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謎の古代遺跡と封印されしもの(第1回/全3回)

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謎の古代遺跡と封印されしもの(第1回/全3回)

リアクション


・訪れる試練

「扉が勝手に……」
 リヴァルト一行は隠し扉のある部屋が開くのをその目で見届けた。少しの揺れの後、重厚な扉がまるで意思を持つかのように動いたのだ。
「待て。不用意に出ようとするな」
 にゃん丸が慎重に扉の外を確かめる。
「……さっきとは逆になっている。行き止まりの壁が、だ。それに、他のみんながいない」
「じゃあ、さっき揺れたのって、この部屋ごと下に降りてたからなのかな?」
 梓が問う。
「そのようですね。これはエレベーターでしょうか? だとすれば、ここは地下室に当たる場所ということになります」
 緋音が推測する。先程とは通路の方向が異なることからも、まだ自分達が知らない場所であるに違いない。
「地下室……じゃあっ、この先にはあるんでしょうか?」
 ひなが言う。ここがもし隠し通路であるならば、この先に遺跡の秘密に関わるものがあるかもしれないのだ。
「なあ、リヴァルト。もしかして封印の扉ってのはこの先なのか?」
 周がリヴァルトに尋ねる。
「確証はありませんが……その可能性は高いですね。ぼんやりとですが、見覚えがあります。ええ、そうです、間違って小部屋みたいな所に入ってしまって、出たら道が変わってました」
 考え込みながらリヴァルトが説明する。彼が最初に見つけた隠し扉というのはこの事だったのだろうか?
「何があるかまだ分かんねぇが……ここまで来たんだ、行ってみようぜ!」
 周が先導して先へ進もうとする。
「はい。私もこのまま有耶無耶なのは御免ですから」
 リヴァルトもまた進む気だ。
(やはり俺達を嵌めてるわけではない、か。ここは進むのが妥当か)
 にゃん丸が考える。リヴァルトの掴みどころがない態度は真意を読みとり難いのである。ただ、今は最初に比べて疑いは薄れてきていた。
 全員が小部屋を出た瞬間、ドンと音を立てて扉が再び閉まる。
「上に戻った、のかな?」
「そうだといいんですよね。ほら、他のみんなもここまで来れるじゃないですかっ」
「分かれてしまったみんなとまた先で合流出来るかもしれませんね」
 仕掛けがこのまま作動しているようなら、後続組もやって来れるはずである。
 だが、この場の者、それは上で控えている者もだが、やってきた通路が塞がってしまった事など知る由もない。

「扉がまた開きましたね」
 分断されたもう一方は、ちょうど上がってきた小部屋の中を見渡した。誰もいない事に違和感を感じる。
「誰もいない、ってことは……」
「部屋の中かあるいは、何かの仕掛けがあったってことだろうね」
 入って確かめる。
「リヴァルトはこの扉を閉めたから、同じようにっと。重いね」
 終夏はリヴァルトがやったように扉を閉めた。
「揺れて……ますね」
 クライスが部屋の変化に気づく。
「エレベーターと言ったところでしょうか。なるほど、地下にはこれじゃなきゃ行けないというわけですか」
 ウイングは何か納得しているようだ。
(この先には何が待ち受けているのでしょうか?)
 その時、全員の頭の中に響く声があった。
「まさか、この遺跡の……」


「おや、この部屋は……」
 リヴァルト達が通路を進むと、少し広い部屋に躍り出た。目線の先にも通路がある。
「中間地点。ってやつか。それにしても……上の図書館と違ってまるで病院や研究所みたいだな。古代文明ってよりは超高度な科学文明、そんな感じがするぜ」
 無機質に輝く銀色の壁。天井には淡く光が灯っている。ここまで、明かりは生きていなかっただけに、それだけで不気味さが増す。
「何の部屋でしょう? どこか無菌室を彷彿とさせます」
「ここで何かの実験でもしてたのでしょうか?」
 各々が部屋を見渡す。だがその時、
「な、通路が!」
 ちょうど部屋にある二つの出入り口が両方とも塞がった。
「危ない!」
 リアトリスとパートナーの蘭丸が武器を手にし、襲い来る何かを斬りつける。
「く……助かりました。いや、まだです!」
 リヴァルトもまた自分の剣を抜く。彼らを襲うのは――閃光の球のようだった。その数は彼らの人数分。無差別に迫る。
「これ、斬っても斬ってもキリがない!」
「魔法? でも一体どこから……」
 密室の中で彼らは正体不明の攻撃との戦いに身を投じる事になった。


