしかしたら、この部屋にあったことが何か関係しているのかもしれません。ん……」
エメは何者かの視線を一瞬感じた。通路を見ると、白い人影の一部のようなものが横切っていくのが見えた気がした。
「どうしたの?」
「今、誰かが通ったような……多分気のせいです。もし調査団の方なら逃げるような事はしないと思いますし」
「分からないぜ。一度出て確かめない事には安全とは言えないだろ。もっとも、出ようとして待ち構えられてるのも困りもんだけどな」
和人は一切楽観的にはならずに警戒していた。しかし、人の気配は入って来た場所からはしない。魔力のようなものも一切伝わっては来ない。
しかし、その場所を遠く離れて見ていた者がいた。ディエーツ・トヴァ(でぃえーつ・とう゛ぁ)である。その背後にはパートナーのディエーツの ドラゴニュート(でぃえーつの・どらごにゅーと)が控えている。
「……」
襲いかかろうと思いはしたが、さすがに大人数相手では分が悪いと感じたのだろう。その前に何人かを襲撃したものの、逃げる者を追い詰めようとはしなかった。フリードリッヒ 常盤が見た白い人影の正体は彼女である。
「……!」
だが、その時彼女自身が近くに気配を感じた。すぐに臨戦態勢に入る。だが、背後には自分のパートナーがいるだけで他には――魔法陣のような幾何学模様があるだけであった。
その模様が一瞬光ったような気がしたが、その事に彼女は気付かなかった。
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