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リアクション
10. 一日目 稽古場 午後一時二分
薫ママから、来なさいって電話があったので、僕は芝居の稽古場へ移動した。
撮影セットでは、ケガ人はでなかったけど、ライトが落ちた時に、天井桟敷に、怪しい人影を見たとか、黒マントだったとか、ファタちゃんだったとか、歩不くんだとか、ごちゃごちゃしてて、僕はすることもなかったんで、ママのリクエストにこたえる。
なにもしてなくても怪しいファタちゃんは、容疑者としてみんなの取り調べを受けてるから、パーティはメンバー一人離脱で、また僕一人になっちゃった。
芝居の稽古は、もう始まってる。
「麻美。もっと、しっかり走って」
「・・・・・・」
舞台下にいるママに怒鳴られながら、和服姿の麻美くんが、ふわふわと舞台を走る。
「追っ手。囲んで」
見覚えのあるママの劇団員の人が二人、黒い羽織をひるがえし、抜き身の日本刀を手に麻美くんにせまった。
演技か素か、ぼんやりとしゃがみ込む麻美くん。
彼にむけられる白刃の切っ先。
「待て」
走りこんできて、瞬時に劇団員を切り伏せる、右目に傷跡のある男の子。
黒板に手書きされた配役表によると、鬼桜刃くん。
さらにもう一人、銀髪、赤目のソーマ・アルジェントくんが、麻美くんを切ろうとしていた侍に刀をむける。
「芝居は苦手だぜ。痛くても悪く思うなよ」
ソーマくんと劇団員は、しばらく戦った後、劇団員はあおむけにバタンと倒れた。
黒の羽織袴の刃くんとソーマくんが麻美くんを見下ろす。
「ああ。セリフだな。ふうん。残念だな。俺一人で始末する気だったのに、刃くん、こんな時だけ仕事早いよね。だっけ」
「ソーマ。俺は務めを果たすべく動いたまでだ」
「少年。逃げてはならぬ。我に背をむけたら、終りです」
遅れてあらわれた、白い羽織姿の藍澤黎さんが話しかけても、麻美くんは、ぼーっ。
「おやおや。藍澤副局長が脅かすから、この子、気絶してって、おい、麻美。聞こえてるか? 倒れろ。芝居しろよ。おーい」
ソーマくんが麻美くんの顔の前で手を振る。初心者さんが、麻美くんに必ずする行為だよね。
「藍澤副長。死体の処理はどうされますか」
刃くんは、まじめにお芝居してる。
「死体は隊の羽織だけ脱がせなさい。この子は、屯所に連れて行く」
藍澤さんも上手だ。
「・・・・・・母さん」
芝居に関係なく、麻美くんが、やっぱりつぶやく。
「ストップ!」
薫ママの合図で稽古は一時停止した。
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