・そして守護者は現れん

「ほ、本が……」
 図書館の異変がこの遺跡の中で最も大きいものだった。
 散らばっている本は本棚の中に回帰し、朽ちたような書物は全て彩を取戻していく。その中でも、魔法陣のような模様が描かれている本の反応は著しいものがあった。
「何かに反応している……え、なんなの、この魔力は!?」
 ルカルカ・ルーのように図書館に突如として現れた強大な気配に気づく者がいた。魔道書のようなものを持っている人もまた、尋常でない存在への恐れを感じている。
 それだけではない。遺跡そのものが本来の姿を取り戻していく。綺麗過ぎると言われている状態どころか、本来の遺跡は当時の原型をそのままに保っていたのである。
「そんな。幻、ですか? 本が読めなかったのはもしかして……」
 それまで蔵書が読めなかったのは、この遺跡ごと魔法の支配下にあったからだ。何者かが入ってきても、本来の文献通りには解読出来ないように細工されていたのである。
 その上、魔法がかかっていたのはあくまでも遺跡そのもの。書物の類には魔法はかかっていなかった。いくら魔力の反応をみても意味がなかったのはそのせいだ。だが、隠し部屋にあるものや、仕掛けの一部に使われているものまではその影響下になかったようである。
 
 図書館の中央、吹き抜けの一階に魔法陣が展開される。魔力の光は天井にまで突き抜ける。
「なんだ、あれは?」
 三階部分にいる曖浜 瑠樹らは顔をしかめ、吹き抜けを覗きこむ。

「ザイン!」
 二階、危険を察知した神野 永太のパートナーのザイエンデはその中心に飛び込んでいった。
 吹き抜けを飛び下りれば、そこは目の前だ。彼女は先制攻撃を仕掛けようとする。だが、
「……っ!!!」
 永太も含め、その場にいた者には何が起こったのか即座に理解することは出来なかった。ザイエンデは本棚に勢いよく叩きつけられていた。
「貴様!!」
 パートナーを傷つけられた事で、彼は目の前の敵へ飛び掛かっていく。吹き抜けから下へ勢いをつけて抜刀する。二階ならば、飛び降りても無事な高さである。
 しかし、彼の斬撃は容易く受け止められてしまう。
「結界……だと!?」
 魔法陣の中心にいる人物は微動だにしない。それどころか、指一本動かさずに結界を展開、迫りくる太刀を受け止めたのだ。
 驚くべき事は、同時に遺跡内の魔法陣や書物を介在して操っているということだ。それだけでこの敵が計り知れない実力である事が分かる。
 結界に弾かれ、遺跡の壁に激突する。
「ぐ、あ……」
 勢いがあった分、その反動は大きかった。
(この事を知らせ……なければ……)
 幸いな事に、腰元のトランシーバーは無事だった。それをなんとか手に取り、連絡を取る。
『こちら図書館フロア……遺跡の守護者、らしきものが出現……くり返す……』


「月夜、剣を」
 一階部分、樹月 刀真は自らの光条兵器、「黒の剣」を構える。静かに、フロアの中心にいる影を注視する。
「姉さん、下がって下さい。あれは只者じゃありません」
 ランツェレットのパートナー、シャロットも臨戦態勢である。
「大丈夫です。それにこの魔道書、開きましたよ。これならばあの結界に対抗出来るかもしれません」
「ルカ、淵、まだ動くな。あれは俺達でも厄介だ。魔力が強大過ぎる。規格外だ」
 ルカルカのパートナーダリルが制止する。こちらの組も様子を見ているようだ。

 現れた影が振り返る。黒いローブに身を包んだ姿は魔法使いを彷彿とさせる。その顔には――仮面があった。目も、鼻も、口もない、ただただ真っ白で無機質な仮面。
 ?無貌?の魔道士、そういう表現が合うだろう。

この地を荒らす者よ、愚かなる探究者達よ

 その声は遺跡の中にいる全ての者達へと響いた。

早々に立ち去れ。さもなくば……

 ローブから魔道書のようなものを抱えた腕を出し、それを開いて告げる。


貴様らを――排除する!



To be continued……

担当マスターより

▼担当マスター

識上 蒼

▼マスターコメント

 皆様ご参加ありがとうございます、識上蒼です。
 それぞれの遺跡探索、現れた遺跡の守護者らしき存在、最深部へ向かう事になったリヴァルト達。モンスターが押し込められていた上層部。そして遺跡内部で発見された謎の魔道書に兵器に関する記述。
 果たしてこの遺跡の正体とは? 鋭い方はもう遺跡の正体に薄々気づくかもしれませんね。所々にヒントが隠されています。
 最後の最後で一気にシリアスな雰囲気になりました。次回は守護者や入口のある層に現れたモンスターとのバトルから始まります。

 なお、今回参加された方で次回も参加される事になる方は、自分が今回最終的にどこにいるのかをしっかりとご確認ください。この話は一回一回がそのまま積み上がっていく形式なので、その点での判定は厳しめにいきます。
 また、今回「魔法陣が表紙に書かれた魔道書らしき書物」を手に入れた方、次回以降アクションをかける上で何らかの役に立つかもしれません。
 

 さて、ここで今回の皆さんのアクションが及ぼした結果について簡単に書かせて頂きます。
 まず、地図作成の方がいましたので、図書館一階から入口のある第二階層の全容はある程度明らかになりました。なお、マッピング班の一人は下に向かう過程で一度ベースキャンプに立ち寄ってるという事になっています。
 ちなみに、トランシーバーはランダムで配られております。今回の所持者は次回以降もお使いいただけます。
 次回が初参加になる方のアクションの起点は、第二階層入口〜図書館フロアです。第一階層、地下でアクションをかけられるのは今回そこまで行った方になります。
 図書館フロアに関しましては、次回からは今回読めなかった本も解読出来るようになります。戦闘が何らかの形で決着がつけば、調べる事が出来るかもしれません。
 最後に何名か分断されたり攻撃されたりしてますが、特に大怪我はしていない、とお考え下さい。

 次に、今回の判定についてです。一回目につき遺跡内探索はある程度自由で、しかもいい具合に人数がばらけたのでその点ではアクションが採用しやすかったです。ただ、遺跡に入る前の心情や行動を書いている方も相当数おりまして……基本的に遺跡調査が今回のメインでしたので、それ以外は薄めになっております。また、遺跡に対する説明が少なかったためにやたらと罠やモンスターに関わるものも多くありました。戦闘については大部分がダブルアクションとして判断させて頂きました。ただ、次回に関しては戦闘→調査の流れになるため、この点でのダブルアクション判定は緩むかと思います。全体的にやや厳しめ、ということでご理解下さい。
 また、今回「アトラス遺跡調査団」という称号を何名かにお送りしています。人によっては、その後に役割に応じた名称がついているかと思います。

なお、さらに細かい情報やシナリオの裏話は「条理を識りし蒼」で検索して下さい。私のブログになっております。

第2回については、早ければ2月5日の金曜日に、遅くとも2月7日の日曜日には上げることが出来るかと思います。
 
それでは、次回もご参加頂けたら幸いです。


※ 第二回の公開が2月3日に早まりました。ご了承下さい。